<US-RACING>
最終戦ホームステッドを勝ち抜いて2009年チャンピオンとなったのは、ポール・シッターのダリオ・フランキッティで、今季3度目のポール・トゥ・ウィンでタイトルを決めました。レースのほとんどでライアン・ブリスコーとスコット・ディクソンが飛びぬけて速いバトルを繰り広げましたが、優れた燃費作戦で走っていたフランキッティは、終盤にピット・インを余儀なくされた2人をパス。残り7周でトップに躍進し、今シーズン5勝目を飾りました。同時に2007年以来となる2度目のチャンピオンシップを獲得。偶然にも今日の日付である10月10日に、カーナンバー10番がチームの今季10度目の優勝を獲ったのです。おめでとう、フランキッティ!
「信じられない! 2007年と同じように、燃料をセーブする作戦で勝てたよ。最初のスティントではあまり速くなかったから、1回目のピット・ストップでクルーチーフのクリス・シモンズとクルーがマシンを少し調整したんだ。そこからは、すごくいい感じだった。大きく離されていたけど、燃費作戦で粘って、何とか勝ったよ。チームにとっては最高の1年だったし、チップ・ガナッシに感謝している」と大喜びのフランキッティ。アシュレイ・ジャッドと何度もキスをしていましたね。NASCARから戻ってきたのは大正解だったようです。
今日一番の速さを見せながら、惜しくも2位に終わったブリスコー。最多リード・ラップのボーナス・ポイントを手に入れ、そのまま優勝すればチャンピオンシップも獲得できていたはずでした。ところが、史上初のノー・コーションのレースで燃費が厳しくなり、残り6周でスプラッシュ・アンド・ゴーのためピットへ。3番手のフランキッティとの差は24.9643秒だったものの、ブリスコーがピットのアクセル・レーンに入った瞬間にフランキッティがリードを奪いました。最後までフランキッティより約2マイルも上回るラップで走っていたブリスコーでしたが、最終的に2位になってしまったのです。「すごいフラストレーションだよ。僕の中では最高のレースをしたと思った。最終的に燃費のレースとなったのは残念。ダリオは今シーズン中ずっとすばらしい走りをしてきたから、おめでとうと言いたい。僕かスコット(ティクソン)のどっちかが勝つと思っていたけど、最終的にダリオ(フランキッティ)の作戦は優れていたね」と悔しそうなブリスコー。なんと今季8回目の2位フィニッシュでしたよ。604ポイントでチャンピオンシップ3位、インディ・ジャパンでのミスさえなければ・・・。
ポイント・リーダーだったスコット・ディクソンは3位でフィニッシュしました。レース中に70周もリードし、ブリスコーと同様のペースで走っていましたが、インディカー史上2番目に速いペースだっただけに、その分燃料も消費。残り8周の192周目にピット・インを余儀なくされ、その瞬間2年連続3度目のチャンピオンシップの夢が消え去ってしまいました。「レース・スタート時に、燃料をたくさん燃やすのは良くないと思っていたら、予想どおりになった。悔しいけど、また来年もう一回チャンピオンシップを狙うよ。最も速いクルマが勝つと思われがちだが、そうじゃないときもあるんだ。ブリスコーは勝てそうだったけど、最終的に燃費がキーだったね」とレースを振り返ったディクソンでしたが、まさかレースで1度もコーションが出ないとは思ってもいなかったでしょう。35ポイントを獲得して605ポイントとなったディクソンは、ブリスコーをわずか1ポイント上回り2位に。ガナッシのチャンピオンシップ・ワンツーとなりました。
予選14番手だったトニー・カナーンは、みごとな追い上げを見せ、4位フィニッシュとなりました。「長いレースだったね。あの3人(フランキッティ、ブリスコー、ディクソン)は違うクラスのようだった。AリーグとBリーグみたい。僕らはがんばって、できることをやったと思う。クルマは悪くなかったけど、スピードが足りなかったね。4位はうれしいよ。すごく波乱のシーズンだった」とここ5戦中最もいい結果となったカナーン。不運が多かったシーズンでしたが、4位に終わってよかったというところでしょうか。来年はカナーンらしい走りを期待したいですね。
もてぎの予選でクラッシュした影響で、体にダメージが残っていた武藤英紀は、19番グリッドからスタート。不調を感じさせない走りで序盤からポジションをアップし、最初のピットを終えた52周目にトップ10まで大躍進しました。チームはピットのたびに素早いピット・ワークを見せ、武藤もコース上で果敢なオーバーテイクを披露。なんと13台抜きの6位でゴールしたのです。今シーズン最後のレースで、7回目のトップ10フィニッシュを達成した武藤。オフ・シーズンの間に体をしっかり整えて、来シーズンこそ初優勝を獲得してほしいですね。
「スタート前は体がふらふらでした。レースが始まって、とにかく集中ていこうと。そしたら全然つらくなくなり、順位を上げることができました。最後の40周で、前との差が40秒、後ろとの差も40秒となり、落ち着いたらいっきに体がつらくなりました。クルマは序盤から良かったんですが、最後のスティントだけは気をつけて走ったんですね。ピット・ストップも最高だったし、イン・ラップとアウトラップが速かったです。もてぎのクラッシュで体がつらくなり、ほんとうはそこから休みたかったけど、正直、無理して出て良かったと思います。ひとつもミスがなかったと思いますし、自信になりましたね。今シーズンを振り返ってみると色々かみ合わなかったときもあったんですけど、収穫もありました。ロードもオーバルも何戦かうまくいったレースはちゃんと結果が出ています。母国でクラッシュして、やっぱりファンの応援が大事だということを改めて実感しましたね。ドライバーとしても人間としても成長できたと思います」と最終戦を振り返った武藤。最後に熱い走りを見せてくれて、来シーズンが今からほんとうに待ち遠しいです。オフシーズンはゆっくり休んでください!
昨年まで開幕戦として3月に開催されてきたホームステッドでしたが、今年は最終戦に変更。この時期にNASCARで戦っていた経験を持つガナッシやペンスキーが有利な展開となりました。インディカー・シリーズ史上初のノー・コーション・レースになるなんて、いったい誰が予想できたでしょう。レベル・アップした今シーズンを象徴するようなレースでしたね。
2003年と2008年に続き、2年連続3度目のインディカー・シリーズ・タイトル獲得となったチップ・ガナッシ・レーシング。CART時代を合わせれば、7度目のチャンピオンシップ制覇となります。今日のフランキッティの勝利はチームの34勝目で、AGRとタイで2番目に多い記録です。ランキングのワンツーを占めた2009年も、ガナッシの強さが際立ったシーズンでしたね。2度チャンピオンを経験したドライバーが2人もいるこのチームは、来年も強さを維持し、CART時代のような4連覇も夢ではないでしょう。
今日も最高気温が34度まで上昇したホームステッド。昨日同様、外にいるだけで汗がにじみ出てくる蒸し暑さとなりました。午後5時からのスタートでしたが、暑さは一向に引くことも無く、歩いているだけで汗が滴り落ちるほど。今シーズン最後のレースでしたが、取材していて一番体力的に厳しかったです。レースが終了して表彰台のセレモニーが始まるとやっと外が暗くなり始め、チャンピオンシップ・セレモニーが終る頃には夜空に変わっていました。スタート時間がちょっと中途半端な感じで、こんなに暑いならもう少し遅めのスタートでもいいかもしれませんね。今シーズンのフォト・レポートは楽しんでいただけだでしょうか。来年はブラジルの市街地レースから開幕する予定で、今年以上の熱いシーズンが期待できそうです!