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チャンプ・カー・ワールド・シリーズ 第4戦 ブランズ・ハッチ【決勝】レポート

<US-RACING>
●ボウデイが4戦目にして念願の初優勝達成

4万5千の観客が集まったバンク・ホリデイのイギリス。今回はピット・インまでの周回数の規制がなくなったことから、完全な燃費レースとなる。スタートからポール・ポジションのトレイシーが好調にレースをリードするが、1周遅くピットへ入ったボウデイがトップに浮上。追い上げる立場となったトレイシーはギア・ボックス・トラブルに見舞われて4連覇ならず。ボウデイがそのまま初優勝を決め、ジュンケイラが2位、ドミンゲスが3位に入った。

●燃費走行に優れたボウデイ、トレイシーはギアボックス・トラブル

雨になると予想されていた決勝日のブランズ・ハッチは朝から曇り空となったが、時折晴れ間が見え始めて気温も徐々に上昇。カーパンティエがトップとなったウォームアップ開始時の気温は10度前後だったものの、決勝が始まるころには18度まで上がった。絶好のコンディションとなったコースには早朝から観客が集まり、4万5千人(3日間で58500人)を記録。ほとんどのスタンドが埋まり、コース脇にも観客がびっしりと並んでいる。

マリオ・アンドレッティ、エマーソン・フィッティパルディ、デイモン・ヒルといったF1チャンピオンがグランド・マーシャルとなった今回。午後2時ちょうど、3人による“ジェントルマン・スタート・ユア・エンジンズ”でいっせいにエンジンに火が入り、全車がペース・ラップを開始する。2時5分に規定のウォーム・アップ・ラップが終わってレースがスタートするかに見えたが、フォーメーションが整わずイエロー。仕切りなおしとなった翌周に無事スタートとなった。

2000年のミシガン以来、ロード・コースでは1994年のラグナ・セカ以来となるポール・ポジションからのスタートを無難にこなしたトレイシー。ボウデイ、ジュンケイラのニューマン/ハース勢が続き、セルビア、タグリアーニによってトップ5が形成される。11周目、好調なトレイシーは2位ボウデイに2.088秒もの差を築いた。

トレイシー、ボウデイ、ジュンケイラが一定の距離を保ったまま近づいてきた1回目のピット。今回は通常のレースと違ってピットまでの規定周回数がないために、燃費が勝負を決めるひとつのポイントとなる。今年はフォード・コスワースのワン・メイクとなっていることから、運転の仕方やマシンのセッティングが燃費の差となって現れ、誰が一番遅くまでコースに残っているかが注目された。

165周のレースを2回のピット・ストップで走らなければ勝ち目がない中、早いチームは49周目からピット・ストップを開始。トップ・グループはそこから6周後にトレイシーとジュンケイラがピットインし、ボウデイはさらに1周遅い56周目にピットインして燃費の良さを披露する。軽いマシンで1周多く走ったボウデイは、ピット後順当にトレイシーの前でコースに復帰し、ノーリスクでトップに浮上することができた。

ボウデイ、トレイシー、ジュンケイラの順でレースは中盤に入り、迎えた最後のピット・ストップ。今度はトレイシーが逸早く113周目にピットへ向かい、2周後にジュンケイラ、ボウデイはさらに2周遅い117周目にピットを終えた。燃費の良さを生かしてリードを築いたボウデイに対し、2位トレイシーがどこまで差を縮めるか。開幕以来、経験不足と度重なる不運に見舞われてきたボウデイだけに、最後まで予断を許さない状況だ。

ところが今回運に恵まれなかったのはトレイシーのほうであり、118周目にマシンから突如真っ白な煙が上がる。炎を噴出しながらスタート&フィニッシュラインを通過したトレイシーはターン2でストップ。痛恨のギア・ボックストラブルであり、炎はオイルが燃えたものだった。トレイシーの4連覇ならず。

