先週の金曜日にホンダ青山本社のウエルカムプラザで行われた“2011年ホンダモータースポーツ活動発表会”に行ってきました。ホンダが今年どのようなモータースポーツ活動を行うのかを発表する会ですね。そのまんまですけど。
今回のこの発表で僕らが気になっていた武藤英紀選手、そして佐藤琢磨選手の去就が正式に発表されました。2008年から3年間インディカー・シリーズに参戦、日本人では最高位となる2位を獲得し、日本人によるインディカー初優勝に最も近づいた武藤選手は、残念ながら4年目のシーズンインを果たせず、戦いの場を日本国内のスーパーGTへと移すことになりました。
2007年、インディカー・シリーズのステップアップカテゴリー、インディ・プロ・シリーズ(現インディ・ライツ・シリーズ)に武藤選手が参戦し、その活躍の姿を取材してきました。ルーキーながらインディアナポリスで行われたロード・コースのレースで初優勝、そして日本人なら誰もが鬼門となるオーバルのレース、ケンタッキーでも優勝し、年間2勝を飾ってポイントランキング2位を獲得しました。
インディアナポリスのレースは当時F1と併催されていたのでね、残念ながら取材にいけなかったのですが、ケンタッキーでは僕自身も久しぶりに日本人が優勝した瞬間に巡り合うことができ、とてもうれしかったことを覚えています。そして武藤選手が2008年にアンドレッティ・グリーン・レーシングからインディカー・シリーズに参戦し、ショート・オーバル・コースのアイオワで日本人最高位となる2位を獲得したときもそれはもう興奮しましたよ。
2009年にはまたまたアイオワで表彰台に立つ3位を獲得し、武藤選手なら日本人ドライバーがいまだ果たせていないインディカーでの初優勝を達成してくれるだろうと取材してきました。昨年はチームを移籍した結果、予期せぬ一台体制となり、チームも優勝争いができる十分な資金が調達できず、歯がゆい結果ばかりとなった我慢の年でした。それだけに今年は体制を整えての参戦を願ってはいたのですが……。
スーパーGTの参戦ドライバーとして武藤選手がスクリーンに紹介され、そしてステージに登場する姿を撮影していると、これまで武藤選手がアメリカで活躍してきたシーンがぱあっとよみがえってきてね。そして改めて今年はもう現場には居ないんだなあって思うと、やはり一抹の寂しさを感じました。
でもね、発表会後に行われた囲み取材でチームメイトになる若手ドライバーの小林崇志選手やチームオーナーの鈴木亜久里さんと話している武藤選手を見ていたら、まあ、それはプロとしてそうなんでしょうけど気持ちは切り替わっているようだし、新たなフィールドとなるスーパーGTでね、武藤選手が暴れている、いや、戦っている姿を見たいなあと思いましたよ。いや、実際にはそのころアメリカに居るので見ることは難しいんだけど。
ただ、本人は「インディにはチャンスがあればスポット参戦できるようにがんばりたい」とも話していました。そのチャンスがあるとすればやはりインディジャパンになるのでしょうか。そのときまた現場で武藤選手を取材できることに期待しています。
一方、今年も昨年と同じチームのKVレーシング・テクノロジー‐ロータス(今年からチーム名にロータスが付くようになりました)からインディカー・シリーズに参戦することを発表した佐藤琢磨選手。これまで他のチームとも交渉をしていたようですが、やはり、同チームから参戦するのが一番自然な流れでスムーズだったようですね。
昨年はインディカーという別世界に飛び込むと、右も左もわからない状況のままアラバマのバーバー・モータスポーツ・パークで行われたオープン・テストに挑んだ佐藤選手でしたが、今年は勝手を知った2年目。気心の知れたチームからの参戦を早い段階で発表でき、また3月中旬に行われるオープン・テストまで十分な準備期間もあります。しかも近々、セブリング・インターナショナル・スピードウエイでプライベートテストをするとか。
チームは昨年3台体制で統率がとりにくかったことから基本的にはシーズンを通して佐藤選手とE.J.ビソ選手の2台体制に集中し、チーム・ペンスキーやニューマン/ハース・レーシングに在籍していた経験豊富なトム・ウルツ氏をチーム・マネージャーに迎え入れマネージング力も強化するとのこと。このように昨年よりも条件が良くなっているのでね、佐藤選手も今年こそは納得のいくレースができるのではないでしょうか。
昨年はシーズンを通して初めて佐藤選手を取材してきましたが、凄いなと思ったのはやはり佐藤選手のここぞというときの集中力でした。ロード・コースでの予選では常に上位に進出していたし、昨年のインディ500ではポールデイの午前の練習走行でクラッシュしてしまい、翌日のバンプデイでは決勝進出が懸かったもう後がないといった状況でのタイムアタックでみごと好タイムを記録。無事、決勝進出を果たしました。
そしてインディジャパンでも練習走行でマシンの不備によるクラッシュを乗り越え、ウォールにあわや接触かと思わせる気迫の予選タイムアタックで10位を獲得しました。そうなってはいけない方向に物事が進むんでしまった場合でも佐藤選手はそれを乗り越える強さがあって、窮地なのに逆に見せ場にしてしまうことができるんですよね。やはりF1で表彰台に立ったことのあるドライバーなんだなって改めて納得した次第です。
今年こそはその強さと見せ場をレースでも見ることができるのだろうと期待しています。フル参戦を発表している日本人ドライバーは佐藤選手だけなので、今年もがんばってもらいたいと思った発表会でした。
さてさて、キーウエスト旅情をお伝えするのがまたまた伸びてしまいました。こりゃ、渡米前に伝え終わるのか微妙になってきましたよ。次回こそはね、続きをお伝えしたいと思います。