<US-RACING>
昨年の雪に象徴されるように、過去何度も天候に悩まされ続けてきたナザレス。だが今回は気温14度と低いものの見事な快晴に恵まれ、予定どおりアメリカ東部時間の午後1時5分、グリーンフラッグでレースはス
タートした。
1999年に劇的なポールトゥウィンを飾ったモントーヤ同様、そのままポールポジションから優勝することができるか注目が集まったルーキー、ジュンケイラは無念にも無線のトラブルが発生。スポッターやピットからの指示を受けることができなくなり、ブレックにあっさりとパスされてしまう。
大混戦となったオープニングラップ、その後方ではハータがスピンし、開始早々イエローでフルコースコーションとなる。ハータのマシンはウィングにダメージを負ってピットインを強いられることになり、早くもラップ遅れとなってしまった。
4周目になってコースはグリーンとなるが、その際に今度は5番手を走っていたカストロネベスがターン3でスピンを喫し、コースはまたもやイエローに。カストロネベスはマシンにダメージを与えることなくコースへ復帰しているが、ポジションを11位まで落としてしまった。またこの直前に3位のセルビアがジュンケイラをパスして2番手へと浮上。二人のルーキー、ディクソンとウイルソンはコーション中の8周目に1回目のピットを敢行した。
コースは10周目にグリーンとなり、レースはようやく再開。トップを快走するブレック、背後にセルビア、ジュンケイラ、ジョルダインJr.とローラ勢が続き、フェルナンデスらのレイナード勢を従えながら周回を重ねる。好調なブレックはどんどんリードを拡大し、一時2位を走るセルビアに7秒以上ものアドバンテージを築く走りを見せる。
中盤に差しかかろうとしていた73周目、ターン4でジョルダインJr.がスピンしてコースはイエロー。狙い澄ましたかのようにほぼ全車がこの日最初のピットインを行う。トップのブレックはポジションをキープしたままピットアウトに成功し、セルビアも2位を維持、6番手からのジャンプアップに成功したポイントリーダーのダ・マッタが3位と、依然ローラ勢がトップ3を占める。
レースも折り返し点を迎えることになった112周目、今回が初オーバルレースとなった高木のマシンがターン4で大きくスライド。スピンした高木はノーダメージのままマシンを立て直すが、勢い余ってウォームアップ・レーンへ入ってしまう。これで高木は15番手からラップ遅れの20位まで順位を落としてしまった。このイエローで10位のトレイシーや13位のディクソンらの下位グループは早めのピットインを行い、後半での巻き返しを狙う。
119周目にいったんグリーンとなるも、121周目にタグリアーニとド・フェランがターン3で接触。両車ともにコンクリートウォールに激突してしまう。ド・フェランは自力でマシンを降りることができたが、タグリアーニはCARTのセーフティクルーによってメディカル施設へ搬送されることになった。しかしタグリアーニは検査の結果問題ないことが確認され、30分以内に退院している。
このクラッシュでコースはイエローとなり、上位陣が2度目のピットイン。これでトップの座についたのはカナーンで、フランキッティ、そして中野と続く。その後フランキッティが141周目にピットへ入り、中野は2位へ浮上。ここからカナーンと中野は激しいテール・トゥ・ノーズのバトルを演じ、レースは終盤へと突入する。
昨年のテストでクラッシュし、休戦を余儀なくされていた中野は初ナザレス。テストなしで金曜日がぶっつけ本番であり、中野は初日のプラクティスで最下位、予選では19位からのスタートだった。この3日間で着実に進歩を遂げてきた中野は、カナーンと見応えあるバトルを演じ、観衆からも大声援が飛び交う。ピットのタイミングを遅らせたことで実現したカナーンと中野のバトルだが、イエローとなればこの作戦が吉となるはずだ。
この後方では、一時10番手までポジションを落としていたブレックが、燃費をセーブしようとしているドライバー達を後目に猛チャージを掛け、ジュンケイラ、ジョルダインJr.、フィッティパルディ、バッサー、そしてトレイシーを次々とパスして順位を4番手まで挽回。トップ争いの一方でブレックも会場を大いに沸かせる。
トップを快走するカナーンと、それを追う中野は依然好バトルを展開しているが、期待していたイエローコーションが一向に発生しない。結局2人ともにグリーンフラッグのままのピットインを強いられることになり、順位を大きく後退させることになってしまった。
