INDY CAR

エイドリアン・フェルナンデスが今シーズン3勝目、Honda Indy V-8は14連勝を飾り、トニー・カナーンが初のドライバーズ・タイトルを獲得


画像アメリカ西海岸の大都市カリフォルニア州ロサンゼルス。その郊外、内陸部へと50マイルほど入ったフォンタナのカリフォルニア・スピードウェイで2004年度IRL IndyCarシリーズ第15戦が開催された。
全長2マイルの超高速コースを使って200周=400マイルの距離で争われたレースでは、エイドリアン・フェルナンデス(フェルナンデス・レーシング/Gフォース)がファイナルラップで2位からトップを奪い、ポイントリーダーのトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)を0.0183秒差で抑えて優勝した。フェルナンデスにとってこれは第14戦シカゴランドに続く2連勝、そしてシーズン3勝目となった。
3位にはポイントランキングで2位につけているダン・ウェルドン(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)が最終ラップで強豪4台をパスする凄まじい走りをみせて入賞し、Hondaはアメリカでの本拠地であるカリフォルニアで今シーズン8回目の1-2-3フィニッシュを達成した。これにより、Honda Indy V-8は、シリーズ第2戦からの14連勝を記録した。
また、今日は惜しくも優勝を逃したカナーンだが、2位フィニッシュによって獲得ポイントを578点へと伸ばし、最終戦を待たずに初のIRLシリーズ・タイトルを獲得した。第2戦フェニックスで今シーズン初優勝を飾ったカナーンは、第5戦テキサスでシーズン2勝目を挙げてポイント・スタンディングのトップに返り咲いて以来、ずっとその座を守り通してきた。第8戦ナッシュビルでも勝利した彼は、今回のレースで4位以内フィニッシュを実現すればタイトルが獲得できる状況となっていた。予選後にエンジン交換を行ったためにスターティング・グリッドが最後尾の21番手となる不利をものともせず、得意のスタート・ダッシュで7周目には早くもトップ5入り。1回目のピットストップを終えた時点で2位まで浮上し、優勝争いを繰り広げた。
レース・ウィークエンドのフォンタナは予選日の土曜日から雲ひとつ無い快晴が広がり、10月初旬とは思えない高温にも見舞われた。昨年は9月下旬の開催で、レース中の気温は30度に達したが、今年は開催時期が少し遅くなったこともあり、暑さも快適なレベルに収まったレース観戦日和となっていた。スタート直後からレースは215マイルを越すアベレージ・スピードを保って展開。レース前半は超ハイスピードで進んだが、終盤にアクシデントによるフルコース・コーションが連続して出されて様相はガラリと変わった。ペースカー導入によって全車の間隔は狭められ、度重なるリスタートでポジションは目まぐるしく入れ替えられた。
IRLは200周のレースが199周を終えたところでホワイト・フラッグとグリーン・フラッグを同時に振った。ゴールまで1ラップのスプリントとなったのだ。カナーンのリードでレースは再開され、フェルナンデスが優勝をかけた一騎打ちを彼に挑んだ。そして、アウト側のラインから勝負をかけたフェルナンデスがまさに鼻の差で大逆転勝利を手にしたのだった。インディカー・レースならではのスリリング、かつエキサイティングなフィニッシュがまたしてもカリフォルニア・スピードウェイで実現された。0.0183秒差はIRL歴代7番目にランクされる接戦でのフィニッシュだった。
松浦孝亮(スーパーアグリ・フェルナンデス・レーシング/Gフォース)は最終プラクティスで電気系統のトラブルが発生したためにエンジンを交換。ルールによってスターティング・グリッドは20番手へと下げられた。予選でアクシデントを起こしたダレン・マニング(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)が決勝への出走を取り止めたために最後尾よりひとつ前のグリッドからスタートすることとなった松浦は、ハンドリングが期待していた通りのものとなっていなかっために苦しい戦いを強いられた。ここ3戦ほどマシンが想定しているものとは異なる挙動を示す症状が続いていたが、それが今回のレースでは最も顕著だったのだ。それでも松浦は粘り強い走りでひとつずつポジションを上げて行き、13位でゴールした。
他のHonda Indy V-8勢は、バディ・ライス(レイホール・レターマン・レーシング/Gフォース)が5位。ダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)が6位。マーク・テイラー(アクセス・モータースポーツ)が10位。ブライアン・ハータ(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)は17位。ヴィットール・メイラ(レイホール・レターマン・レーシング/Gフォース)はレース序盤でギアボックス・トラブルによりリタイアとなった。
