<Honda>
2009年8月1日(土)
決勝
会場:ケンタッキー・スピードウェイ(全長1.5マイル)
天候:曇り
気温:23〜24℃
2009年のIRLインディカー・シリーズ第12戦はケンタッキー・スピードウェイでの300マイルレースで、オーバルコースでのレースは6月下旬に行われた第8戦リッチモンド以来となった。予選は、前日までの雨の影響でコースへ水が染み出し続けたために中止され、出走23台のスターティング・グリッドはエントラントポイント・ランキングによって決定された。
レースは夜の8時半過ぎ、曇り空の下でスタート。雨の心配もされたが、幸いにも予定通り200周でレースは争われた。
今戦から新しい空力ルールが採用され、マシンのダウンフォースは増加。レースではこれまで以上に接近戦が可能となると見られていた。同時に、新たに装備されたオーバーテイクボタン“Hondaボタン”によって、順位変動の激しい、抜きつ抜かれつのバトルが繰り広げられることも期待されていたが、レースはそうした期待に見事に応えるエキサイティングなものとなった。
ポールポジションからスタートしたポイントリーダーのスコット・ディクソン(Target Chip Ganassi Racing)はトラフィックの中でのハンドリングが完ぺきでなく後退。トップの座は3番手スタートだったライアン・ブリスコー(Team Penske)の手に渡り、157周目を迎えたところではエド・カーペンター(Vision Racing)がトップに立った。14番手スタートだったカーペンターは、1周目にして11位までポジションを大きく上げ、1回目のピットストップを迎える前に4位まで浮上。目覚しい走りをさらに続けてトップにまで駆け上がった。
最後のピットストップも終えたレース終盤、トップ争いは依然としてカーペンターがリード。2位争いを繰り広げるドライバーたちの中からトニー・カナーン(Andretti Green Racing)が抜け出してカーペンターへのアタックを始め、そのすぐ後ろにはブリスコーが肉迫した。
ブリスコーは128周目のリスタートでアウトにマシンが流れてしまい、クラッシュはギリギリで避けたものの8位まで大きく後退していた。しかし、そこからトップ争いまで巻き返し、残り9周、ついにブリスコーはカーペンターのアウト側へとマシンを並べた。この後の2人はサイド・バイ・サイドのままゴールまで戦い続けた。カーペンターは初勝利をかけて全力を出しきり、クリーンに戦い抜いた。しかし、ウイナーとなったのはアウト側を走り続けたブリスコーだった。2人のゴールでの差は僅かに0.0162秒差しかなかった。ケンタッキー・スピードウェイでの最少差、インディカー・シリーズでは歴代11位に入る僅差でのゴールであった。
惜しくも敗れたカーペンターだったが、2位はキャリアベストとなった。3位はカナーン、4位はエリオ・カストロネベス(Team Penske)のものとなった。
ポイント2位のダリオ・フランキッティ(Target Chip Ganassi Racing)が6位、ディクソンも7位と振るわなかったため、今季2勝目、キャリア4勝目を挙げたブリスコーがポイントランキングのトップに立ち、ディクソンは8点差のランキング2位、フランキッティはトップから11点差のランキング3位へとそれぞれ後退した。
ピットでの小さなトラブルを除いてアクシデントが発生せず、フルコースコーションが1回しか出されなかったレースは、ケンタッキー・スピードウェイでの新記録となり、インディカー・シリーズの歴代2位となる平均時速200.893マイルという超ハイスピードでゴールまで突き進んだ。
武藤英紀
(Andretti Green Racing)は11番手スタートから13位でゴールした。ハンドリングはいいが、スピードが出ないマシンでの苦戦となったためだ。
コメント
ライアン・ブリスコー(優勝)
「私が勝てたなんて信じられない。走っていて本当に楽しい、エキサイティングなレースだった。今日は危ういシーンも2度あったが、何とかコントロールしきって、そこからトップまで返り咲くことができた。新しい空力ルールによってマシンは安定感を増していた」
エド・カーペンター(2位)
「マシンは最高で、走っていてとても楽しかった。優勝できなかったのはとても悔しいが、Team Penskeを相手にあと少しで勝てるレースを戦うことができた。これは我々のような新しいチームにとっては優勝と同じぐらいに大きな価値があると感じている」
トニー・カナーン(3位)
「我々にとって今夜の結果は最高のものとなった。今シーズンはフィニッシュまで走れていないレースが多いだけに、3位という結果は本当にうれしい。表彰台に上るのは4月以来で、まるで数カ月間のオフをとっていたように感じたぐらいだった。シーズン終盤に向け、我々は今日、いい再スタートを切ることができたということだと思う」
武藤英紀(13位)
「全開にしてもスピードが伸びず、前を走るマシンのドラフティングに入って行けない状態でした。遅いクルマは抜くことができていましたから、マシンのセッティング自体がおかしかったのではないと思います。チームメートたちと比べても自分のマシンはダウンフォースを少し小さくしていたので、スピードが出ないはずはありませんでした。次のオーバルレースであるシカゴランドには、今回とは違うシャシーを投入することも考えています」
ロジャー・グリフィス|HPD レース・チームマネジャー
「スタートからゴールまでエキサイティングなバトルが続く、これこそインディカーというレースになった。今日はトップ交代も多かったが、トップだけでなく、すべてのポジションが激しく争われ続けていた。IRLが今回から導入した空力のルールは、見事に狙い通りの効果を発揮したといえる。我々Hondaが今回のレースから提供を始めた“Hondaボタン”(=オーバーテイク用ボタン)も同じくレースをエキサイティングにしていたのではないかと思う。ドライバーたちがHondaボタンの使い方を完全にマスターするまでには、まだ少しの時間がかかるだろう。どのような使い方がベストなのか、そうした新しい話題を提供できたという点でもHondaボタンの導入は正しかったと考えている」
