<US-RACING>
決勝前の最終プラクティスとなるカーブ・デイ。マシンをチェックできる最後のセッションと言うこともあって、多くのマシンが開始直後から積極的に走りこんだ。その中でアンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)がトップ3を独占する。先週同様、エントリーした5台のマシンが一緒に走ることで、トラフィックのセットアップを入念に行っていたAGRは、トップ・スピードを記録したトニー・カナーンがただ一人225マイルを超え、225.467mphをマーク。見事トップになったことでカナーンは2万5000ドル(1ドル120円で300万円)を手にする。2位にはチームを支えるもうひとりのベテラン、ダリオ・フランキッティが入り、スポット参戦のマイケル・アンドレッティがその後に続いた。先週は一度もトップ・スピードをマークできなかった優勝候補のチームが、最終プラクティスでトップへ躍進した。今日はAGRが台頭したものの、ペンスキー、ガナッシとの差は依然拮抗しており、決勝での大混戦は必至だ。
先週、マシンのバランスに苦しんだ松浦は、今日のプラクティスで31周を走りこみ、221.658mphを記録。セット・アップの方向性が見つかったようで、決勝に向けて良い形でプラクティスを終えた。「フィーリングはよいところまで来ています。トラフィックの中でも良いハンドリングでした。単独では少しスピードが足りない気がするし、前のクルマを抜けるかといったら厳しいけども、今月の中では一番いいクルマになりましたね。レースはスタートでダウンフォースを多めにつけ、終盤にマシンの状態が良くなればダウンフォースを削って、最後で勝負を賭けたいです。最初は様子見でいきます。まず完走して、できればトップ10に入りたいですね」と明るい表情を見せる松浦。17番手スタートから上位フィニッシュを狙う。
決勝を23位からスタートするロジャー安川は、この日31周を走り、219.918mphの24位でプラクティスを終えた。「今日は初めてピット・スタンドを組み立てたので、電気系統をチェックするのがメインでした。もうすこし速いスピードをだしたいと言うのがあったんですけども、先週の日曜日までに決勝のセット・アップが決まって満足していたので、いきなりレースをやっても良い状態にあります。今日のスピード・チャートに関しては満足していないですが、日曜日の結果がすべてです。マシンが安定していたので決勝は期待できると思います」と自信を持って語る安川。23位からのどこまで追い上げてくれるのか、決勝に注目だ。
予報では天候が危ぶまれていたインディアナポリスだが、朝の時点でコース上空は晴れ渡っていた。気温は午前11時のプラクティス開始時には23度に達し、雨が近づいているせいか湿度は高く、蒸し暑さを感じた。インディ・プロ・シリーズのレースがスタートする午後12時30分ごろになるとコース上空は雲に覆われ、レース終了間際にとうとう小雨が降り出すが、この雨はすぐにやみ、ピット・ストップ・コンペティションやコンサートも予定通りおこなわれた。これまで天候に恵まれていたインディアナポリスだが、今週末の天候は悪いことが予想されている。決勝日は快晴の下、レースが行われることを願う。
金曜日のカーブ・デイはドレイヤー&レインボールド・レーシングの記者会見から始まった。オーナーのデニス・レインボールドや、フル参戦するバディ・ライスとサラ・フィッシャーに、レーシング・スーツを一新したロジャー安川が登場。後から共同オーナーのロビー・ビュールも加わり、冗談を交えながら和やかなムードで会見が行われた。
ケニー・ブラックがインディ500に帰ってきた。といっても、今回はロック・ミュージシャンとしての登場。インディカーのセッション終了後、IPSのレース・スタートまでの間にブラックのステージが行われ、詰め掛けたインディカー・ファンに元気な姿を見せてくれた。2005年のインディ500から現役を去っていた1999年のウイナーは、ステアリングを黒のレスポール・ギターへ持ち替え、華麗なギター・テクニックをファンに披露していた。
カーブ・デイに合わせて行われたインディ・プロ・シリーズの第4戦フリーダム100。金曜日にもかかわらず、ピット側のグランド・スタンドはほぼ埋まり、大歓声のなか24台のマシンがスタートを切った。スタート直後にフライングした5番手スタートのカニンガムと、3番手のポテケンが接触。それに4番手スタートの武藤も巻き込まれてしまい、接触時はなんとかコース上に留まったが、タイヤがバーストしていたためにピット・インを強いられることになった。
接触の影響で最後尾の24番手まで後退した武藤は、ここから凄まじい追い上げを見せた。前のマシンを次々とかわしていき、3回のコーション時には7番手まで復帰。リスタートではさらに2台を抜き去り、トップ3も見える位置につけたが、ターン2付近で小雨が降り出してイエローとなってしまう。そのままレースはアレックス・ロイドの開幕4連勝で終了。武藤は5位でフィニッシュすることとなったが、最後尾からのすばらしい追い上げは、詰め掛けた観衆の喝采を浴びていた。「クルマは良かったですね。中盤につらいときもありましたが、エンジニアと話し合ってクルマのバランスを変えながら走ったら、良い方向に行ってペースが上がりました。周回数があればもっと上にいけたと思いますが、しょうがないですね。でもペースが良かったので、絶対に次ぎにつながると思います」と話す武藤。次戦、ミルウォーキーでは念願の初優勝を狙う。
カーブ・デイのメイン・イベントとなるのがピット・ストップ・コンペティション。普段はレースの一部でしかないこのピット作業も、今日は賞金5万ドル(600万円!)を掛けた一大イベントと化す。大観衆が見守る中、10名のドライバーによるトーナメント戦が行われ、決勝が近づくごとに観客の興奮度が増していった。決勝はペンスキーのチームメイト・バトルとなり、ポール・ポジションを獲得したエリオ・カストロネベスが、8.335秒でサム・ホーニッシュJr.を下して2年連続優勝を決めた。「僕のチーム・クルーはすごいだろ。彼らは毎レース、すばらしい作業をしてくれるんだ」と大喜びのカストロネベス。5万ドルを手に入れたカストロネベスは、ポール・ポジションの賞金と合わせてこの3週間で15万ドル(1800万円)を稼ぎ出したことになる。ペンスキーは2005年から3連覇。1981年の初勝利から通算10勝目をあげた。
カーブ・デイを締めくくったのは“キッド・ロック”のコンサート。コースのインフィールドに設けられたステージにファンが大挙し、重低音のサウンドとともに地鳴りのような歓声がコース中に響いていた。毎年有名なロックスターやグループが、このカーブデイにコンサートを行っているが、今年は「マイ・ネーム・イズ・キッド!!!」で歌い出す曲が全米大ヒットした“キッド・ロック”とあって、観客の多さは尋常でなかった。ステージのコンサートは約1時間半に渡って行われ興奮のうちにカーブ・デイの全日程が終了した。