●エイドリアン・フェルナンデス(決勝優勝)
「このところの5戦での成績は本当に素晴らしい。信じられないほどだ。自分のキャリアの中でも最高のシーズンとなっている。トム・アンダーソンとグスタボ・デル・カンポがマネージングするチームが勝利を呼び寄せてくれている。今回の勝利はトニー・カナーンとのバトルを制したという意味で特別な意味を持つ。トニーは偉大なるコンペティターであり、素晴らしいチャンピオンだ。彼との終盤に競い合い、シリーズ・チャンピオンとなった相手を倒したのだから光栄だ。最終ラップでトニーの真横にマシンを並べた時、ボクの方がスピードで勝っていた」
●トニー・カナーン(決勝2位 2004年度シリーズ・チャンピオン)
「まだタイトル獲得の実感は湧いていない。今週は特に長い週末になっていたからだということもあると思う。昨日メカニカル・トラブルに見舞われた時には、落ち込むことのないように心がけた。自分にはいいマシンがあり、前のクルマをパスして行く力があることを信じていた。最終ラップの戦いでは、ボクは勝ちたいと考えており、勝つためにベストを尽くした。エイドリアンを相手にハードに戦った。ボクは彼にスペースを与え、彼もボクにスペースをくれていた。クリーンな戦いだった。ボクはインサイドのラインを採ったが、今日のところは彼の方が速かった。今日のゴール・ラインを横切った瞬間、そして、その後にアンドレッティ・グリーンのチームメイト4人で揃ってドーナツ・ターンを披露した時は、ボクにとって人生最良の瞬間となった」
●ダン・ウェルドン(決勝3位)
「トニーはIRLの歴史上最高のチャンピオンになると思う。彼のタイトルはアンドレッティ・グリーン・レーシング全体にとっても最高の勲章だ。ボクらのチームはシーズンを通して4台のマシンをイコールに揃え、常に速さも発揮している。毎レースでそれを実現して来た。これは信じられないほどのことで、チームは素晴らしい成績を残している。ボクはその一部として力を発揮していることを誇りに思う。最終ラップのことは自分でもよくわからない。自分としては、とにかく前へ出て行きたかった」
●松浦孝亮(決勝13位)
「今日のレースはエイドリアン・フェルイナンデスと同じセッティングでスタートしました。しかし、自分のマシンは彼のものと同じではなかったですね。走っていて安心感がまったく得られませんでした。スピードも感じられませんでしたね。まったく残念なレースになってしまいました。次の最終戦テキサスの結果によってルーキー・オブ・ザ・イヤー賞が決まります。自分としてはそれを獲得するためにもベストを尽くすつもりです。今週もチームのクルーたちはハード・ワークをこなしてくれました。彼らには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。エイドリアンには彼の勝利に対して、トニー・カナーンとHondaにはタイトル獲得に対して、『おめでとう』と言いたいと思います」
●和田康裕 HPD社長
「昨日の予選から見てペンスキーが最強だということはわかっていました。しかし、決勝であそこまで逃げて行くとは思っていませんでした。レースの前半はドキドキさせられました。今日はイエローコーションが物凄く少なかったのでパワーの展開になり、燃費がその中でどういう作用をするかは全く予想がつきませんでした。アンドレッティ・グリーンは作戦上、トップを走っていたエリオ・カストロネベスがピットへと入ったら、それに合わせてピットに入る作戦を選択しました。最後までグリーンがあのまま続いていたら今日のレースでは勝利は難しかったでしょう。トニーは何回か仕掛けて抜いていましたが、すぐにまた抜き返されていましたから。トラフィックに挟まれて離された時もありました。我々の強さはリスタートにあったと思います。フォンタナはGフォースの方が合っているコースで、今までの流れでいうとエイドリアン・フェルナンデスが良いレースを戦ってくれるだろうことは見当がついていました。エイドリアンは最後までずっと力を溜めておいて、トラフィックをかい潜ってトップまで出て来ましたね。やっぱり凄いドライバーだと感じました。ダン・ウェルドンも最終ラップに8位から一気に3位まで4台を抜いて来ました。どちらもアウト側からのパスでしたね。路面のコンディションが悪い場所でしたが頑張りましたね。おかげさまで順調にここまで来まして、Hondaはマニュファクチャラーズ・タイトルを、トニーはドライバーズ・タイトルを獲得できました。最終戦では松浦孝亮がルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得してくれることでしょう。トニーには自らの記録を更新して、全レース全ラップ完走記録を作って欲しいと思います。それを勝って実現してくれたら一番嬉しいですね。最終戦のテキサスも気を抜かず、もう一回頑張りたいと思います」