INDY CAR

インディ・カー・シリーズ 第8戦 アイオワ[予選日]フォト&レポート

<US-RACING>

画像

初開催となるアイオワ・スピードウエイの予選を制したのは、ターゲット・チップ・ガナッシのスコット・ディクソンだった。前戦、プラクティスでクラッシュを喫してしまい、決勝では披露されなかった禁煙促進錠剤ブランド、コミットのカラーリングを再びまとったディクソンは、この日11番目に登場。予選アタックの2周目に182.360mphのトップ・スピードをマークし、2位のカストロネベスをわずか0.88マイル差で下した。「予選にむけて悪い仕上がりでないことはわかっていたけど、ポール・ポジションを獲れるとは思っていなかったよ。ここ数日、僕らにとって良い日が続き、スピードを上げることができていた。昨日のテストでパスするのがなかなか難しいことがわかったから、このスタート・ポジションは大きな意味を持つね。明日も僕たちはこの位置を守りぬくんだ」と大喜びのディクソン。昨年のインフィネオン・スピードウエイ以来となる通算7度目のポール・ポジションから、今シーズン初勝利を狙う。

画像

前戦テキサスでは多重クラッシュに巻き込まれ、リタイヤに終わったエリオ・カストロネベス。今日の予選は、路面コンディションが難しいトップ・バッターでの登場だったが、182.272mphを記録して中盤まで暫定トップをキープしていた。その後11番目にアタックを行ったディクソンに僅差でかわされてしまうが、2位のポジションを最後まで死守。今シーズン5回目のフロント・ローを獲得した。「最初のアタックだったから、マシンがかなり滑りやすくてとても難しかったよ。17秒間、息ができなかったね。チーム・ペンスキーは良く頑張ってくれた。フロント・ローに入るのはいつでもとても良いことだからね。かなりの接近戦になるだろうから、最前列外側のこのスタート・ポジションは重要なんだ」と話すカストロネベス。タイム・シートを指差し、後もう少しでポールだったという表情を見せた。

画像

現在ポイント・ランキング1位をひた走るダリオ・フランキッティは3位に入った。インディ500を制覇してから絶好調を維持している大ベテランは、初コースのアイオワでも高い適応能力を見せている。「全体的にみて良い一日だったよ。予選結果を見てもポールのスピードから0.04秒くらいしか変わらないよね。もっとアグレッシブなセット・アップだったら、さらに良い結果が出たかも知れないけど、僕たちはよくやったと思う。レースカーも良い仕上がりだ。明日はコンディションが大きく変わるみたいだけど、勝つために必要なことは揃っているよ」と自信をみせたフランキッティ。トップ3にチップ・ガナッシ、ペンスキー、アンドレッティ・グリーンの3強が並び、初開催のアイオワは最初からエキサイティングなレースが期待できそうだ。

画像

前戦テキサスで今シーズン初めてトップ10に入った松浦孝亮。全ドライバーがイコール・コンディションとなる初コースで、上位を目指す。スピードが乗らないマシンを、予選アタックで180マイル台までのせ、16位で予選を通過した。「しょうがないですね。マシンのバランスは悪くないんですけど、パンサーはスピードが遅いです。ヴィットールも遅くて、もうちょっと単独の速さがないときついです。でも、オーバーテイクは難しいコースだと思うので、レースはどうなるかわからないですよ。明日は気温もあがりますし、調子が悪いからといって、そのまま悪くなるとは限らない。明日はまたサバイバル・レースになりそうですね」と話す松浦。依然として厳しい戦いを強いられているが、粘り強い走りで前戦の再現を狙う。

画像

厚い雲が空を覆ったアイオワ・スピードウエイ。昨晩降っていた雨は上がったものの、周囲に霧が立ち込めてメディカル・ヘリコプターがコースへ来ることができず、プラクティスの開始時間が遅れた。このため、2つのグループに分かれて行われるセッションも、最初の30分は全車の走行が許され、19台のマシンがいっせいにコース・インすることになった。一日中曇り空となり、日がまったく射さなかったため、気温も20度までしか上がらず、少し肌寒く感じることもあった。

