Nobuyuki Arai's

LMP1参戦発表と初の総合ワン・ツー・スリー!デトロイトの話題を独占したアキュラ

画像 来季からのLMP1参戦発表、そして2度目の総合優勝を史上初のワン・ツー・スリーで達成と、アキュラにとって歴史的な週末となったALMS第9戦デトロイト。まさにアキュラが週末を席巻しました。

 アキュラの関係者にとっては、忘れられない週末になったことでしょう。金曜日に来シーズンからのLMP1クラス参戦の発表を行った翌日のレースで、AGRの26号車が総合優勝。ハイクロフト、ド・フェランの2台も続き、何とワン・ツー・スリー・フィニッシュで表彰台を独占という、これ以上ないと言うほどの結果になりました。

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 LMP1へのステップアップは、アキュラがALMSへの参戦を決定した時点ですでに社内で決まっていたようです。ただ、その参戦時期についてはまったくの白紙で、まずはLMP2クラスでの戦いを見てから決めていくということでした。結果的に、ALMS参戦3年目となる2009年からLMP1へステップアップすることになりましたが、これは非常に理想的かつ、スムーズな移行だったといえるのではないでしょうか。LMP1へは、いまやアキュラのエース・チームにまで成長したハイクロフトと、今年5月に立ち上がった新興のド・フェラン・モータースポーツの2チームがアキュラの新LMP1マシン、ARX-02aを走らせることも記者会見で発表されました。つまり、2台体制でLMP1を戦うことになるわけです。昨年のALMSデビュー時からアキュラの開発チーム的要素が強く、2年目の今年にめきめきと力をつけてきたハイクロフトの選択は規定路線とも言えそうですが、驚いたのが2台目としてド・フェランを選んだこと。いや、逆の言い方をすれば、“AGRが選ばれなかった”と、言ったほうがいいかもしれません。

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 考えてみれば、ド・フェランに関してはチーム立ち上げ時から、アキュラとの間で来年からのLMP1参戦を視野に入れていたと見る向きもできます。ド・フェランは、チーム立ち上げ前にはホンダF1のスポーティング・ディレクターを務めるなどホンダと密接な関係を築いていましたし、何よりドライバーとしてのマシン開発能力は一目置くところがあって、そのあたりをアキュラ側が買った結果と言えるのではないでしょうか。一方で、昨年のデビュー以来アキュラのエース・チームと見られていたAGRは、この結果に苦虫を噛んでいるのではないでしょうか。ただ、AGRは期待されていたような成績をここまで残せていないですし、何よりチームとして独自色が強く、アキュラ側と密接になってマシン開発を続けながら参戦していくことが難しかったと判断されての、今回の発表だったのではと推測できます。アキュラは、LMP1挑戦と並行して、LMP2クラスに来季以降も継続参戦することを発表し、フェルナンデス・レーシングへのマシン供給は記者会見の席上で発表されました。ただ、「あと1チームはまだ交渉中」とエリック・バークマンHPD社長が席上で語ったように、AGRとはまだ契約に至っていないことも明らかになったのです。両者の間でどのようなことが起こっているのかまだ外側には聞こえてきませんが、HPDとAGRの関係が以前ほど良好に行っていないことを暗にほのめかしているとも見えます。最終的にはAGRが来季もLMP2クラスに参戦し続けることが予想されますが、ちょっと心配ではありますね。

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 そのAGRが今回の発表に対して奮起したのかどうかはわかりませんが、翌日の決勝ではLMP1にステップ・アップする2チームを抑え、初の総合優勝。アキュラ勢は表彰台を独占する快挙を達成しました。レースは、AGRのまさに作戦勝ち。2時間45分のレース中、タイヤ交換を序盤の1度しか行わない作戦でいっきにトップへ躍り出ると、あとはエースのフランク・モンタニーがそのままリードを保ちチェッカー。インディカーでは、シーズン中盤にピット作戦がことごとく失敗して痛い目を見ていたAGRですが、今週末のALMSでは鮮やかなチームワークで優勝を勝ち取りました。「ピット・ストップが素晴らしかった。タイヤは終盤も全然問題なかったよ」とモンタニーも優勝記者会見でしてやったりの表情でした。AGRは3戦前からジェームス・ロシターをドライバーとして迎えており、まさに“スーパーアグリF1コンビ”がアキュラのマシンで快挙を達成したわけです。この辺のホンダの結束力は素晴らしいものがありますね。

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 アキュラのLMP1参戦発表により、今後はALMS内でもアキュラの存在感がより増すことになっていくでしょう。特にLMP1では、長年アウディが支配し続けてきたこともあり、ようやくほんとうの意味で最高峰クラスの戦いが見られそうですし、とても楽しみですね。それと注目は、アキュラがどのようなマシン・パッケージで臨んでくるかです。LMP1マシンに関してバークマンHPD社長は、「まだ何も決まっていない」と語っていましたが、いろいろなアイデアが隠されているのではと期待してしまいます。特に、ALMSは「エコ・レース」を推進していて、E10やE85といったバイオ燃料の使用も始まっていますし、次戦プチ・ル・マンでは「グリーン・レーシング・チャレンジ」と呼ばれる低燃費といかに環境にやさしいかを競うアワードもスタートします。何より、同じLMP1で直接のライバルとなるアウディが、レース史上初めて二酸化炭素の排出が少ないディーゼル・エンジンを使用していることからも、アキュラが環境にやさしい「エコ・エンジン」を投入してくる可能性は十分に考えられます。折りしも、アキュラのLMP1参戦発表の直前に、ザイテックが同シリーズ史上初めてハイブリッド・エンジンをプチ・ル・マンから投入することを発表したばかり。ハイブリッドでは一日の長があるアキュラが、「ハイブリッド・エンジンで参戦!」なんて仰天発表があったらほんとうに驚きますね。