<US-RACING>
豪雨によって2000年のテキサス以来、7年ぶりに順延されたレースを制したのは、ターゲット・チップ・ガナッシのスコット・ディクソン。前戦のワトキンス・グレン3連覇に続き、ナッシュビルの2年連続優勝を達成した。ポール・ポジションのディクソンはスタートでフランキッティとカナーンの先行を許し、チームメイトのウエルドンからも激しく攻め立てられてしまう。これで厳しいレースになるかに見えたが、36周目にカナーンの単独クラッシュで労せずして2番手に浮上すると、89周目には周回遅れのマシンを利用し、フランキッティからトップを奪い返した。速さではフランキッティより分があったディクソンは、ここからリードを広げ、周回遅れの助けも借りて独走態勢を築き上げていく。189周目に発生した松浦孝亮が原因のコーションによってリードは消えたものの、2番手のフランキッティとの間には3台の周回遅れが挟まっていた。結局、この3台のマシンがクッションとなり、ディクソンは余裕のトップ・チェッカー。2003年リッチモンド以来67戦ぶり、キャリア2度目のポール・トゥ・ウィンで今シーズン2勝目を手にした。「信じられないくらいすばらしいよ。確かに望んでいた結果ではあるけどね。シーズンのはじめはつらかったけど、今ではダリオとチャンピオンシップを争えるまでに来ている。エナジャイザーにとっても良い一日になった。去年のワトキンス・グレンに続いて、このカラーリングで2回も勝てたんだ」と大喜びのディクソン。チャンピオンシップではトップのフランキッティに34ポイント差まで迫った。現在2連勝と絶好調のまま、IRL初開催のミド-オハイオ・スポーツカー・コースへ乗り込む。
ポイント・リーダーのダリオ・フランキッティは2位に終わった。スタートでポールのディクソンを鮮やかにかわし、レース序盤をリードしたフランキッティだったが、ショート・オーバルで見られた圧倒的な速さはなく、ディクソンと1秒以内の接近戦を演じる。89周目に周回遅れに引っかかったフランキッティは一瞬の隙を付かれ、立て続けにディクソンとウエルドンのパスを許した。2回目のピット・ストップでウエルドンを巻き返すものの、ディクソンからはじりじりと引き離される。145周目には再び周回遅れの集団につまり、ディクソンとの差は10秒近くまで開いてしまった。この日最後のコーションでディクソンとの差は一気に縮まるが、このラスト・チャンスにも、前を走る3台の周回遅れが厚い壁となる。またしても周回遅れに行く手を阻まれたフランキッティは、ディクソンを追い詰めることが出来ないまま、2位でフィニッシュした。「良いスタートを切って、スコットをパスできたね。トップに立てたのはうれしかったよ。それからスリー・ワイドになった周回遅れに引っかかり、スコットに抜かれてしまった。その後は彼に追いつこうと頑張ったけど、今日は一日中、渋滞にはまっていたね。来週は何とかしなくてはいけないよ」とレースを振り返るフランキッティ。タイトルを争うディクソンの優勝により、チャンピオンシップの優位性が徐々に失われてきた。次戦、CART時代に表彰台を獲得しているミド-オハイオでの巻き返しを誓う。
第7戦のテキサスでマークしたキャリア・ベストに並ぶ、3位でフィニッシュしたダニカ・パトリック。今週末はプラクティスから安定した速さを見せていたパトリックは、チームメイトのマルコ・アンドレッティや、ディフェンディング・チャンピオンのサム・ホーニッシュJr.を従え、序盤からトップ5をキープする。カナーンの脱落やチームの巧みなピット戦略により、159周目には3番手に躍進。さらに上位を目指したいところだったが、3周遅れのエド・カーペンターから執拗なブロックを受け、逆に4番手のスコット・シャープから追撃を受けることになる。最後のリスタートでカーペンターの真横に並ぶものの、またしてもブロックされたパトリックは、後ろから迫るホーニッシュJr.を押さえ込むことに集中し、3位でフィニッシュした。「とても安定したマシンだったと思うわ。ラスト・スティントではセッティングがばっちり合っていて、かなり良かったの。渋滞のなかではアンダーステアがきつくて、それがレースを難しくしたわ。とくに周回遅れを処理するときにはね。なんとか彼らのインサイドを狙いたかったけど、アンダーステアがきつくて出来なかった。それがとにかく不運だったわ。周回遅れの人たちはまったく協力的ではなかったもの」と悔しがるパトリック。自己ベストの結果にも少々不満の表情を見せていた。
