INDY CAR

インディ・カー・シリーズ 第8戦 アイオワ[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

画像

アクシデントやトラブルによって9台ものマシンが姿を消す大荒れのレースを制したのは、ダリオ・フランキッティだった。3番手からスタートを切ったフランキッティは、先頭を争うドライバーが次々と姿を消す中、ただ一人落ち着いたレース運びを見せ、トップを堅持。終盤はチームメイトのマルコ・アンドレッティから猛追を受けるが、しっかりとインサイドのラインをキープし、0.0681秒という僅差で今シーズン2勝目のチェッカード・フラッグを受けた。「カナディアン・クラブのクルーみんながすばらしい仕事をしてくれたんだ。僕たちは最後までリードを守るために、少しギャンブルに出たのがうまくいったね。マシンは信じられないくらい良かったよ。体力的にきつかったけど面白いレースだったね」と喜びを爆発させるフランキッティ。この優勝でアイオワ・スピードウエイの初レースを制したドライバーとして名を残すとともに、チャンピオンシップのリードを51ポイントまで拡大してシーズンを折り返すことになった。

画像

フィニッシュまでフランキッティと行き詰る熱戦を演じたマルコ・アンドレッティ。12番手スタートからアクシデントのワナをかいくぐり、2番手に浮上した154周目からは1回のピットストップを挟んで、フランキッティとの一騎打ちとなる。再三にわたってアウトサイドからフランキッティを攻め立てたものの、最後まで大ベテランのミスを誘い出すことができず、わずかの差で勝利を逃すことになったが、今シーズン・ベストの2位を獲得した。「ピット・ボックスを行き過ぎてしまったよ。ダリオに勝てたかどうかはわからないけど、チャンスを失ったのは確実だね。セット・アップの面でダリオに助けてもらったから、彼には感謝しなくちゃいけない。マシンのセット・アップに関して彼はほんとうにすごいんだよ」と話すアンドレッティ。第2戦以降アクシデントやトラブルと災難続きだったため、この結果は悪い流れを断ち切ってくれそうだ。

画像

レイホール・レターマンのスコット・シャープは粘りの走りで3位を手に入れた。前戦のテキサスではポール・ポジションを奪い、今週末も好調を維持していたシャープ。序盤からペンスキーやアンドレッティ・グリーンといった強豪相手に競争力のあるレースを展開し、一時はトップに立つ場面も見られた。トップを走る2台を追い詰めるだけの戦闘力はなかったが、度重なるアクシデントに翻弄されることなく、きっちりと3位をキープしてフィニッシュした。「体力的には問題ないよ。多くのドライバーは不満があるみたいだけど、レースの30〜40周目までは何も感じなかった。全体を通してチームはすばらしい仕事をしていた。神様は僕たちを見てくれているんだね。予選が4位で、決勝が3位。先頭集団と一緒に走れたし、ピット・ストップもすばらしかった。ほんとうにエキサイティングだったよ」とレースを振り返るシャープ。上位3チームに割って入る活躍をみせた大ベテランは、ダークホースとしてシリーズ後半戦を盛り上げてくれそうだ。

画像

16番手からスタートを切った松浦孝亮。前を走るライバルたちが後退する中、6位までポジションを上げて1回目のピット・ストップを行う。さらに上位を目指して99周目のリスタートを迎えるが、前方で多重クラッシュが発生。事故現場をすり抜けようとした松浦だが、スピンしたカストロネベスに後ろから追突され、リタイアに追い込まれることになった。「スピードは足りなかったですけど、トラフィックでも調子が良くて順調にレースは進んでいました。今回はかなりクラッシュが多かったので、我慢比べをすればトップ10はいけると思っていて、早い段階でトップ10に入れましたよね。ひとつずつポジションを上げていたときに、ああいうアクシデントに巻き込まれて終わってしまったのは残念です」と語る松浦。悔しい結果に終わったが、来週行われる同じショート・オーバルのリッチモンドにつながる走りを見せてくれた。

画像

昨日と同様、朝から雲が空を覆っていたアイオワ・スピードウエイ。気温は21度だったが、肌寒さは感じず、過ごしやすい一日だった。アイオワ初上陸のインディカーは大盛況で、チケットはソールドアウト。観客席を急遽増設する事態となり、スタンドを埋め尽くした観衆は、時速280?以上のハイスピード・バトルとクラッシュに釘付けとなっていた。

