<US-RACING>
二日目も快晴の下で行われた最終予選は、地元ヒーローのウィル・パワーが2年連続でポール・ポジションを獲得した。予選序盤はパワーを筆頭に、ポール・トレイシーやオリオール・セルビアが目まぐるしくトップを入れ替えたが、セッションがちょうど中盤に差し掛かったとき、パワーがセルビアのタイムを大きく上回る1分30秒台のタイムを記録する。今日のパワーの走りには鬼気迫るものがあり、時には勢いあまってコンクリート・ブロックにタッチしてしまう場面もあった。パワーがトップに立ってからは、セルビアとトレイシーが肉薄するたびにパワーが応戦してタイムを縮めていく展開となり、彼のタイムは最終的に5年ぶりのコース・レコード更新となる1分30秒054まで削られた。これに負けまいとトレイシーも最終ラップでタイム・アップするが、コンマ4秒及ばず、熱狂する大勢の地元観衆の前で、パワーが2年連続のポール・ポジションを手に入れた。「今日はチームが素晴らしい仕事をしてくれたね。でもレースは長いから喜びすぎてはいけないよ。明日のレースのキー・ポイントは良いスタートを切ることだと思う。予選はこの週末のとても小さな部分でしかないからね。僕たちはレースをまとめ上げて、勝たなくてはいけないよ」と意気込みを語るパワー。昨年はレースをリードしながらも、無理な追越しを仕掛けてきたセバスチャン・ブルデイと接触し、見えていた優勝を逃している。その悔しい思いを晴らす絶好のチャンスをパワーは掴み取った。
2番グリッドには、昨日の予選でトップ・タイムを出したオリオール・セルビアが収まった。この日セルビアは、予選開始直後にエンジン・トラブルに見舞われ、予選中にECUを交換する羽目になる。もちろんすでに昨日の時点でフロント・ローを確保していたのだから、このセッションを無理に走る必要はなかったが、ECU交換が終わると再びコース・インし、ポール争いに加わった。周回数はこの日誰よりも少ない9周に留まったものの、1分30秒693を記録し、5番手でセッションを終えた。思わぬトラブルがセルビアを襲うことになったが、マシンの感触自体に問題はなく、決勝に向けては自信を見せている。「今朝はマシンの調子が素晴らしく、昨日よりも良かったんだ。ラップ・タイムもかなり簡単に出たよ。予選の最初のアタックでは、エンジンが何かのトラブルを抱えてしまい、2回目のアタックに向けてECUを交換しなくてはいけなかった。とても良い走りとはいえなかったけど、十分なラップ・タイムだった。マシンにはとても満足しているし、フロント・ローからスタートするのは素晴らしいことだよ。ここまではかなりうまくいっているから、あとは優勝を目指すだけさ」とポジティブに語るセルビア。2番手スタートから自身とPKVに今シーズン初優勝をプレゼントできるだろうか、彼の走りに注目したい。
3番グリッドにはなんとポール・トレイシーが飛び込んだ。今シーズン第5戦で2年ぶりの優勝を果たしたトレイシーだったが、その後は低迷。予選での速さも冴えず、ファンを不安にさせてしまっていたが、今日のサーファーズ・パラダイスでは会心の走りを披露した。序盤からパワーやセルビアとともにポール争い加わっていたトレイシー。彼らしい豪快なドライビングがようやく戻り、ポール・ポジションの期待さえ抱かせてくれた。残念ながら地元観衆の後押しを受けたパワーには及ばなかったものの、今シーズン開幕戦以来となる予選トップ3入りを果たし、決勝での完全復活に期待がかかる。「ここはとても難しいコースだけど、今日はトラブルなしで走れたよ。いつも多くのアクシデントが起こっているような印象があるから、1周を走りきることだって難しい。体力的にも、マシンにとってもほんとうにタフなコースなんだ。シケインでは小さなミスでも大きなアクシデントになってしまう。昨日のセバスチャンのようにね」とコースについて語るトレイシー。待ち構える様々なワナをかいくぐり、12年ぶりのサーファーズ・パラダイス制覇を目指す。
予選を前に、このサーファーズ・パラダイスを制したことがある現役ドライバー5人を揃え、記念撮影が行われた。中央に立つネルソン・フィリップが昨年キャリア初優勝を果たしたのは、記憶に新しいところ。逆に最も古参なのはもちろんポール・トレイシーで、優勝したのはいまから12年前の1995年までさかのぼる。ブルーノ・ジュンケイラは2004年に優勝し、マリオ・ドミンゲスは珍しく豪雨に見舞われ、大荒れとなった2002年に優勝した。前人未到の4年連続チャンピオンに王手をかけているブルデイは、以外にも2005年の1勝だけ。ブルデイ自身が昨日の会見で、5年のうちに3回もクラッシュしたと語っているように、このコースにはあまりよい印象を持っていないようだ。