<SUPER AGURI FERNANDEZ RACING>
2005 IRLインディカー・シリーズ第5戦「第89回インディアナポリス500マイルレース」
■■■5月27日 カーブデイ ■■■
天候:晴れ 気温:24℃
時間:11:00〜12:00(日本時間28日1:00〜2:00)
<全プラクティスがついに終了>———————————–
5月の第1週に始まったインディ500も、2週間にわたるプラクティスと予選を終え、この日はファイナルプラクティスが行われた。パナソニックARTA/パノス・Hondaで自身二度目のインディ500に参戦している松浦孝亮は、25周を走行して時速223.407mph(359.462km/h)平均のベストラップをマークし、12番手につけた。決勝前、最後の走行を行う日は、カーブレ−ションデイ、もしくは略してカーブデと呼ばれる。伝統的に木曜日に行われていたが、今年はピットストップコンテストともどもサポートレースが行われる金曜日に日程が移された。
好天に恵まれる中、午前11時からファイナルプラクティスはスタートした。時間はわずか1時間、短い時間だがすべきことは多い。しかし、エンジンはすでに決勝用を搭載しているため、周回数を多くこなすことはできない。まずはマシンがすべて順調に機能しているかを確認し、単独走行でのフィーリングとスピードの確認や、トラフィック内でのハンドリングチェックも行う。レース用にタイヤの皮むきを行うチームもある。この日から決勝で実際に使用するピットを使ったため、ドライバーたちは自らのピット位置を体に覚え込ませることにも集中していた。
<ロングホイールベース化に手応え>——————————-
500マイルレースを戦うためのエンジンがすでに搭載されているため、どのチームも周回数は抑えめとしている。シリーズ最長の距離で争われるレースだけに、できる限り負担をかけないようにとの考え方からだ。最少のドライバーは12周で走行を終え、最も走ったドライバーでも28周しか周回していない。松浦孝亮は25周をこなして走行を終了した。自己ベストは13周目に記録している。
今日のパナソニックARTA/パノス・Hondaには、先週の土曜日に走った時とは異なるセッティングが施されていた。プラクティスまでで松浦が感じ取っていたフィーリングと、チームの集めた多くのデータを再解析して、長距離レースではトラフィック内での安定感を高めることが重要との結論に達した。その結果、ドラッグは増えるがロングホイールベース化を図ることになった。松浦はこのマシンのフィーリング、バランスを非常に気に入っており、レースに向けての意気込みを新たにした。翌日、土曜日はインディアナポリスのダウンタウンでインディ500恒例の盛大なパレードが行われる。スピードウェイでの走行は一切なく、クルーたちはマシンの入念な整備と、ピットなどレースを戦うための準備を進める。第89回目を迎える世界最大のレースは、日曜日の正午(日本時間30日午前2時)にスタートが切られる。
■■■コメント■■■
<松浦孝亮>
「あとはダウンフォースをどのぐらいつけるかです」
「プラクティスはずっとマシンの調子が今ひとつだったので、今日はエイドリアン・フェルナンデスのセッティングと、自分のセッティングをミックスしたマシンで走りました。プラクティスまでとは違うセッティングにしたために、最初は様子を見ながら走っていましたが、フィーリングはすごく良いとわかりました。燃料が満タンの時に路面にマシンの下を擦っていたので、ピットで車高を上げるなどしましたが、クルマのバランスはとても良いので、レースはかなり良いところまでいけるのではと思います。今、ひとつだけ悩んでいることがあります。それは、どのぐらいのダウンフォースレベルで決勝に臨むかです。今日速かったAGRと比べると、自分たちはもっとダウンフォースを削っていくべきなのかな?とも思いますが、タービュランスの中での状況を考えると、逆にもっとダウンフォースをつけていった方がいいようにも考えられるからです。トップ3以上を狙うのであれば、今のままの状態でいいのかもしれない。でも、トップ5狙いなら、もうちょっとダウンフォースをつけるべきかもしれません。ダウンフォースをもう少しつけた方がいいのか、つけない方がいいのか、その判断を行うための瀬戸際にいます。決勝までにはまだ時間もあるので、もう一度チームとどうするべきかを検討します」
<鈴木亜久里 チーム代表>
「チーム全員がベストを出せるよう、ドライバーには緊張感のあるレースを期待したい」
「予選が終わって決勝用セッティングをしはじめたら、マシンが不安定になり、孝亮は『恐くて乗れない』と言っていた。今日はエイドリアンのセッティングをコピーして走ったが、孝亮は『クルマはとても良い。レースができる状況になった』と言っている。最終プラクティスでセッティングを変えることができたのは、3台体制で出場し、それぞれ違うセッティングをトライしてきたからだ。もし今回と逆の状況だったら、他の2台が孝亮のセッティングを使うことになっていただろう。スターティンググリッドは8番手。予選はセレモニーみたいなものだから、3列目までに入れていればまったく問題はない。スタートで大きくタービュランスの影響を受けることもないし、自分より前にいるのはいいドライバーばかりだから、スタート直後に大きなミスをするということも少ない。インディ500のスタートには、そういうリスクが結構あるが、3列目ぐらいまでにいれば、それも小さくて済む。とにかくレースではミスをしないことが大切だ。500マイルという長いレースでは誰でもミスはする。それをいかに小さく、ダメージのないものにとどめることができるか。ミスをしてもそれをカバーできるかで勝負は決まる。今年になってチームも強くなってきているし、あとはドライバーの気持ち次第。チームのスタッフをどれだけ自分に惹きつけられるか。全員がベストの仕事をするように、ドライバーが緊張感のあるレースをしなければならない」
<サイモン・ホジソン チーム・マネージャー>
「コウスケは決勝に向けての自信をつかんだ」
「決勝用エンジンでの走行距離をできる限り少なくしたいので、カーブデイの走行ですべてをトライすることはできない。ただ、今日の走行でコウスケにマシンに対する自信を取り戻させることができた。先週のプラクティスでは、特にトラフィック内でマシンがナーバスになっていたため、今日のパナソニックARTA/パノス・Hondaには、エイドリアンからセッティングを移植した。リヤサスペンションはよりソフトにし、リヤの重心位置も若干変更している。サスペンションが少しロールする感覚はこれまでのマシンと違うが、トラフィック内、単独走行ともにマシンの安定感が高まっている。最終的に、去年のインディ500のセッティングと似たものになった。今日のプラクティスでは想定していただけの走行をトラフィック内で行えなかったが、マシンセッティングが良くなっているとドライバーが感じ、自信を持つことに繋がった。これはレースを戦う上で非常に大切なことだ。プラクティスまでの我々は、コウスケの求めるマシンを作ろうと、彼のリクエストにできる限り応えながらセッティングを詰めてきた。予選とプラクティスが終わり、コウスケはニューヨークへとIRLのPRで出かけたり、マシンを離れる時間を持った。もう一度あらゆることをジックリと考え直す時間を与えられたコウスケは、自分たちが用意したマシンでは500マイルを戦い抜くのが難しい。特にトラフィック内を走り続けることが難しいとの結論に達した。しかし、カーブデイに走れる時間は短く、周回数も限られているのでまったく新しいセッティングを試すことなどできない。そこでエイドリアンのセッティングを試すこととなった。コウスケとエンジニアのジョン・ディックが徹底的に話し合い、データをチェックし、それが最良の案であると考えた。スコット(・シャープ)のセッティングも選べたが、エイドリアンのものの方が自分たちには合っているとの結論を我々は導き出し、コウスケはエイドリアンとも長いミーティングを行って、セッティングと、マシンのフィーリングについてできる限りの理解をするよう努めている」