<Honda>
2010年5月1日(土)
決勝
会場:カンザス・スピードウェイ
天候:曇りのち晴れ
気温:18〜20℃
今シーズン初めてのオーバルレースで勝利を収めたのは、スコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing)だった。予選2番手だった彼は1回目のピットストップを迎える前にトップに立つと、ライバル勢を一歩上回る速さを見せつけて200周のうちの167周をリード。悠々と今季初優勝のゴールを駆け抜けた。これにより、ディクソンはカンザス・スピードウェイでは2年連続優勝、そしてキャリア22勝目を飾った。2位でフィニッシュしたのは予選3番手だったダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)で、Chip Ganassi Racingは今シーズン初めての1-2フィニッシュを記録した。カンザス・スピードウェイでの彼らは07年から4年連続優勝と無敵を誇っている。
300マイルのレースは、曇り空の下でグリーンフラッグが振り下ろされた。ターン1方向から強く吹きつける風により、肌寒く感じるコンディションだった。27台のインディカーはクリーンなスタートを切り、時速210マイルでの高速バトルを繰り広げた。
ポールポジションからスタートしたライアン・ブリスコー(Team Penske)は、序盤こそトップを走ったもののピットアウト後の77周目に左フロントホイールが外れてしまうトラブルに見舞われ、11位まで大きく後退。激しく追い上げたものの、6位でのゴールが精一杯だった。ポイントリーダーのウィル・パワー(Team Penske)はカンザスでは苦戦。予選7番手から徐々に後退していき、トップから2周の周回遅れの12位でゴールした。
ディクソンの速さにはチームメートのフランキッティも歯が立たなかった。ゴールまで7周というところで切られた最後のリスタートでも、フランキッティはディクソンとの間に何台もの周回遅れを挟んでいたため、競るチャンスはなかった。ゴールでのディクソンとフランキッティの間には、実に3.0528秒という大きな差があった。
3位は最後のリスタート時点で4番手につけていたトニー・カナーン(Andretti Autosport)が、少年時代からのライバルであるエリオ・カストロネベス(Team Penske)をパスして手に入れた。
武藤英紀(Newman/Haas Racing)は、ダウンフォースを少なくするセッティングだったためにレース序盤は順位を落としたが、レースが安定してくるとスピードを上げ、ポジションを上げていった。レースの折り返し点を越えた後の122周目、フルコースコーション中にほぼ全車がピットストップを行うと、武藤のポジションは6位から4位へ上がった。その後、燃費のよかったカストロネベスが武藤の前へと出たため、武藤は5位につけて、表彰台を狙える位置でレース終盤を迎えた。
しかし、186周目のリスタートで武藤は佐藤琢磨(KV Racing Technology)と接触。2台はフロントストレートでクラッシュし、そろってリタイアとなった。それまでの佐藤は、初めてのオーバルレースとは思えない目覚しい走りを見せていた。スタート直後はタービュランスに戸惑い気味で17位までポジションダウンしたが、そこからはどんどんポジションを上げ、トップ5さえ狙える6位にまで浮上していた。アクシデントが起きたのは、武藤の前を走っていたルーキーのシモーナ・デ・シルベストロ(HVM Racing)が、武藤の側へとラインを寄せてきたからだった。武藤としては接触しないよう同じくアウトへラインを膨らませるしかなく、さらにアウト側にいた佐藤とぶつかってしまった。
2人の日本人ドライバーはカンザス・スピードウェイでともにすばらしい戦いぶりを見せていた。それだけにゴールまで20周を切ってからのアクシデントによるリタイアという残念な結果となった。
コメント
スコット・ディクソン(優勝)
「カンザス・スピードウェイでのChip Ganassi Racingはいつもマシンがとても速い。トレーラーからマシンを降ろしてすぐに十分に速いタイムを出すことができるので、そこからは少しのセッティング変更だけで済む。レースに向けてマシンをファインチューニングしていける。今日の場合も、予選までのセッティングにロングランで安定した走りができるマシンとなるように、わずかな変更を施してスタートに臨んだ。そして、マシンは期待通りにすばらしいものとなっていた。トラフィックの中で速く、インでもアウトでも自在に走ることができた。チームとしても1-2フィニッシュという最高の結果になった」
ダリオ・フランキッティ(2位)