最大のライバルとも言うべきトレイシーが消えたことで楽になったか、その後ボウデイは最後まで落ち着いた走りを見せ、恐れていたトラブルも皆無で真っ先にゴール。参戦4戦目で、しかもかつて戦っていたヨーロッパで初優勝を決めることができたボウデイは、地元フランスを中心とした大勢のファンから祝福を受けていた。すべてはこの日のために、今まで勝利がお預けになっていたのかもしれない。

2位はジュンケイラが入り、ポイント・リーダーのトレイシーまで11ポイント差に迫ってきた。チームメイトのボウデイが先に今季の初優勝を遂げてしまったが、ジュンケイラもそろそろ今季の初勝利が欲しいところ。3位は1回目のピットストップで4位に上がったドミンゲスが、初めての燃費走行(ピットまでの周回数規制はドミンゲスがルーキーだった昨年から施行されたルール)だったにも関わらず最後まで安定した走りで2度目の表彰台を獲得した。

来週は今季初のオーバルとなる第5戦ドイツ、ユーロスピードウエイ。ボウデイをはじめ、今シーズンのルーキーたちが初めてのオーバルでどのような走りを見せるだろう。レースも興味深いが、ザナルディによるハンド・コントロール・チャンプカーのデモンストレーション走行も見逃せない。

優勝したセバスチャン・ボウデイのコメント:
「自分がF3000で初めて優勝を経験したのもイギリスだったから、ここブランズ・ハッチで初勝利を収めることが出来たことは格別だ。マシンの状態はとても良かったから、無理をする必要はほとんどなかった。しいて言えば最初のピットストップの前にポール(トレイシー)との差を広げようとプッシュしたぐらいだ。とにかく燃費を抑える様、常に心がけていた。今日は耐久レースでの経験が役に立ったよ。最初の2戦もトラブルさえなければ勝てたレースだっただけに、自分だけではなくチームにとっても非常に満足できる結果だ」

2位表彰台のブルーノ・ジュンケイラのコメント:
「今日のレースではほとんどの間燃料を節約する走りをして、ピットストップのタイミングが上手く行くことを願った。ポイント差が縮まったことは嬉しいけど、それはポール(トレイシー)がリタイアした結果によるものだったので、多少すっきりしないものもある。今日はセバスチャン(ボウデイ)についてゆくのはきつかった。トレイシーもリタイアせずに最後まで3台で争えたら、レースはもっとエキサイティングだっただろうね。ランキングトップには近づいたが、チャンピオンを獲得するためには今まで以上の何かがないとだめだろうね」

3位表彰台のマリオ・ドミンゲスのコメント:
「数多くの名勝負を生んだ歴史と伝統のブランズ・ハッチでレースが出来てとても嬉しい。今日は燃料補給のタイミングが結果に大きな影響を与えたレースだった。チームからの無線を注意深く聞いて出来る限り燃費を抑える走りを心がけたよ。それでも最後はかなりギリギリの状態だった。こういった走りは自分にとって初めての経験で、燃費を抑えながらも速く走らなくてはならないのは大変だった。フラストレーションのたまるレースだったが、それでも多くのことを学んだとおもう。今日の結果はチームにとって非常に価値のある結果だ。運で勝ったオーストラリアよりも今日はうれしいよ。今後に期待して欲しい」

17位リタイアのポール・トレイシーのコメント:
「レース中、ギアボックスにトラブルを抱えていた。突然、ギアが勝手にシフトしてしまったりするんだ。リタイアする3〜4周前あたりから異音が出ていて、そのうちに煙が上がった。最後の下り坂ではまったくギアのない状態だった。それ以外は問題なく、燃費も悪くなかったが、ほかのチームの中にはもっと燃費の良いマシンもあったようだ。このことについては、もう少し研究していく必要がありそうだ。それにしてもノーポイントに終わったのは痛かった。これまで築いたポイント・リードが大きく削られてしまったからね。完走できなかったことは非常に残念だよ」