INDY CAR

第8戦アイオワのベスト・ショット&撮影裏話!!!

今シーズン最初で最後のショート・オーバルのレースだったアイオワ・スピードウエイ。Dシェープ・オーバルでバンクもあるこのコースはサイド・バイ・サイドのシーンがけっこう多く、撮影していて楽しいコースです。
 
コース外側のフォト・ホール(フェンスに開けられた撮影用の穴)がショート・オーバルの割には多いのですが、穴が小さくて撮影するスペースがひとり分しかないのが玉にきず。誰かが撮影していたら、まぁ、違うフォトホールに行けばいいか、と思えるくらいの間隔で設置されているのでね、それほど困りません。
 
今年はターン2とターン3のコース内側に撮影用の仮設スタンドもあったので、レース中にいいかなと思って行ってみたら、決勝日には無くなっていてびっくり。その代わりターン1からターン2の間に仮設スタンドが設置されているのを帰る際に気付いたんですけど、そこに寄って撮影していく時間がなくて今回は断念、残念でした。
 
アイオワはそういう意味で、オーバルにしてはいろいろなアングルからの撮影が可能です。昨年まで開催されていたショート・オーバルのザ・ミルウォーキー・マイルも撮影ポイントが豊富で、チャレンジングな写真が撮影できたのですが、残念ながら今年は開催されません。
 
2004年まで開催されていたナザレスも、面白い写真が撮影できて好きでした。ショート・オーバルは創意工夫次第でアーティスティックな写真が撮影できて楽しめるのですが、今年はアイオワだけとなったので残念だなぁと思っていたら、なんと朗報が。
 
来年から、ホンダがCART参戦時代に初めて優勝したショート・オーバル・コース、ニューハンプシャー・モーター・スピードウエイでも開催されることになりました。けっこうな田舎の方だと聞いていますが、まだ行ったことのないコースなのでね、楽しみです。
 
実はショート・オーバルが好きなもうひとつの理由があります。小さいのでね、撮影中の移動がとても楽なんですよ。レースをしているドライバーのみなさんは、いつもより疲れるそうですが、まぁ、人生楽ありゃ苦もあるさってことで、次回から続くロード、ストリート・コースの撮影では僕もかなり歩くことになるでしょう。最近お腹が出てきたのでね、ダイエットにはちょうどいいかもしれません。コース中を歩き回って、良いシャッターチャンスに巡り合えるよう、がんばりたいと思います。
 

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2008年のリッチモンド以来の優勝となったトニー・カナーン。キャリア14勝目だったのですが、昨年は未勝利だったんだってことを、今回改めて思い出しました。表彰台には何度か立っていたものの、ほぼ2年も優勝していなかったということになります。
 
今回、そのブランクを他の誰よりも感じていたのは、カナーン本人だったに違いありません。マシンに乗ったままヴィクトリー・サークルにやってきたカナーンは、チーム・クルーからの祝福を受け、はじめはなんというか落ち着いた感じで安堵感を漂わせていたのですが、次第に感無量といった雰囲気になっていったんです。
 
今シーズン、チームに加入したばかりのライアン・ハンター−レイがロング・ビーチで先に優勝し、チームに久しぶりの勝利をプレゼントしたのですが、その役目は自分のはずだったという使命感がずっとあったのかもしれません。マシンから勢いよく出て、カメラを構えた僕たちの方を向き、ガッツポーズをしたカナーンの目は潤んでいました。
 
表彰台ではおなじみの口を横に広げたトニー・スマイルで、2位に入った同郷の友、エリオ・カストロネベスと喜びを分かち合っていました。最後まで自分とチームを信じることができた結果が、優勝に巡り合わせてくれたのだと思います。
 
今年のアンドレッティ・オートスポーツはチーム力を上げてきているだけに、トニーの次の優勝はそう遠い日ではないでしょうね。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 70-200mm f/2.8 IS USM
ストロボ: Canon SPEEDLITE 580EX ?
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/300
絞り値: F7.1
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 78.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
ストロボの種類: 外部E-TTL
E-TTL II調光方式: 評価調光
調光補正: 0
シンクロタイミング: 先幕シンクロ
 

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レース序盤からスピードがあり、トップ・グループと遜色ない走りを見せていた佐藤琢磨。レースも折り返し点を過ぎ、いよいよ終盤に向かおうとしている時でした。トニー・カナーンとダリオ・フランキッティがトップ争いを演じていた後方で、5番手を走行していた琢磨が前を走るライアン・ハンター−レイとスコット・ディクソンを一気にパスし、3番手に浮上したのです。
 
僕はその時の様子をターン1外側のフォトホールから、少し興奮気味に撮影していたのですが、僕がこのフォトホールへ来る前にここで撮影していたのは、カンザス在住のカメラマンで、立派なお腹が自慢のフィル・アボットでした。
 
このコラムのカンザス編の時に書きましたが、レース終盤に英紀と琢磨が4位と5位を走行していた際、興奮しながら「日本人が良い位置にいるよ!」と僕が話しかけたのは、彼だったんです。「そういうことを言うと何か起こるかもしれないよ」とフィルが言ったそのすぐ後に二人がクラッシュし、ほんとうにアクシデントが起こってしまったのはみなさんもご存知のとおり。
 
ここのフォトホールはひとりしか撮影できないので、彼に「撮影しても良いかい?」と聞くと快く場所を譲ってくれました。そして琢磨の活躍に興奮しながら撮影していたわけですが、アドレナリンが放出すると何もかも忘れてしまうタイプのようで、横にいたフィルにまた言ってしまったんです。「琢磨が3番手にポジション・アップしたよ!」と。
 
そんな僕を見て、彼はすべてを悟ったかのように優しく相槌を打ったんですが、カンザスの時のことなんてすっかり忘れてましたからね。僕は彼にお礼を言って、足早に別のフォトホールへ移動していたその時、マシンが壁にヒットする鈍い音とともにイエロー・コーションのランプがチカチカと点滅。まさかな、と思った時ほど予感は的中するもので、琢磨がクラッシュしているではないですか・・・。
 
今後はね、たとえ日本人ドライバーがトップを走っていても、レースが終了するまでは誰にもその様子を話さないぞと誓ったアイオワでした。特にカンザス在住のカメラマンには、絶対に言わないようにしないと。
 
ずいぶんと前置きが長くなりましたが、この写真はメイン・グランド・スタンドにあるスイート・タワーの屋上から撮影したものです。大きなアメリカの国旗がコース内ではためいていたので、それとマシンを入れ込んだ写真を撮影しようと思い、なんとかうまく撮れました。
 
アメリカにやってきた琢磨のインディカーへの挑戦も、折り返し点となりました。この前半戦で多くのことを学んだ彼は、次戦から続くロード&ストリート・コースで良い結果を残してくれると信じています。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4 IS USM
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/15
絞り値: F29.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 500.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 
Photo & Text Hiroyuki Saito
 
アイオワのPick the Winnerで当選した方には、こちらの写真をプレゼントします!