「今日はチームメートのディクソンが速過ぎた。彼には小さいが明確なアドバンテージがあった。もし何らかのチャンスを手に入れて彼の前に出ることができたとしても、そのポジションをゴールまで守り通すことはできなかったと思う。ロングランでの終盤で、彼は私よりも速かったと感じている。私のマシンと彼のマシンとの間にどんな違いがあったのか、セッティングデータを後でじっくりと見比べ、研究したいと思う。今シーズン初のオーバルレースとなったカンザス・スピードウェイは、次のレースであるインディ500に向けてのよいトレーニングという意味もある。超ハイスピードのドライビングのフィーリングを取り戻すことはできた」
トニー・カナーン(3位)
「すばらしいピットストップを繰り返し行ってくれたAndretti Autosportのクルーたちに感謝する。今日の我々は持てる力のすべてを発揮したと思う。今日、私のマシンは最速ではなかったため、マシンの性能をすべて出しきり、ベストのリザルトを手に入れようとがんばった。予選は12位ぐらいまでに入りたかったが17位と大苦戦。そこでマシンのセッティングを大きく変えた。エンジニアと話し合い、ベーシックに戻ることにした。その結果、レースでのマシンはとてもよいハンドリングとなっていた。インディ500はカンザスとはまったくタイプの違うオーバルだが、表彰台に上ったことでチームには勢いがついたと感じている」
武藤英紀(23位)
「佐藤選手がアウト側にいましたが、イン側の周回遅れのオレンジ色のマシンが外側に膨らんできたために自分は行き場がなくなってしまい、佐藤選手とぶつかってしまいました。今日の我々はとてもいいレースを戦えていました。Ganassiの2台にはかないませんでしたが、終始、4、5番手を走り、カナーンやペンスキー勢と互角の戦いができ、トップグループで戦う力を持っていることを示すことができました。それだけにリタイアは本当に残念な結果です。残り14周でのリスタートで、自分としてはカナーンをパスすることは可能と考えていました。アクシデントという結果にはなりましたが、レースの内容はよかったので、次のインディ500に向けてチームの士気は大きく上がったと思います」
佐藤琢磨(24位)
「初めてのオーバルレースで、残り14周の時点で6位を走っていました。とてもエキサイティングなレースを戦っていました。しかし、アクシデントというとても残念な結果になってしまいました。リスタートで武藤選手とサイド・バイ・サイドになり、彼が上がってきて行き場がなくなったように自分としては見えていました。アクシデント直後に武藤選手と会って、彼のイン側にいた周回遅れのマシンがアウト側へとラインを上げてきて、武藤選手を押し出す形になっていたと聞きました。我々の2台両方が行き場を失ったという状況でした。完走できなかったのは本当に残念です。日本のファンの皆さん、特に武藤選手のファンに対しても申し訳ないと思っています。それでも、今日のレースでは本当に多くのことを学べました。レースはとても楽しかったです。オーバルの特性を生かして、多くのドライバーとバトルをし、オーバーテイクができました」
ロジャー・グリフィス|HPD レース・チーム・マネジャー
「とても面白いレースで、ファンも大いに楽しんでくれたことと思う。オーバーテイクが多く、順位の変動はレースを通して目まぐるしいものだった。2台のGanassiのマシンが一歩抜きん出た速さを持っていたが、Andretti Autosportがロードコース同様にオーバルでも速さを取り戻していることが明らかになった。また、武藤の走りも印象的だった。ルーキーたちも全員が見事な走りを見せていた。佐藤は近い将来にすばらしいオーバルレーサーとなる可能性を見せたと思う。最終的にはアクシデントによるリタイアとなったが、あれは彼らの前方でアグレッシブなドライビングをしていたドライバーの影響も強かったと思う。
アクシデントによってエンジンにダメージが及んだケースがジェイ・ハワード(Sarah Fisher Racing)の1台だけあったが、インディ500を目前に控え、エンジンに関するトラブルのないレースを行うことができ、我々は大いに勇気づけられた」
決勝
順位 No. ドライバー チーム C/E/T タイム/差
1 9 スコット・ディクソン Chip Ganassi Racing D/H/F 01:50:43.1410
2 10 ダリオ・フランキッティ Chip Ganassi Racing D/H/F +3.0528
3 11 トニー・カナーン Andretti Autosport D/H/F +3.2210
4 3 エリオ・カストロネベス Team Penske D/H/F +3.8300
5 37 ライアン・ハンターレイ Andretti Autosport D/H/F +6.1133
6 6 ライアン・ブリスコー Team Penske D/H/F +6.7951
