昨日はホンダの2006年モータースポーツ活動発表会に行ってきました。アメリカ関係ではIRLにエンジンを単独供給することになったHPD社長のローバート・クラークに、ドライバーはダン・ウエルドンと松浦孝亮が来ていて、久しぶりに色々な話をして来ましたよ。ではそれぞれの話を少しここで紹介しましょう。
今年からチップ・ガナッシに移籍したウエルドンですが、その理由に関しては「去年チャンピオンになってインディ500でも勝てたから、新しいチャレンジがしたいんだ」ということで、「AGRがいやになったとか、そういうことはない」と強調してました。かつてのチームメイトとは今でも仲が良くて、たまに電話で話したりするんだそうです。チームはダラーラの経験がなく、そのあたりはどうかと尋ねましたが、「パンサーから来たアンディ(ブラウン)はすごくいいよ。何とかなりそう」と余裕の表情でしたね。
「チームは何度もチャンピオンになった歴史もあって、みなもう一度勝ちたいというモチベーションが強い。そこが大きなポイントだよ」ということですが、これはとても重要なことです。2003年にチャンピオンとなったガナッシですが、ここ2年はほとんど勝てず、絶不調でした。走らないマシンで無理をするからクラッシュが相次ぎ、おそらく、昨年壊したマシンは30台以上になるでしょう。メカニックもだいぶ苦労したと思います。
そのような環境でクルーの鬱憤も溜まっていたわけで、新しくやって来たチャンピオンとともに、今年こそ勝ってやろうという意気込みは相当高くなっているようですね。ウエルドン自身はダラーラの経験が豊富なので、案外最初から好パフォーマンスを発揮してくれそうな予感。1996年にホンダとファイアストンを手に入れたガナッシが大活躍しましたが、初戦でいきなり勝って全員のモチベーションがぐっと高くなったことが、最終的にチャンピオン獲得に繋がったのでした。その再現となるかも。
お次はクラークですが、なんか少し痩せたような気がしましたね。「11月に全車供給が決まって、その対応に大変だったよ」というのが第一声でした。「今年はコンペティションがないのはすごく残念だけど、全車にまんべんなく、同じクオリティのエンジンを供給するのは非常にチャレンジングだ」ということです。しかし心配ごともあって「去年までのホンダ系チームと、それ以外のところをすべて同じ対応にしていても、なかなか信じないんだよ」とのこと。痩せたのはそのあたりが原因かな?
ホンダのワンメイクとなることで、エンジンバトルがなくなるのは少し残念ですが、トラクション・コントロールやラウンチ・コントロールなどのハイテクデバイスがなくなり、よりドライバーのテクニックがクローズアップされるようになります。「そう、そのあたりをぜひ注目して欲しいよ」とクラークも言ってましたが、さらに大事なのはコストをダウンさせることでもあります。
今年は2レース1エンジンが来年は3レース1エンジンとなり、昨年1.5ミリオンだったエンジン・リース代が、14戦の今年は1.3ミリオンと大幅にカットされ、来年は16戦で0.9ミリオンを目指しているそうです。100%エタノール燃料となる来年(今年は10%混合)、開発も大変だとは思いますが、これだけのコストダウンを目指しているのは注目に値しますね。ちなみにエタノールによるパワーダウンは10馬力で、来年は100馬力。「今アメリカでも注目されている燃料だから、やりがいのある開発だよ」とクラークは言ってました。
HPDの立ち上げからいるクラークは、いまや最古参であり、アメリカン・ホンダのオープンホイールの歴史そのもののような人です。1994年の初参戦以来、13年目となるシーズンを迎えたホンダの新しいチャレンジも、ぜひ見守っていきたいですね。