朝から晴れ間が広がったナッシュビル・スーパースピードウエイ。最高気温は32度にも達し、湿度が高く蒸し暑い一日だった。昨日、豪雨を降らせたような厚い雲がまだらにコース上空を覆っていたものの、雨が降ることなくレースはスタートする。ところがレースも中盤に差し掛かろうとしていたとき、昨日を思い起こさせる大きな雨粒がぱらぱらと落ち始めた。96周目にはイエロー・コーションとなり、しばらく雨の様子を伺うことに。幸い、雨が勢いを増すことはなく、100周を過ぎると完全に止み、レースは109周目からリスタートが切られる。雨に翻弄された今年のナッシュビルは、こうして200周のレースを無事に終えた。
レース序盤の主役となったアンドレッティ・グリーン・レーシング。フランキッティとカナーンが1-2体制を構築して隊列を率いた。順調に周回を重ねていく2台だったが、36周目にカナーンが突然のクラッシュ。周回遅れのサラ・フィッシャーをパスした直後にスピンを喫し、そのままウォールに激突してしまった。「周回遅れをパスしようとしたんだけど、思っていた以上にコースが汚れていたみたいだね。何の前触れもなく、サラを抜いた後にコントロールを失ったんだ。これは僕たちにとって大きなダメージになるよ。こんなに良いマシンだったのに。チャンピオンシップにとっても苦しい結果になったね」と肩を落とすカナーン。先週のホーニッシュJr.との乱闘騒ぎに続き、厳しい週末になってしまった。
今日のレースでキー・ポイントになった周回遅れの処理。リーディング・ラップのマシンに道を譲るフェアなドライバーがいる一方で、頑として自分のポジションをキープしようとするドライバーもいた。特にこのレースで注目されたのがエド・カーペンター。94周目にラップ・ダウンになると、アンドレッティやウエルドン、終盤にはパトリックの前に立ちはだかった。通常、オフィシャルは周回遅れのマシンに対し、リーディング・ラップのマシンに道を譲るよう指示するブルー・フラッグを提示しているはずなのだが、それが見えていないのかカーペンターはまったく道を譲ろうとはしなかった。この再三にわたるブロッキングに、アンドレッティは手を挙げてアピール。AGRの共同オーナーであるキム・グリーンも、ピットにいるオフィシャルを呼びつけ、激しく抗議する場面が見られた。
予選後に車両違反が発覚し、最後尾からスタートすることになった松浦孝亮。今週末は終始セット・アップに苦しみ、決勝でもペースがなかなか上がっていかなかったが、粘り強い走りで14位まで順位を上げていた。ところが187周目、ピットの入り口でミスを犯したジェフ・シモンズが本コースに飛び出し、全開で走行する松浦の目の前に現れる。2001年のドイツで行われたCARTのレースでは、ピット・ロードでスピンしたアレックス・ザナルディが本コースに飛び出し、アレックス・タグリアーニと激突して大アクシデントになっているだけに最悪の事態も想像されたが、松浦は間一髪シモンズのマシンを避けることが出来た。この松浦の危険回避をIMSレディオ・ネットワークの実況が、“ファンタスティック・ジョブ”と絶賛するも、マシンはあえなくターン4のウォールに接触。サスペンションにダメージを負った松浦は、開幕戦と第2戦に続いて、今シーズン3回目となるシモンズとのアクシデントでレースを終えた。「ダウンフォースを付けすぎたみたいですね。今週末は良いタイムが出ていなかったので、決勝でも苦戦することはわかっていました。レースを完走できなかったのは、とても残念です。チームは良い仕事をしてくれていましたし、こんな暑くて厳しいコンディションのなか、僕をサポートしてくれたみんなに感謝しています」と話す松浦。次戦のミド-オハイオは得意のロード・コースになるため、良い結果を期待したい。過去2回のアクシデントでは悪びれる様子もなかったシモンズだが、さすがに今回は大惨事になりかねないアクシデントだったため、レース後にパンサー・レーシングのピットを訪れ、謝罪したそうだ。