7 32 マリオ・モラレス KV Racing Technology D/H/F +1Lap
8 77 アレックス・タグリアーニ FAZZT Race Team D/H/F +2.1495
9 43 ジョン・アンドレッティ Andretti Autosport D/H/F +2.5663
10 14 ヴィットール・メイラ A.J. Foyt Enterprises D/H/F +2.8007
11 7 ダニカ・パトリック Andretti
Autosport D/H/F +2Laps
12 12 ウィル・パワー Team Penske D/H/F +3.9344
13 26 マルコ・アンドレッティ Andretti Autosport D/H/F +4.1556
14 24 マイク・コンウェイ Dreyer & Reinbold Racing D/H/F +5.6459
15 4 ダン・ウェルドン Panther Racing D/H/F +5.8689
16 2 ラファエル・マトス de Ferran Luczo Dragon Racing D/H/F +7.7194
17 67 サラ・フィッシャー Sarah Fisher Racing D/H/F +7.8667
18 22 ジャスティン・ウィルソン Dreyer & Reinbold Racing D/H/F +3Laps
19 19 アレックス・ロイド Dale Coyne Racing D/H/F +6.3718
20 36 ベルトラン・バゲット Conquest Racing D/H/F +7.3505
21 78 シモーナ・デ・シルヴェストロ HVM Racing D/H/F +8.1861
22 34 マリオ・ロマンチーニ Conquest Racing D/H/F +4Laps
23 06 武藤英紀 Newman/Haas Racing D/H/F +14Laps
24 5 佐藤琢磨 KV Racing Technology D/H/F +14Laps
25 66 ジェイ・ハワード Sarah Fisher Racing D/H/F +28Laps
26 18 ミルカ・デュノー Dale Coyne Racing D/H/F +116Laps
27 8 E.J.ヴィソ KV Racing Technology D/H/F +129Laps
ポイントスタンディング
順位 ライダー マシン 総合ポイント
1 ウィル・パワー Team Penske 190
2 スコット・ディクソン Chip Ganassi Racing 164
3 エリオ・カストロネベス Team Penske 162
4 ライアン・ハンターレイ Andretti Autosport 159
5 ダリオ・フランキッティ Chip Ganassi Racing 152
6 ジャスティン・ウィルソン Dreyer & Reinbold Racing 137
7 ライアン・ブリスコー Team Penske 132
8 トニー・カナーン Andretti Autosport 129
9 ヴィットール・メイラ A.J. Foyt Enterprises 101
10 ラファエル・マトス de Ferran Luczo Dragon Racing 98
11 ダン・ウェルドン Panther Racing 98
12 アレックス・タグリアーニ FAZZT Race Team 96
13 マルコ・アンドレッティ Andretti Autosport 95
14 マリオ・モラレス KV Racing Technology 95
15 マイク・コンウェイ Dreyer & Reinbold Racing 94
16 ダニカ・パトリック Andretti Autosport 86
17 武藤英紀 Newman/Haas Racing 72
18 E.J.ヴィソ KV Racing Technology 70
19 マリオ・ロマンチーニ Conquest Racing 66
20 シモーナ・デ・シルヴェストロ HVM Racing 65
21 アレックス・ロイド Dale Coyne Racing 60
22 佐藤琢磨 KV Racing Technology 58
23 ミルカ・デュノー Dale Coyne Racing 56
24 グラハム・レイホール Sarah Fisher Racing 47
25 ベルトラン・バゲット Conquest Racing 36
26 ジョン・アンドレッティ Andretti Autosport 22
27 アナ・ベアトリス Dreyer & Reinbold Racing 17
28 サラ・フィッシャー Sarah Fisher Racing 13
29 ジェイ・ハワード Sarah Fisher Racing 10