レースも終盤に入った190周目、ここでトップに躍り出たのが116周目にトレイシーと同じタイミングで3度目(!)のピットインを行っていたルーキー、ディクソンだった。昨年のインディライツチャンピオンが駆るトヨタ・レイナードは、ブレックらのピットインの際に5位までジャンプアップし、163周目にはベテランのトレイシーをパスして3位まであがってきていたのだ。
ディクソンの後ろで、やはり初優勝を狙う2番手のブレックは猛然とプッシュするも、2回目のピットでタイヤを交換していなかったために、今一歩のところでディクソンをパスできない。214周目に再びジョルダインJr.のスピンによるイエローを挟みながらも、ディクソンはそのままパーフェクトな走りを最後まで続けて真っ先にチェッカードフラッグを受けたのだった。
ニュージーランド出身のディクソンは20歳と9ヶ月で初優勝を達成。これはCARTやF1、ウインストンカップやIRLなどのメジャーシリーズにおける最年少記録となった。また、シーズン最初のオーバルで優勝したルーキーはCART史上初めてのことであり、予選23位からスタートして優勝したのは2番目の記録である(最高は25位からスタートして優勝)。
ディクソンのチームであるパックウエストにとって、1997年以来となる5勝目が達成されたが、今回はチームメイトのグージェルミンがレース前に息子を失ったことにより、急遽参戦を取り消してディクソン一台だけのエントリーとなっていた。そのためグージェルミンのスポンサーである「ネクステル」のロゴをあしらったマシンに乗ってレースを戦っていたのだが、チェッカーを受けて帰ってきたディクソンの左リアタイヤはパンクしており、クールダウンの間にほとんどの空気が抜けていた!
2位は今回も初優勝を逃したブレック、3位にはトレイシーと、トヨタ、フォード、ホンダが揃って表彰台に上がることになったが、トヨタがトップ10中5台を占める強さを発揮。また予選まではローラの独壇場だったシャシーの争いも、終わってみればレイナードが優勝し、3位、4位もレイナードいう結果に終わった。果たして今年のもてぎはどうなるだろうか。
レース終盤でポジションを落としてしまった中野は、結局この日のレースを15番手でフィニッシュ。イエローが狙いどおりに発生していれば上位入賞が期待できただけに、惜しいレースとなった。一方の高木もポジションを14番手まで回復させ、初めてとなったオーバルでのレースを無傷で走りきる。二人とも揃って日本に凱旋することになり、非常に楽しみだ。
ジュンケイラに始まりディクソンで終わった今回、今年初のオーバル・レースで見ることができたルーキー達の大活躍と、中野の魅せた素晴らしいパフォーマンスに拍手を贈ろう。
次回の第5戦、今年で4度目となる日本ラウンドも、新しい何かがわれわれを待っているかもしれない。
●優勝したスコット・ディクソンのコメント
「チェッカーまでの残り10ラップはピットとの無線での交信が忙しかったよ。最後まで燃料が持つかどうかが鍵だったからね。でもそれまでに燃料をセーブする走りをしていたおかげで燃料を濃くしたまま走りきることが出来た。ケニー(ブレック)とポール(トレイシー)は燃料を絞っていたんじゃないかな。レースのスタート前は予選23番手だったことでかなり落ち込んだんだ。それにマウリシオ(グージェルミン)のことも気になっていた。優勝できてとても嬉しいけど、正直言ってまだピンとこない。多分2~3日してから実感が沸いてくるんだろうね」
●2位表彰台を獲得したケニー・ブレックのコメント
「スコット(ディクソン)はコーナーの立ちあがりがとても良かったようで、ついて行くのがやっとだった。とにかくチームも自分も出来る限りのことをしたので悔いはない。このサーキットでは、誰もが皆ギリギリのところで戦っているから、相手をパスするのにはかなりのリスクを伴うんだ。終盤に周回遅れが絡んでいたらまた別の展開になったかも知れないが、今回はそうは行かなかった。スコットはターン2と3でとても速く、自分はそれ以外のところで速かった。今回勝てなかったことは残念だが、次回はなんとしても初優勝を飾りたい」
●3位表彰台を獲得したポール・トレイシーのコメント
「ここはとても追い越しが難しいんだ。ライバルをパスするには、ある程度のスピード差が無いとダメだからね。レース終盤は燃料をセーブするため、思い切ってスパートをかけることが出来なかった。今日のブレックはかなり乗れていたし、最後まで速いと思っていたけど、スコットが最後まで全開で行けるとは思わなかった。今回スコットが優勝できたことは、インディライツシリーズにとってもとても喜ばしいことだ。最近インディライツシリーズのエントリーが減っているのが気にかかっていたからね。このシリーズ出身でCARTにステップアップして成功を収めてきたドライバーは大勢いるし、実際とても良く出来たシステムだと思う」