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チャンプ・カー・ワールド・シリーズ 第2戦 モンテレイ【決勝】レポート

<US-RACING>
●トレイシーが貫禄を見せて開幕2連勝を達成

10万人近い大観衆が集まった決勝レースは、ポール・ポジションからスタートしたボウデイが序盤トレイシーを抑えて先行。しかし無線の不調からピットインのタイミングをはずして後退し、2度目のピットインの際にウォールに接触してそのままリタイアとなる。トップに立ったトレイシーは、そのまま一度も首位の座を譲ることなく連勝。2位は地元メキシコのジョルダイン、3位はタグリアーニが入り、開幕戦と同様ベテラン勢が表彰台を独占した。

●プレッシャーに弱いボウデイ? トレイシーは余裕で今季2勝目

金曜日の予選は走らなかったものの、朝のウォームアップではトレイシーがトップタイムを記録し、依然好調ぶりをアピール。サーキットがあるファンドディラ・パークでは、午後のレースに向けて朝から大勢のファンがグランドスタンドやインフィールドを陣取ってゆく。気温21度、絶好のレース日和となった午後1時過ぎ、各ドライバーの紹介に続いて国歌斉唱が終わり、すべてのマシンが一斉にエンジンをスタートしてコースイン。

先導のペースカーがピットレーンに入ると、隊列の揃った19台のマシンが最終コーナーを回ってグリーン・フラッグを受け、いよいよレースがスタートした。オープニングラップではマニングがターン1でコースアウトしたものの、大事には至らずレースは続行。しかし4周目にはメカニカル・トラブルに見舞われたモンテイロがターン10と11の間でストップしたため、この日最初のフルコース・コーションとなった。

これを利用してピットインしたドライバーはバッサー、カーパンティエ、モレノ、ラビンの4名。今回のピット・ウインドウは26周となっているため、バッサーとカーパンティエの二人はグリーン・フラッグ後の7周目にもピットイン。コーションに関係なく、26回ずつ2回のピットストップでフィニッシュする作戦だ。

再スタート後もボウデイとトレイシーの2台が後続を引き離していく中、14周目にルマリエがフロント・ストレートでコースサイドにマシンを止めたため、2度目のフルコース・コーション。ここでトップ集団のほとんどがピットインするが、トップのボウデイはコース上に留まったまま。まるで開幕戦と同じような展開になり、ボウデイはその時と同じようにギリギリの26周まで入らないつもりなのか?

実はこの時点でボウデイの無線は調子が悪く、彼はチームからのピットインの指示を聞き逃してしまっていた。17周目目、ボウデイは3度目のフルコース・コーション下にピットインを行ったものの、リードラップのマシンの中で最後尾まで後退。ここからレース中の最速ラップをマークする驚異的な追い上げで、39周目には7位までポジションを回復してきたのだが…。

40周目、セルビアがターン4を過ぎたところでスピンし、タイヤウォールに激突。フルコース・コーションとなったためにボウデイは2度目のピットインを行ったが、ピットに入る際に右後輪をウォールに軽く当ててしまい、サスペンションを破損。致命的なダメージとチームが判断したためにボウデイはマシンをおり、そのまま無念のリタイアとなってしまった。今回も初優勝ならず。

トップを走行しているトレイシーも同じ40周目にピットインした際、エンジンをストールして一瞬失速。2番手でピットアウトしようとしたジョルダインに先行を許しそうになる。あわやのところで直ぐに再スタートしたトレイシーは、なんとかトップの座をキープ。この時点でのトップ5の順位はトレイシー、ジョルダイン、ジュンケイラ、タグリアーニ、フェルナンデスだ。

快調にトップを維持しているかのように見えたトレイシーだったが、30周目を過ぎたあたりから胃の調子が悪いことを無線で訴え始めた。走行中に飲むドリンクボトルの中が、完全に洗浄されていなかったことが原因ではないかとレース終了後にトレイシーは語っている。

レースも後半に入り、トップのトレイシーと2位ジョルダインとはつかず離れずで決定的な大差にはならない。その後方では、予選3番手からスタートしながらも、46周目に単独スピンを喫して9位まで順位を落としたジュンケイラが、遅れを取り戻そうとペースアップ。ハバーフェルドをパスするのにてこずり、危うくコースアウトしそうになりながらも最終的にこれをパス。59周目にはファステスト・ラップをマークして、7位までポジションを回復してきた。

ジュンケイラは66周目に入った3回目のピット・ストップを終えた時点で、6位に浮上する。ここではほとんどすべてのドライバーが最後のピット・ストップを終えてコースへ復帰。トップのトレイシーと2位ジョルダインとの差は4秒以上に広がった。

このあと67周目に6位のマニングと、それをターン5のインからパスしようとしたドミンゲスが接触。マニングは自力で再スタートしてコースに復帰するが、ドミンゲスはリタイア。アクシデントの場所が比較的安全だったことでローカル・イエローのみ、フルコース・コーションは出されなかった。

一方、勢いついているジュンケイラは75周目にカーパンティエを捕え、同じくターン5でクリーンパス、5位にあがる。前回同様、表彰台圏内までポジションアップすることができるか。前方ではトレイシーが2位ジョルダインとの差をさらに広げ、6秒以上としてほぼ独走態勢に入った。