決勝リザルト
順位 No. ドライバー チーム C/E/T 差
1 6 ライアン・ブリスコー Team Penske D/H/F 01:28:24.3246
2 20 エド・カーペンター Vision Racing D/H/F +0.0162
3 11 トニー・カナーン Andretti Green Racing D/H/F +0.1614
4 3 エリオ・カストロネベス Team Penske D/H/F +0.2728
5 02 グラハム・レイホール Newman/Haas/Lanigan Racing D/H/F +0.6346
6 10 ダリオ・フランキッティ Target Chip Ganassi Racing D/H/F +1.7670
7 9 スコット・ディクソン Target Chip Ganassi Racing D/H/F +3.2512
8 7 ダニカ・パトリック Andretti Green Racing D/H/F +4.7231
9 12 ウィル・パワー Team Penske D/H/F +6.1424
10 26 マルコ・アンドレッティ Andretti Green Racing D/H/F +6.9963
11 4 ダン・ウェルドン Panther Racing D/H/F +12.7597
12 67 サラ・フィッシャ− Sarah Fisher Racing D/H/F +15.9732
13 27 武藤英紀 Andretti Green Racing D/H/F +27.9705
14 14 ライアン・ハンターレイ A.J.Foyt Enterprises D/H/F +3Laps
15 13 E.J.ヴィソ HVM Racing D/H/F +5.3351
16 2 ラファエル・マトス Luczo Dragon Racing D/H/F +4Laps
17 24 マイク・コンウェイ Dreyer & Reinbold Racing D/H/F +8Laps
18 5 マリオ・モラレス KV Racing Technology D/H/F +12Laps
19 06 ロバート・ドーンボス Newman/Haas/Lanigan Racing D/H/F +15Laps
20 23 ミルカ・デュノー Dreyer & Reinbold Racing D/H/F +35Laps
21 18 ジャスティン・ウィルソン Dale Coyne Racing D/H/F +81Laps
22 43 トーマス・シェクター Dreyer & Reinbold Racing D/H/F +141Laps
23 98 ジャック・ラジアー Curb/Agajanian/Team 3G D/H/F +157Laps
ポイントスタンディング
順位 ドライバー チーム 総合ポイント
1 ライアン・ブリスコー Team Penske 416
2 スコット・ディクソン Target Chip Ganassi Racing 408
3 ダリオ・フランキッティ Target Chip Ganassi Racing 405
4 エリオ・カストロネベス Team Penske 341
5 ダニカ・パトリック Andretti Green Racing 309
6 マルコ・アンドレッティ Andretti Green Racing 279
7 ダン・ウェルドン Panther Racing 274
8 トニー・カナーン Andretti Green Racing 274
9 グラハム・レイホール Newman/Haas/Lanigan Racing 265
10 ジャスティン・ウィルソン Dale Coyne Racing 253
11 武藤英紀 Andretti Green Racing 237
12 エド・カーペンター Vision Racing 226
13 ライアン・ハンターレイ A.J.Foyt Enterprises 210
14 ウィル・パワー Team Penske 209
15 ロバート・ドーンボス Newman/Haas/Lanigan Racing 209
16 ラファエル・マトス Luczo Dragon Racing 208
17 マリオ・モラレス KV Racing Technology 181
18 E.J.ヴィソ HVM Racing 179
19 マイク・コンウェイ Dreyer & Reinbold Racing 173
20 トーマス・シェクター Dreyer & Reinbold Racing 137
21 アレックス・タグリアーニ Conquest Racing 114
22 ポール・トレイシー KV Racing Technology 87
23 ミルカ・デュノー Dreyer & Reinbold Racing 63
24 ヴィットール・メイラ A.J. Foyt Enterprises 62
25 サラ・フィッシャ− Sarah Fisher Racing 61
26 ジャック・ラジアー Curb/Agajanian/Team 3G 53
27 スタントン・バレット Curb/Agajanian/Team 3G 50
28 ダレン・マニング Dreyer & Reinbold Racing 38
29 リチャード・アンティヌッチ Curb/Agajanian/Team 3G 36
30 タウンゼント・ベル Rahal Letterman Racing 32
31 A.J.フォイト4世 A.J.Foyt Enterprises 26
32 アレックス・ロイド Chip Ganassi Racing Sam Schmidt Motorsports 17
33 スコット・シャープ Panther Racing 16
34 ジョン・アンドレッティ Richard Petty Motorsports/Dreyer & Reinbold Racing 12
35 ネルソン・フィリップ HVM Racing 10
36 オリオール・セルビア Roth Racing 10
37 デイビー・ハミルトン Dreyer & Reinbold Racing 10