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第12戦ケンタッキー【決勝】フォト・レポート

<US-RACING>

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第12戦ケンタッキーの夜空の下で20回もリード・チェンジがあり、その末にフォト・フィニッシュで勝ち抜いたのは、ライアン・ブリスコーでした。わずか0.0162秒でエド・カーペンターを交わしたのです。「サム・ホーニッシュJr.が昔外側で勝利をつかんだときがあったよね?今回は僕が似たような体験をした気がする。ペンスキーのためにまた1勝できてすごく嬉しいよ。ただ粘り続けただけだね。ターン3と4の間でエド・カーペンターが前に出て、僕がバックストレートで前に出るという感じだった。ターン3と4の間のタイミングでプッシュ・トゥ・パスを使っていたんだ。最後のほうにどんどんタフになったけど、なんとか完璧にフィニッシュすることができた」と笑顔のブリスコー。開幕戦セント・ピーターズバーグ以来の勝利でした。ポイント・リーダーだったディクソンが7位でフィニッシュしたため、ブリスコーは8ポイント差でチャンピオンシップ・ランキング・トップに浮上しましたよ。

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2位に入ったのは、ケンタッキーで予想外の大活躍を見せたエド・カーペンター。14番グリッドからスタートしたカーペンターは、56周目に3番手に浮上し、残り44周の156周目に初めてトップに躍り出ました。180周目に2番手ブリスコーに0.3657秒の差をつけて首位をキープ。ここからブリスコーがカーペンターに並び、2台のタイヤが何度も接触しそうになるほど、サイド・バイ・サイドが最後まで続いたのです。「最後のピット・ストップ後にまたトップに浮上して、ほんとうにすべての力を尽くしてリードを守ろうとしていた。この機会を与えてくれたお母さんとトニー(ジョージ)、そしてスポンサーにも、ほんとうに感謝しているよ。これまでは、すごくタフな1年だったけど、このレースをきっかけに、今シーズンの残りのレースで良い勢いに乗っていきたい」と少し感情的になってしまったカーペンター。7年間のインディカー・キャリアのベスト・フィニッシュであり、ビジョン・レーシングのオーバルにおける最高位でもあります。IMSとIRLの元CEOであるトニー・ジョージは、CEOを辞めてチームに力を注いできた成果かもしれません。

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たった6日前にピット・アクシデントで手、鼻、アゴなどに火傷を負ったトニー・カナーンでしたが、9番グリッド・スタートからみごと3位表彰台フィニッシュしました。「最高なレースだったよ。ほとんどアクシデントのない、すごくきれいなレースだったね。接戦を見に来たファンのみんなは大満足だろう。インディカーのみんな、ブライアン・バーンハートとオフィシャルのみんなに感謝している。彼らは完璧なパッケージを用意してくれたし、プッシュ・トゥ・パスやファイアストン・タイヤもすごく良かった。僕らを見に来たファンのみんなにほんとうに感謝したい。昔のIRLが戻ってきた気がするよ。きっと次のスーパースピードウェイでも、またエキサイティングなレースができると思う」とハイテンションのカナーン。10レースぶりのトップ5フィニッシュとなりました。次は、今シーズン初優勝を狙いたいですね。

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4位に入ったのは、同じ4番グリッドでスタートしたエリオ・カストロネベス。常に上位グループから離れることなく走行していたカストロネベスでしたが、レース終盤にラインを外し、6番手まで落下。そこから4番手まで追い上げてカナーンと0.1114秒差でチェッカーを受けました。「信じられない。まず言っておきたいけど、このパッケージは素晴らしいよ。プッシュ・トゥ・パスは、最初にあまり効果を感じなかったけど、終盤に急にすごく効いていた。ほんとうに驚いたよ。最後に、チームメイトと協力し合って、ワンツーを狙っていたけど、いきなり外側に行ってポジションを失った。結局また前にいけて、ほんとうに楽しかったよ。ライアン(ブリスコー)とワンツーできなかったのはちょっと残念だけど、ライアンは良くやったね。おめでとう」とこの接戦を振り返ったカストロネベス。シーズン6回目のトップ5フィニッシュとなりました。

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キャリア初のトップ走行で、堂々とレースをリードしてみせたリッチモンド以来のオーバル戦となった武藤英紀。前日に予選がキャンセルされたため、ランキング11位の武藤は11番グリッドからスタートしました。しかし今日の武藤は前回のショート・オーバルと違って、1.5マイル・スーパースピードウエイだったせいか、スピードの乗りが今ひとつ。なかなかトップ・グループにおいつけない展開で、とうとう周回遅れに転落してしまいます。途中、ウイル・パワーのような大胆なピット戦略に出ることもなく、最終的に13位でフィニッシュしました。

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「ずっと全開だったんですが、前のクルマのスリップにすらつけるような状態ではなかったので、クルマに問題があるのかもしれません。チームの中でもダウンフォースの量はみんなと同じか、それよりも少ない感じだったんですね。原因が何なのか、これからチームとじっくり話さなければならないと思います。今日初めてオーバーテイク用のシステムで走ったんですけど、トップを走行していたのならまだしも、今日のような状態ではなんともいえない状況です。次のミド‐オハイオはテストで好感触を得ているので、この鬱憤をはらしたいですね」

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コース上に湧き出る水漏れ、“ウィーパー”によって昨日予選が中止となり、決勝レースのグリッドがエントリー・ランキング順に決まりました。雨の予報があったため、オフィシャルが予定よりも15分早くスタートさせることを決定。小雨が降ってきた中でのグリーン・フラッグとなったので、本格的に降る恐れがあったのですが、ドライのまま最後までレースが続きました。レース中のフル・コース・コーションはたった1回、122周目にジャスティン・ウィルソンのマシンから煙が出たときのみで、最後までクリーンなレースとなった第12戦でした。

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レース前のプラクティスで3番手だったマリオ・モラエスは、16番グリッドから序盤に猛チャージ。30周目に5番手まで浮上し、期待が高まっていました。ところが、第1回目のピットの際に、モラエスがピット・ボックスに入ろうとしたその瞬間に、ピット作業を終えたルーキーのマイク・コンウェイに突っ込まれてスピン。この事故で2台とも大きなダメージを負いましたが、どちらも後にレースに復帰しました。今回も不運なモラエスでしたが、次回のオーバルでも大活躍しそうですよ。

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朝のうちは晴れ間が広がっていたケンタッキー。しかし、午後になると雲行きが怪しくなってきました。午後1時20分ごろにインディライツのプラクティスがスタートする予定でしたが、なんと突然雨が降り出したのです。昨日問題となっていたウィーパーもまだ完全に直っているのか分からない状況だっただけに、今日のレースの開催も危ぶまれてきました。当然、インディライツ、インディカーのプラクティスは遅れたのですが、雨はすぐに止んで、天気は回復。オフィシャルの懸命な乾燥作業と修復作業が実り、なんとかインディライツのプラクティスがスタートし、その後、インディカーのプラクティスもやっと行われました。路面の修復ができなければ、決勝レースの開催日が9月中になるのではと心配されていたのですが、無事レースがスタートして良かったです。白熱のレースとなった第12戦ケンタッキーでしたが、次戦は再びロード・コースへ。13戦ミド・オハイオで、プッシュ・トゥ・パスがどのようなレース展開を生み出してくれるのか、楽しみですね。