ジュンケイラにパスされてしまったカーパンティエだったが、その4周後にジュンケイラと4位フェルナンデスをまとめてパスしようとアタック。ターン10でいっきに2台をパスしようと試みたものの勢いあまってスピンし、エンジンストール。周回遅れの9位まで後退してしまった。ここで6回目のフルコース・コーションとなる。

残り4周となったところでグリーン・フラッグ。この再スタートでジョルダインは周回遅れのハンター-レイを交わしてトップのトレイシーを追撃。しかしトレイシーもこれに応戦してラストスパートをかける。ホワイト・フラッグを受けたトレイシーはラストラップに入ってもそのスピードを緩めない。

最後は2位ジョルダイン以下に、約2秒の差をつけ見事開幕2連勝を達成。自己通算21勝目を挙げた。17周目からチェッカーまでの85周、69周にわたってリードを保ったトレイシーは、最多リードラップでボーナス・ポイントも獲得している。

ウイニングランの途中、ファンに対してスピンターンの“ドーナッツ”を披露しようとしたトレイシーだったがストールしてしまい、コースマーシャルの押しがけで再スタート。レース後の記者会見でトレイシーは「今度ザナルディにうまくやるコツを聞いておくよ」とおどけて見せていた。

2戦連続2位表彰台にあがり、ランキングでも2位をキープしたジョルダインは、今回が地元メキシコということもあり、レース終了と同時に観客から大きな声援を受けた。3位は安定した走りで予選と同じ順位でフィニッシュしたタグリアーニ。 4位に入賞したもう一人のメキシコ人ドライバーのフェルナンデスは、昨年のマイアミ戦以来の完走にほっとした表情を見せた。

また、今回テストもなしにいきなりレースウィークでチャンプカーに乗ったアレックス・ユーンは短い時間でチャンプカーに徐々に馴染んでいき、この決勝レースでは最終的に9位入賞。初出場で早くもポイントを獲得した。シャシー・メーカーではローラが優勝以下6位までを独占し、トップ10台中9台。アクシデントで後退しながらも最終的に7位入賞を果たしたマニングがレイナード勢のトップだ。

レースが終わってみると、トレイシーが予選2番手からのスタートで最多リードラップ、そして優勝と、開幕戦とよく似た展開になった。今回トレイシーが達成した開幕2戦連続優勝は、82年にリック・メアーズがフェニックスとアトランタで連続して優勝して以来、実に21年ぶりの快挙。また開幕2戦で1位と2位が同じドライバーであった記録は、1980年にジョニー・ラザフォードとトム・スニーバが記録して以来の出来事となった。

この週末のモンテレイでは、人気スポーツであるプロ・サッカーリーグとプロ野球の試合が土曜日にあったにもかかわらず、3日間で21万5千人以上の観客が集まった。次回は舞台を南カリフォルニアのロング・ビーチへと移し、1.968マイルの仮設市街地コースで熱い戦いが繰り広げられる。トレイシーがモンテレイ戦に続き、開幕3連勝を成し遂げるか。またはボウデイが雪辱を晴らして、今度こそ念願の初優勝を挙げることができるか?

ポール・トレイシー
「チーム・プレイヤーズには本当に感謝している。この前のテストで見つかった新しいセットアップを、この週末は実際にやってみることができたからね。サーキットについてマシンをトレーラーから下ろした時点でも、かなり良い状態だった。金曜日はポール・ポジションを獲ることができたけど、土曜日は自分のミスで縁石に乗り上げてしまい、大事なマシンを壊してしまった。そのため最終予選をパスすることを余儀なくされたんだ。あの時タイムアタックができていたら、きっとポール・ポジションは守れたと思う。でもタイム・アタックをしなかったことでタイヤを温存できたことは、優勝へのカギだった。決勝レースではピット・ストップごとに新品のタイヤを使用することができたからね。毎回タイヤ交換までのちょうど半分の距離を過ぎたところで、タイヤをセーブするようにした。それで必要なときにタイヤのおいしい部分を使うことができたんだ」

ミシェル・ジョルダイン
「表彰台に上れたことはとにかくすごいことだ。メキシコのレースで表彰台という結果を出せたことが信じられないよ。絶えず熱い声援を贈ってくれたファンのみんなは本当にグレートだ。彼らはとても強くサポートしてくれた。もう最高の気分だよ」

アレックス・タグリアーニ
「今日は我々新しいチームにとって、とてもよい日になった。今は小規模なチームだが、将来を見据えると、とてもよい方向へ向かっていると思う。今日のマシンは扱いやすい状態だった。最速のマシンではなかったかもしれないが、一日中、安定したパフォーマンスを出せるマシンだったね。一時2位を走行していたが、ピット・ストップでの燃料補給は満タンにするような作戦だった。ライバル・チームの中には、早めのピット・ストップを行うべく、燃料をフルタンクまで入れずに素早くピットアウトするチームもあったので、4位まで後退した時もあった。ブルーノ(ジュンケイラ)がスピンしたのを見逃さず3位へ上がり、そのまま3位をキープした。今日のレースは自らがミスを犯さないで、相手のミスを見逃さないというアプローチだった。コースの何箇所かは非常に滑りやすくて細心の注意が必要だったね。とにかく今日の結果は我々若いチームにとって、とても良いものだった。これからも期待してよさそうだよ」