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アメリカン・ル・マン・シリーズ 第10戦 プチ・ル・マン【初日】フォト&レポート

<US-RACING>

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開幕戦のセブリングにならぶアメリカン・ル・マン・シリーズのビッグ・イベント、プチ・ル・マンの時期が今年もやってきた。初日は公式テスト・デイが設けられ、各チームとも予選・決勝に向けたセット・アップに専念し、精力的に走りこんだ。ジョージア州ブラセルトンにあるロード・アトランタは朝から快晴。10月に入ったこともあって、朝のうちは若干の肌寒さがあり、アメリカ東部地方にも秋が近づいていると感じた。それでもテスト・セッション開始時間となった12時40分ごろには、Tシャツ一枚で十分なほど気温も上昇。汗をかくほどの蒸し暑さはなく、風があったことで過ごしやすい気候だった。1000マイル/10時間というシリーズ二番目のレース時間を誇るプチ・ル・マンは、開幕戦以来となるプジョーの参戦、ザイテックによるハイブリッド車両の投入など話題が豊富。インディカー・シリーズの2008年シーズンがすでに終了したことで、多くのインディカー・ドライバーが参戦しており、イベント開始前から盛り上がりをみせている。

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開幕戦セブリング以来となるアウディVSプジョーのクリーン・ディーゼル対決は、初日のテスト・セッションから早くも火花が散っている。総合トップは1分7秒091をマークした2号車のアウディ。昨年のプチ・ル・マンで1号車アウディによって記録された1分8秒906のコース・レコードを、いっきに1.815秒も縮める驚異的なタイムをたたき出す。だが07号車プジョーも応戦し、トップのアウディとはわずか0.184秒差の総合2位。開幕戦セブリングでは見事にプジョーを返り討ちにしたアウディは、プチ・ル・マンでどんな結果を手にするのか、明日以降もクリーン・ディーゼルの2メーカーによる熱戦に注目だ。

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セブリング12時間、ル・マン24時間とアウディに敗れたプジョーは、必勝を誓ってロード・アトランタにやってきた。当初2台での参戦を予定していたが、直前に行われたヨーロッパのル・マン・シリーズ最終戦、シルバーストーン1000kmでプチ・ル・マン出走を予定していたマシンが大破したため、今回は1台での参戦。ニコラ・ミナシアン、ステファン・サラザン、クリスチャン・クリエンの3人にプジョーの命運が託された。プジョー908にとって初挑戦のロード・アトランタにも関わらず、初日からアウディと対等に渡り合い、セブリング12時間、ル・マン24時間と同じく十分な速さをみせている。勝利への鍵は課題の信頼性になるだろう。

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ハイブリッドという画期的なマシンを投入してきたザイテック。会場にはザイテック07Sに搭載されるエネルギー回生システム(KERS)を紹介するディスプレイが用意されていた。写真中央に置かれているモーターでエネルギーを回収し、左手のインバーターを介して右手のリチウム・イオン電池に蓄電。ピーク時には40馬力程度のパワーを補えるそうだ。デトロイトでの参戦発表以来、話題になっていたザイテックのマシンが、どのような走りをするのか注目があつまる中で、ダニー・ワッツとオリバー・プラのコンビがいきなり総合4位のタイムをマーク。初日から高いパフォーマンスを発揮し、今週末の活躍を大いに期待させた。

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LMP2クラスのタイトル争いも佳境に入り、ペンスキー・ポルシェの7号車とアキュラ勢のハイクロフト・レーシングがドライバーズ・チャンピオンをかけて熱戦を繰り広げている。第9戦デトロイトではハイクロフトが総合2位を獲得し、ポイント・リーダーの7号車との差は4ポイントまで縮まった。8時間を超えるプチ・ル・マンは通常のレースよりもポイント配分が高く、ハイクロフトとしては最終戦ラグナセカを前になんとか7号車に追いつきたいところだ。その重要な一戦となるプチ・ル・マンで同チームは、アキュラに初めての総合優勝をもたらしたデイビッド・ブラバムとスコット・シャープのコンビに加え、2007年のインディ500&シリーズ・チャンピオンのダリオ・フランキッティを招集。昨年のインディカー・チャンピオンという最強の助っ人を迎えてペンスキー追撃の態勢を整えた。初日はタイトルを争う7号車から0.733秒遅れの総合7位となったが、2日目以降の巻き返しが注目される。

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シーズン後半からアキュラ勢の猛追を受けるペンスキー・ポルシェ。シリーズ3連覇に向けてポイント・リーダーの座に踏みとどまりたいプチ・ル・マンには、6号車と7号車に加え、3台目のマシンとなる5号車をエントリーしてきた。その5号車には同チームのインディカー・ドライバー、エリオ・カストロネベスとライアン・ブリスコーを総動員。今回のレースにかけるペンスキーの強い意気込みが伝わってくる。エンジンとシャシーのマニュファクチャラーズ・タイトルでは、アキュラに4ポイントの逆転を許しており、ポルシェはこのレースを落とすわけにはいかない。3台体制で挑むペンスキーはアキュラ勢を止められるのだろうか?

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第9戦デトロイトで初めての総合優勝を達成したアキュラ勢のアンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)。このプチ・ル・マンではレギュラーのフランク・モンタニーとともに、トニー・カナーンとマルコ・アンドレッティという同チーム所属のインディカー・ドライバーが起用される豪華な布陣となった。デトロイトの総合優勝で勢いづくAGRは、ロード・アトランタでも速さを見せて総合3位。LMP2クラスのトップで初日を終えた。写真は2度目のプチ・ル・マン挑戦となるカナーン。昨年はレース開始わずか2時間でスタート・ドライバーのブライアン・ハータがアクシデントに巻き込まれ、決勝レースを走ることはなかったカナーンだが、今年こそプチ・ル・マンの決勝デビューを飾りたい。ちなみにカナーンは最終戦ラグナセカでもモンタニーのパートナーとしてAGRのステアリングを握ることが発表されている。

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ド・フェラン・モータースポーツからは今シーズンのインディ500&インディカー・シリーズ・チャンピオンであるスコット・ディクソンが参戦。1999年にフェラーリ333SPで出場して以来のプチ・ル・マンに挑む。「ジルのチームで走れるなんてとてもわくわくしているよ」と参戦が決定したときに話していたディクソンだが、スポーツカーのブランクが長いせいか初日は精彩を欠いて総合11位。さすがにピットへ戻ってきたディクソンの表情も厳しいものだった。決勝までの短い期間でどこまでアキュラのマシンを乗りこなしてくれるか、現役インディカー・チャンピオンの実力はいかに。