<US-RACING>
アメリカン・ル・マン・シリーズの最終戦ラグナ・セカは予選が行われ、LMP2クラスのペンスキー・ポルシェ6号車が、再び最高峰クラスであるLMP1のアウディを下し、ポール・ポジションを獲得した。2番手にも7号車のマシンが入り、ペンスキーはフロント・ローを独占。今シーズン8回もの総合優勝を挙げているペンスキーが、最終戦でも猛威をふるい、2007年を象徴するような予選となった。特に6号車の予選アタックを務めたサーシャ・マーセンは、7周目に昨年ステファン・ヨハンソンが記録したコースレコードを、3秒近くも短縮する1分10秒528を記録。他を圧倒する驚異的なタイムでポール・ポジションの座についた。「このサーキットは好きだね。僕に合っていると思う。マシンの調子はとても良いし、長いストレートがないぶん、僕たちのマシンにとって最適なコースだよ。明日は誰の後ろにもつかないで、レースをリードしたいね」と大喜びのマーセン。チームメイトのライアン・ブリスコーとがっちり肩を組み、サムアップしてみせる。2007年のフィナーレもペンスキーの独壇場となってしまうのだろうか。
前戦プチ・ル・マンでは最高峰クラスの意地を見せ、9戦ぶりの総合優勝を果たしたLMP1のアウディ。しかし、このラグナ・セカでは一転して苦境に見舞われ、アラン・マクニッシュがドライブする2号車の予選総合5位が精一杯だった。やはりこうしたタイトなコースではLMP2クラスが優位に立ち、アウディ本来のスピードが発揮できないようだ。「かなりの運がないといけないね。冗談かと思うくらいイエローが出たし、渋滞にもはまってしまった。ラインはとても狭くて埃っぽいしね。4時間のレースで僕たちの燃料タンクの容量を考えると、厳しいレースになると思う。でも僕たちには失うものがないから、全力を尽くすだけさ」と意気込むマクニッシュ。ポール・ポジションを獲ったペンスキーとの間にあるコンマ6秒の差を、レースでどう挽回して見せるのか、アウディの底力が試される。
アキュラ勢はアンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)の予選総合3位が最高位だった。前回に続いてAGRはトニー・カナーンを起用し、予選アタックもカナーンに託した。チャンプ・カーで走りなれたコースだけあって、カナーンはLMP1クラスのアウディを押さえ込む1分10秒913を記録。トップのペンスキーには及ばなかったものの、さすが現役のIRLドライバーと言う実力を見せてくれた。「予選の結果にはとても満足しているよ。僕たちは今週末すごく速いんだ。ブライアン(ハータ)と僕はこのマシンの速さを最大限に引きだすために作業し、予選でその成果を出すことができた。僕たちの目標の一つは常に予選でトップにいることなんだけど、今日のアキュラと僕たちはその目標に近づいていることがわかった。ブライアンと一緒にレースをするのがとても楽しみだよ。ぜひビクトリー・レーンに戻ってきたね」と張り切るカナーン。今シーズンAGRのレギュラー・ドライバーを務めているハータも、チャンプ・カー時代の1998と99年にラグナ・セカを制しており、カナーンとハータのコンビがどこまでペンスキーを追い詰めるかが楽しみだ。
予選総合4位にはハイクロフト・レーシングがつけ、アキュラ勢が2列目を独占した。「全体的に言って、手堅い結果だと思うよ。僕たちは明日のレースでも強いマシンを持っている。予選の中盤に少しセット・アップを変更したことが、最後に6番手から4位へ順位を押し上げることになった。たぶんスタートもこのセット・アップでいけば、もっと速いタイムで走ることができると思う。もちろんトップ6はとてもタイムが接近しているから、このポジションを獲得できたのはとても嬉しいよ」と、予選タックを務めたデイビッド・ブラバムは語った。チームメイトのステファン・ヨハンソンとともに、アキュラ勢のなかでも抜群の安定感を誇るハイクロフト・レーシング。間違いなく明日のレースでも活躍してくれるだろう。
今朝のプラクティスでトップ・タイムをマークし、好調をアピールしたフェルナンデス・レーシング。ところが午後になって路面コンディションが変化すると、マシンのグリップを欠いてしまい、予選6番手に留まった。「良い一日だったと思うよ。たしかに予選ではもう少し速く走りかったけどね。予選のタイム争いは非常に接近しているからとても楽しい。今朝のプラクティスでトップを獲ったときには、コンディションがこのマシンにばっちり合っていた。不運にもこれまで隠れていた太陽が午後なると出てきてしまい、少し温かくなったことでマシンの感触が変化した。主な問題は涼しいときと比べてグリップが不足してしまうことだね。ローラ・シャシーは良いポジションにいると思うけど、コンディションの変化があるとタイムをロスしてしまう。まあでも、今のところ良い週末になっているし、レースではもっと力強いパフォーマンスを見せるよ」と予選を振り返るオーナー兼ドライバーのアドリアン・フェルナンデス。明日のレースが今朝と同じコンディションとなれば、フェルナンデス・レーシングの優勝は夢ではない。
今週末のラグナ・セカにはザイテック・モータースポーツから、日本人ドライバーの下田隼成が参戦している。2005年にヨーロッパのル・マン・エンデュランス・シリーズでタイトル争いを演じた下田は、同じ年にALMSにも参戦し、このラグナ・セカではアウディを下して総合優勝も果たすなど、スポーツカーのドライビングに定評がある。残念ながら今日は13番手となってしまったが、明日の決勝での巻き返しを期待したい。
AGRのピットを訪れ、ブライアン・ハータと話をしているのは昨年ロードアメリカでチャンプ・カーのテスト中に、鹿と激突するアクシデントに見舞われたクリスチアーノ・ダ・マッタ。一時は意識不明の危機的状況に陥りながら、奇跡的に一命をとりとめ、今日は元気な姿を見せてくれた。リハビリのため今シーズンは一切レースに出場していないのだが、ちょくちょくレース会場に足を運んでいる。そろそろレーシング・ドライバーの血が騒ぎ出しているといったところだろうか。ダ・マッタのレース復帰はそう遠くないのかも!? ちなみにダ・マッタの奥にいるサングラスをかけた青年は、今シーズンAGRからインディ・プロ・シリーズに参戦していたジェイミー・カマラ。なにやら来シーズンに向けてのシート探しをしているようだった。
コース内にはX-BOXのブースがあり、ゲームでラグナ・セカのコースを体験できるようになっていた。写真でもご覧のとおりモニターが三つも用意され、ステアリングはパドルシフトとかなり本格的。レーシング・ドライバーが味わうGフォースまでは体験できないが、雰囲気は十分楽しめる。
朝のうちは雲の量が多かったラグナ・セカ・スピードウエイ。午後にはコースを覆っていた雲から晴れ間が覗きだし、気温は21度まで上昇した。少しばかり暑く感じるが、10月も半ばを迎えたノーザン・カリフォルニアのモンテレーも、朝晩は冷え込み、すっかり秋になっている。ターン9を駆け下りていくALMSのマシンたち。ラグナ・セカのコース前半は丘をかけ上がっていくレイアウトだが、ターン9の手前にある名物コーナーのコーク・スクリューからは、一気に丘を駆け下りるレイアウトになっているため、さながらジェット・コースターのコースのようだ。