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CARTチャンピオンシップ・シリーズ 第7戦 デトロイト【プラクティス2】レポート

<US-RACING>
■午前中に走らなかったホンダのフランキッティがセッション終了間際にトップへ躍進

ホンダとフォードが出走しないという異例な事態となった午前中のセッション。午後になっても相変わらず蒸し暑いデトロイトで、第2プラクティスが1時30分に開始された。今回はホンダ、フォード勢もスタートから参加。全車が勢いよくコースへと飛び出していく。

グリーンフラッグから10分経過、まずトップタイムを記録したのが77.038秒をマークしたグージェルミン。これにダ・マッタの77.038秒、午前のセッションでトップタイムを出しているバッサーの77.417秒らのトヨタ勢が続く。その1分後トレイシーがターン9で右フロントホイールをウォールに接触。何とかピットに戻ることができたトレイシーはスペアカーに乗り換えて再びタイムアタックを開始した。

セッションがスタートして20分が経過した1時50分、グージェルミンが午前午後を通してのトップタイムを更新する75.924秒を記録して首位の座をキープ。これにダ・マッタの76.630秒、そして76.724秒を出して3番手に浮上したフィッティパルディらが続いており、やはり午前中をフルに走っているトヨタ・ドライバーが好調だ。

そんな中、コース上のマンホールを覆うカバーの一部が剥がれてしまい、これがタイヤをカットしているとのレポートが入ったため、1時51分にレッドフラッグとなってしまう。

1時59分にコースはグリーンフラッグとなり、セッションが再開。グージェルミンのトップタイムが破られない状況が続くが、2時10分になってジュンケイラが75.234秒を叩き出してトップへ。さらに2番手にはモレノが75.360秒、3番手にはフィッティパルディが75.386秒にタイムアップし、トヨタ勢による上位グループのタイムが次々と入れ替わることに。

さらにジュンケイラはセッション開始50分後、自らのトップタイムを更新する75.234秒を記録して依然トップ。2時34分、ホンダ・エンジンのカナーンがターン3でスピンを喫してタイヤバリアにクラッシュ。カナーンにケガはなかったもののマシンを大破させてしまい、これでコースはまたもレッドフラッグとなった。

セッション開始70分後の2時40分、トップタイムは相変わらずジュンケイラの75.234秒だが、ここでカストロネベスが75.350秒をマークして2番手へ浮上、3番手にはモレノの75.360秒が続く。

その3分後である2時43分、カストロネベスがターン3でスピンしてしまい、タイヤバリアに追突してクラッシュさせてしまう。カストロネベスのマシンはセーフティワーカーの押し掛けによって再スタートすることができたが、リアにダメージを負っておりピットへ戻ることに。これでコースは再びレッドフラッグとなった。午前のプラクティスを走れなかったせいか、ホンダ勢のクラッシュが相次ぐ。

午後のセッションも大詰めを迎えた2時50分、トップ3は変わらず。2時59分になってもタイムが更新されることなく、ルーキーのジュンケイラがトップのままチェッカーかと思われたその矢先、フォード・エンジンを搭載するカーパンティエが75.126秒を叩き出してセッション終了間際でトップに大躍進。ところがその直後、今度はホンダ・エンジンのフランキッティがこの日唯一の75秒を切る74.838秒をマークしてトップポジションをカーペンティエから奪取。

終了間際で激しいトップ争いが繰り広げられることになった午後のプラクティスセッションは、3時にチェッカードフラッグ。トップ3にはフランキッティ(74.838秒)、カーパンティエ(75.126秒)、ジュンケイラ(75.234秒)が入ることになった。

この日唯一の74秒台を記録することになったフランキッティだが、1秒以内に12人のドライバーが入っており、全く気が抜けない状況だ。土曜日の予選は果たしてどのようなタイムアタックが繰り広げられるか。

また期待の日本人勢だが、高木が76.767秒で21番手、中野が76.840秒で23番手に終わり、明日の予選に挑むことになる。

エンジンマニュファクチャラー別に結果を見ると、午前のセッションでノータイムに終わったにもかかわらず、ホンダ勢がトップと5、8番手に入り、フォード勢が2番手を確保。トヨタ勢は3、4、6、7、9、10番手となっており、トップ10中6台がトヨタ。またシャシー別ではレイナードがトップと2、4、6、8、10番手、ローラが3、7、9番手をキープしており、シャシー争いはレイナードが若干有利か。

さて、いつもどおり全セッションに渡って走行したトヨタだが、どうやらこのスペーサーに関するアイデアは、もともとトヨタがCARTからの依頼をもとに提案したものだったようだ。CARTはプレナムチャンバー内における気圧コントロールのルール違反を防ぐために今回のポップオフバルブを急遽支給するに至ったようだが、事前にトヨタには相談し、それに基づいてトヨタが試験を実施。また、トヨタはミシガンのほかにもミド−オハイオで行われたルーキーテストの際にもこのポップオフバルブを使ってテストを行ってきた。