画像

今年からIRLのカレンダーに加わったアイオワ・スピードウエイ。オーバルとしては23ヶ所目の開催地となる。NASCARチャンピオンのラスティ・ウォレスがデザインに関わり、7千万ドル(1ドル120円で84億円)が投じられたコースは、今シーズン2番目に短い0.875マイルのトライ・オーバル。まだ昨年の9月15日にオープンしたばかりで、IRLが初めてのビッグ・イベントとなる。コースへ通じる道にはコースをデザインしたウォレスに敬意を表してか、ラスティ・ウォレス・ドライブという名がついており、インディアナポリスのジョージタウン・ロードや、デイトナ・インターナショナル・スピードウエイのビル・フランス(NASCARの社長)ブルバードに倣ったようだ。また、農業が基幹産業のアイオワは、インディカーのエタノール燃料の原料となるトウモロコシが主要作物の一つのため、アイオワ州トウモロコシ販売促進協議会、アイオワ州トウモロコシ生産者協会とエタノールがこのレースをバック・アップ。レース名もアイオワ・コーン・インディ250プレゼンテッド・バイ・エタノールとなった。世界的に環境保護が叫ばれる中、代替燃料として脚光を浴びるエタノールを使用し、最先端のレースを行うインディカーは今後も大きな注目を集めることになるだろう。

画像

アイオワ・スピードウエイに設置された衝撃吸収構造のSAFERバリアは特殊な構造をしていた。通常のオーバル・コースは外側がコンクリート・ウォールに囲まれており、SAFERはウォールの手前に設置されているが、アイオワにはコンクリート・ウォール自体がなく、コースの外側はSAFERとそれを支える支柱のみで構成されている。元々、既存のオーバルコースに後からSAFERが加えられていたため、こうしたアイオワのような新しいコースでは、SAFERの効果を最大限に引き出すような設計がされているようだ。これから造られるオーバル・コースの新しいトレンドとなるのかもしれない。

画像

先週、F1アメリカ・グランプリの前座で行われたリバティ100の第1レースで、念願のIPS初優勝を遂げた武藤英紀。今週はロード・コースから舞台を移し、アメリカ独特のショート・オーバルに挑むことになった。これまでホームステッド、インディアナポリス、ミルウォーキー・マイルとオーバルのレースを戦ってきたため、初開催のアイオワもプラクティスからトップ5圏内をキープしていたのだが、予選は思ったほどスピードが伸びず、予選は8位。中段から上位進出を狙うことになる。ポール・ポジションはニュージーランド人のウエイド・カニングハムが獲得した。

画像

迎えた決勝、スタートで2台をかわして6番手に浮上した武藤は、24周目と35周目にも前車をオーバーテイクする快走を見せ、4番手まで順位を上げる。1回目のコーションも武藤にとって有利に働き、5秒近くあったトップ集団との差を労せずして縮めることに成功。リスタート後の61周目にはガスリー・シーンとのドッグ・ファイトの末に、3番手のポジションを手に入れた。勢いに乗る武藤はさらにトップ2台を追いかけ、三つ巴のトップ争いを演じるが、追い上げもここまで。トップ2台をかわすまでに至らなかったが、堂々の追い上げで3位を獲得した。「来年を見越した上でショート・オーバルのレースの勉強になりましたね。考えて前のマシンを抜かないといけないですし、トップ2台は上手く周回遅れを利用していたことも勉強になりました。走行ラインは2本あるんですが、最短距離になるインサイドを走られてしまうとなかなか抜けなかったです。前のマシンを抜くときにステアリングを切る量が多くなると、タイヤの内圧があがっていくので低めに設定していました。最後のイエロー・コーションでガクッと内圧が下がってしまったのが痛かったですね。8番手スタートだったので高めの設定ではいけないですし、タイヤがタレてしまうと抜けないので、低めにせざるを得ませんでした。グリーンのままだったら前の2台を抜かせるくらいに調子がよかったので、悔しいですね」と話す武藤。本人は悔しさを見せたが、武藤の見事なオーバーテイク・ショーは観客を沸かせていた。優勝はカニングハムとのバトルを制したアレックス・ロイドが今シーズン8戦中6勝目を飾った。