<Honda>
2007年7月8日(日)・決勝
会場:ワトキンス・グレン・インターナショナル
天候:晴れ
気温:31〜32℃
2007年のIRL IndyCarシリーズ第10戦キャンピング・ワールド・ワトキンス・グレン・グランプリがワトキンス・グレン・インターナショナルで開催された。
ワトキンス・グレンはニューヨーク州北西部の山間にある小さな町だが、1940年代に公道レースが開催されるようになり、アメリカにおける自動車レースのメッカとなった。1957年には常設サーキットがオープン。1961年から1980年までの20年間に渡ってF1グランプリの舞台となった。
自動車レースの豊かな歴史を持つ町の伝統あるサーキットでIRLのIndyCarレースが行われるのは、今年で3回目。全長3.37マイルのアップダウンに富んだレイアウトは、F1グランプリが行われていたコースとほぼ同じで、バックストレッチエンドにシケインが加えられているが、今でもれっきとした高速サーキットだ。山間部のサーキットであるために悪天候に見舞われることも少なくないワトキンス・グレンだが、今年はプラクティス開始から決勝までの3日間を通して青空に恵まれ続け、集まったファンはオープンホイール・マシンによる高速ロードコースバトルを堪能した。
高度なスキル、体力、そして勇気が求められるチャレンジングなコースで行われた第10戦を制したのは、スコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)だった。ディクソンにとっての今シーズン初勝利は、ワトキンス・グレンでの3年連続優勝という快挙である。同一イベントでの3年連続優勝を記録したドライバーは、これでIRL史上2人目となった。今シーズンの開幕戦で彼のチームメートのダン・ウェルドンがホームステッド・マイアミ・スピードウェイでの3年連続優勝を達成している。
午後3時半過ぎにポールポジションからスタートしたエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が、序盤はトップをキープした。彼は2位につけるディクソンとの間に充分なマージンを持って走り続けたが、20周目の最終コーナーで単独スピンを犯し、タイヤウオールに激しくクラッシュした。
こうしてカストロネベスに代わって、ディクソンがトップに立つことになったが、このクラッシュはほかの17台のピットタイミングに影響を与えた。レース中盤はヴィットール・メイラ(パンサー・レーシング)、続いてダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)がトップを走り、34周目にはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が先頭に立った。しかし、変則的タイミングでピットストップを行った彼らが決定的なアドバンテージを得る展開とはならず、60周のレースが43周目を迎えたところでディクソンがトップへと返り咲き、アンドレッティらをパスして2位へと浮上して来たサム・ホーニッシュJr.(チーム・ペンスキー)に6.2591秒の差をつけてチェッカーフラッグを受けた。
松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は、予選11番手からスタート。トップをいくディクソンらとまったく同じピットタイミングを採用する正攻法で走り続け、ダレン・マニング(AJ・フォイト・レーシング)やウェルドンとバトル。最終的に今シーズンの自己ベストとなる8位でフィニッシュした。
なお、前日7日に開催されたIndyProシリーズ第9戦で、武藤英紀(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選4番手からスタートし、僅差の2位でフィニッシュ。また、同日開催された第10戦では、抽選で決まった5番手からスタートし、6位でフィニッシュした。
■コメント
■スコット・ディクソン(優勝)
「今日のチップ・ガナッシ・レーシングはピットストップがすばらしかった。コース上でのオーバーテイクは非常に難しい。ピットストップでポジションを落としていてはレースで勝つことが難しくなる。今日のクルーたちは僕にコースでの順位をキープすることを可能にしてくれていた。今の僕らに与えられた課題は、ダリオ(フランキッティ)とのポイント差を縮めること。それを今日のレースで僕らは達成した。今後のレースでも今日と同じようにポイント差を削ぎ取り続けていくつもりだ」
■サム・ホーニッシュJr.(2位)
「IndyCarシリーズにロードレースが加わることとなったとき、僕らはどのロードレースでもトップ5フィニッシュを記録することを目指して来た。しかし、そうしたチャンスに何度も恵まれながら、それを僕らは達成できずにいた。ロードコースで表彰台に上がることを僕自身ずっと目指して来たので、今日、こうして2位でフィニッシュできたことを本当に喜んでいる。ピットワークのすばらしさも2位フィニッシュに大きく貢献してくれた。今日のレースをきっかけとして、これからのロードレースでも上位フィニッシュを重ねたい」
■ダリオ・フランキッティ(3位)
「3位は悪い結果ではなく、僕としては不満はない。しかし、2位でのフィニッシュも可能だった。最後のピットストップでわずかだが時間がかかってしまった。そこで2位と3位の差がついたんだと思う。レース序盤のハンドリングのよさに比べ、気温が下がってからの後半ではオーバーステアが強くなっていた。今日のレースは体力的にも非常にハードな戦いとなっていた。シリーズの中でも最も、あるいは2番目に過酷なレースに数えられるのがワトキンス・グレンなのだ」
■松浦孝亮(8位)
「今シーズン初めて、何もトラブルなくレースをスタートからゴールまで戦い抜くことができました。もっと上位でのフィニッシュをしたかったというのが正直なところですが、ドリンクボトルのモーターが動かなくなって水分の補給が一切できなくなっていた中、最後まで走り切ってトップ10フィニッシュできたことは、自分としても満足のいくものです。マシンの仕上がり具合はよかったので、次のロードコースでのレース、ミッドオハイオではさらにいい結果を出せるよう、今まで以上にトレーニングを重ねていくつもりです」
■ロバート・クラーク(HPD社長)
「ワトキンス・グレンは歴史と伝統あるロードコースで、今年も熱心なファンがたくさん集まってくれた。タイムの拮抗していた予選結果から見て、上位グループのレースでのバトルはもっとし烈なものとなってもよかったとは思うが、レース序盤、各ドライバーのポジションが安定してからは、順位変動がなく単調になっていた。エリオ(カストロネベス)のアクシデントのあと、ピット作戦にバラエティが生まれ、燃費がポジション争いの結果を左右する大きな要因となった。その辺りからのレース展開は興味深いものとなった。しかし、最終的にはスピードのあるドライバーたちの勝負となり、スコット(ディクソン)が3年連続の勝利を飾った。ロードコースでのレースは、我々のエンジンにとって非常に過酷なものである。オーバーレブが起こる可能性も高く、実際に今週末に何チームかのマシンでオーバーレブがあったが、今シーズン用に用意しているスペックは非常に堅牢でトラブルは一切発生しなかった」