このためトヨタは今日の朝から問題なくこのポップオフバルブが使用できたというわけだが、それにしてもCARTはなぜこのような重要なことを同じ土俵に立つトヨタに依頼し、しかもなぜレース前に突然施行したのか、大きな疑問が残る。トヨタ側の説明では「CARTには実験できる設備がないから」ということだが、他のマニュファクチャラーにとってはたまったものではない。このようなCARTの姿勢は今後大きな波紋を呼ぶようになるだろう。

午前中をボイコットしたホンダとフォードだが、結局チームやそのスポンサーに配慮し、不本意ながら午後の走行を認める形となる。しかしCARTの用意した件のスペーサー入りポップオフバルブを使用しても、最後はホンダとフォードがワンツーを達成して終わるという結果になった。

■ 朝香充弘(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント副社長)のコメント
「発端は、この前火曜日にミシガンでテストをやる際に、CARTは何の前触れも無くスペーサーを持ってきたんですね。チームの誰も知らずに、これはいったいなんだという話になり、テストもしていないものを付けて走るようなことはできないということと、これでは本来のテストができないということで付けなかったんです。それが昨日になってCARTがオーナーに通達し、今日の朝にいきなり持ってきました。なぜわれわれがそれを反対しているかというと、バルブの位置とプレナムチャンバーの位置というのは一体でデザインしているんです。これがちょっと変わるだけで、中の風の流れが全部変わってしまうほど影響が大きく、テストをしていないものはレースでも使えないと判断したからです。それをチームに話して、彼らにもわかってもらえました。これはCARTのルール違反であり、通常、こういったものは事前に各マニュファクチャラーで十分なテストを行うことになっているはずが、あるメーカーだけは事前に手に入れてテストをやっていたというのも、考えられないことですね。われわれが何らかの違反をしているんじゃないかと思っているのかもしれませんが、そういう事は一切無く、プレナムチャンバーの形を変えるようなときでも必ずCARTに図面などを見せて、承認をもらっている。それなのに、なぜCARTがここで今このようなことをやるのか、理解できませんね」

■イアン・ビスコ(コスワースレーシングUSA副社長)のコメント
「我々フォード側としては、今回の成り行きには納得の行かないという見解をCART側に示したつもりだ。十分なテストを行わずに急遽ルールの一部を変更することは、あまりにも唐突で、我々としては驚きを隠せなかった。今回CARTが示した変更に対し、意義を申し立てたのは、ポップオフバルブそのもののデザインなどに関するものではなく、その行使のやりかたとタイミングに対してである。朝のプラクティスをボイコットした後、しばらく時間が経過した時点で、我々はこの問題が解決に時間を要することを察した。そこでとりあえずフォードユーザーのチームに対しては、プラクティスに参加することを推進した。我々が問題とみているのは、今朝になって初めてこの大型のスペーサーがチームに手渡され、なんらテストをする間もなくその使用が義務づけられた事だ。先週の火曜日、フォード・コスワースはCARTからの依頼でフォードエンジンを使用しているチームのうち2つのチームが協力し、新しいウイングのテストを行っている。このスペーサーは、その時既に使用されていたようだが、そのことについて、フォードサイドとしては知らされていなかった。知ってのとおり、チャンプカーのエンジンは、非常に繊細なセッティングを要求される。ごく小さな変化でも、その性能に大きな影響を与える事も多々あるのだ。これまでのCARTの良さの一つに、その規定ルールの安定した行使があった。しかしいったんこのような直前のルール変更が行われてしまうと、我々やチームはその対応に大きく戸惑ってしまう。デトロイトはフォードのホームタウンであり、多くのフォードの関係者とファンが集まる。そのため、たとえCARTのやり方がしかるべきステップを踏んでいなかったとしても、今回はレースに参加する以外にチョイスはないだろう。多くの人々が、お金を払い、我々が活躍する場面を見に来ることを考えると、走行を見合わせる事は出来ない」

■ 木下美明(米国トヨタ自動車モータースポーツ担当副社長)のコメント
「これまで、おかしいなあというレースが何度かありました。今年もそういうレースが続いていて、僕らとしては、以前からそうなんじゃないかと考えていたんで、CARTによくチェックするように何度も言ってました。そうしたら、もてぎの予選のあとの車検で、CARTがポップオフバルブの下に何もついていないか見たときに、CARTがなんらかの疑惑を持ったようで、僕らに相談してきたんです。それで、どういう風にやったら加給圧が上がるかということを説明し、その後CARTから試験の依頼を受けたんで実際にやってみたところ、簡単にパワーが上がったんですね。CARTのレギュレーションでは、プレナムの中に何かを付けてはいけないというふうになっているんです。また、空気の流れを利用してセンサーの付近の圧を変えてはいけないとなっています。こういう効果は利用しちゃいけないし、何らかのデバイスを使用するのも禁止になっているのに、そうではないところがある。それを防ぐためにCARTに色々な考案をしたうちのひとつがスペーサーを入れるということであり、センサーの位置を上げることによって、プレナムの中の空気の流れが影響しなくなり、効果が無くなるというわけです。これでも問題なければみんな走れるはずでしょう、しかし走れないということは、やはりそのようなルール違反の可能性があるということだと思います。色々な実験も含め、CARTではできないことをわれわれが協力したということで、とにかくこのような違反をなくして欲しいという願うばかりです」