画像

記念すべきアイオワ・スピードウエイでの初レースは、スタート直後のアクシデントで幕を明けた。9番手スタートのダン・ウエルドンはジャンプアップを狙って加速するが、タイヤの温度が上がりきっていなかったため、彼の意思に反してマシンはスピン。14番手のトーマス・シェクターとともにウォールへ激突する。ウエルドンのマシンはリアが破壊されてしまったものの、チップ・ガナッシのクルーがレース中にマシンを修復し、250周中の107周目にレースへ復帰。何もしなければ12点に留まったチャンピオンシップ・ポイントだが、11位まで順位を上げて19ポイントを獲得する。チームとウエルドンの執念が貴重な7ポイントを稼ぎ出した。

画像

1回目のコーションがあける直前の12周目、ポール・ポジションのディクソンがなんとステアリングにトラブルを抱え、ピットに飛び込んできた。今週末最も速かったドライバーの早すぎる脱落によって、レースの行方はまったく予想がつかなくなった。優勝戦線から退いたディクソンだが、チームメイトのウエルドンと同様、懸命の復旧作業でレースに復帰する。トップとは77周もの差ができてしまったものの、10位フィニッシュにこぎつけた。「ステアリングが動かなくなり、半分くらいまでしか回せなかったんだ。マシンをピットに入れなければ、絶対にクラッシュするという状態だった。ポイントのためにもう一度コースに出ることができたけど、こんな問題でレースが台無しなったのはほんとうにがっかりだよ」とトラブルを悔やむディクソン。多重クラッシュに巻き込まれた前戦のテキサスに続いて、チップ・ガナッシは2台ともレース序盤に優勝争いから脱落する最悪の結果となった。

画像

3回目のコーションの原因を作ったトニー・カナーン。7位走行中の85周目に突如として姿勢を乱し、ジェフ・シモンズを巻き込んでターン2のウォールへと激突してしまった。「良い感じで走っていたら、急に乱気流に当たってコントロールできず、ウォールに突っ込んでしまったよ。チームにとってはほんとうに残念な結果だね。良い走りをしていたし、チャンピオン争いをするドライバーが上位を走っていなかったからほんとうに悔しい」と肩を落とすカナーン。これまで好調を維持していただけに、あっけない単独スピンでのリタイアは悔やまれる結果となった。

画像

画像

多重クラッシュがあるところにエド・カーペンターあり。前戦テキサスでは6台が絡むアクシデントの引き金を引いたカーペンターは、このレース最大のアクシデントなった4台がリタイアする多重クラッシュを起こした。99周目のリスタートでA.J.フォイト4世とダニカ・パトリックがツーワイドに並んだところへ、カーペンターがインサイドの狭いスペースへ無理やり飛び込み、行き場を失ったパトリックの左フロントと、カーペンターの右リア・タイヤが接触。弾き飛ばされたパトリックはホーニッシュJr.を巻き込んでウォールへ激突し、その後ろではアクシデントを避けようとしたカストロネベスが松浦に接触する。コース上で派手なスピンを演じたカーペンターは、チームメイトのフォイト4世とも接触してリタイアに追い込んだが、自身は大きなダメージを受けることなく、ノーズを交換しただけでレースに復帰。3周遅れの6位でフィニッシュした。初開催のアイオワは合計6回ものコーションが発生し、サバイバル・レースを生き残って同一周回でフィニッシュできたのは、わずか5台だけだった。

画像

息を呑むクラッシュ・シーンのあとには、目が覚めるようなトップ争いが待っていた。今日のレースのハイライトとなったのは、フランキッティとアンドレッティのドッグ・ファイト。終盤からフィニッシュの瞬間まで、一瞬たりとも目が離せないバトルを繰り広げ、1位と2位は0.0681秒というごくわずかの差で決着がついた。インディカーの醍醐味といえる手に汗握る接近戦に、アイオワの観衆は酔いしれたに違いない。

画像

地元のトウモロコシ生産者協会と販売促進協議会がサポートするこのレースには、トウモロコシの生産に関わる人たちのシートが用意され、イベントTシャツを着込んでインディカーを観戦していた。今年からインディカーは100%エタノールを燃料として使用し、その原料となるトウモロコシの生産高でアイオワ州は全米一を誇っている。数年前まで、トウモロコシがインディカーの燃料になるとは考えられなかった。

画像

イベントTシャツを着ている人のほかにも、トウモロコシの被り物をしたコーンおばちゃんを発見。手に“We are here”と書かれたボードを持っていたが、そんな主張をするまでもなく、十分に目だっていた。