<Honda>
2008年7月6日(日)
決勝
会場:ワトキンス・グレン・インターナショナル
天候:晴れ
気温:28〜29℃
2008年IRL IndyCarシリーズ第10戦は、ニューヨーク州のほぼ東端に造られたロードコース、ワトキンス・グレン・インターナショナルで開催された。ワトキンス・グレンは山間の小さな町だが、1940年代後半に公道レースが盛んに行われ、アメリカにおける自動車レースのメッカとなった。その町にアップダウンに富んだ地形を利用したサーキットがオープンしたのは1957年。そして、1961年から1980年にわたってF1グランプリを開催。州外れの小さな町は、その名を全米に知られるようになった。
今シーズンのIndyCarシリーズは、ロードレースを6戦スケジュールしているが、今回のレースはシーズン序盤の第2戦Hondaグランプリ・オブ・セント・ピーターズバーグ以来となる。伝統あるサーキットに結集した26人のインディカードライバーとチームは予選から激しく競い合い、ライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)が平均時速135.787マイルでポールポジションを獲得した。
決勝レースは青空の下、全長3.37マイルのコースを60周して争われ、予選3位だったライアン・ハンターレイ(レイホール・レターマン・レーシング)がキャリア初勝利を飾った。彼を追ってキャリア・ベストの2位でフィニッシュしたのはダレン・マニング(A.J.フォイト・エンタープライズ)。トニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が予選6位から3位でゴールした。
前人未到の4年連続優勝がかかっていたポイントリーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は、序盤から2位につけていたが、レースが終盤を迎えた49周目、リスタートに備えてタイヤを温めている最中にスピンして大きく後退、11位でゴールした。このスピンに巻き込まれて、ポール・シッターだったブリスコーも12位までポジションを下げてのフィニッシュとなった。
レイホール・レターマン・レーシングの優勝は、2004年にミシガンでバディ・ライスが飾った時以来で、通算4勝目。A.J.フォイト・エンタープライズにとっては、2002年にアイルトン・ダレによってカンザスでのレースを制して以来となる好成績となった。
武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は予選では20位と苦戦したが、決勝日のファイナルプラクティスでマシンセッティングを向上させ、フルコースコーション中だった7周目にピットインする作戦もよかったことでトップ10入りを果たす9位でゴールした。
第10戦を終え、依然としてポイントリーダーはディクソンで、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が48点差で2位につけている。トップと59点差、2位と11点差の3位はダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)。今回3位でゴールしたカナーンはディクソンに66点、ウェルドンに7点と差を縮めた4位につけている。武藤はトップと132点差の6位で、ルーキー最上位を保っている。
■ライアン・ハンターレイ(優勝)
「夢がかなった。どれだけうれしいか言葉では表現しきれない。ディクソンがスピンし、ブリスコーが巻き込まれたのを見た時は、まるで海がまっぷたつに割れて道ができたようだった。そして、とてもよいリスタートを切ってマニングをパスした。チャンスがあったら思いきってインへ飛び込もうと考えてレースを戦っていた。今シーズンの我々は何度か不運に見舞われてきたが、今日はすべてが僕らの望む方向に向かい、優勝することができた」
■ダレン・マニング(2位)
「自分はストレートで速く、ハンターレイはコーナーが速かったと思う。優勝できなかったのは悔しいが、今週の我々はずっと高い競争力を見せ続けた。ここ2戦ほど苦戦を続けてきたので、今回の2位は流れを変えてくれるに違いない。レースでは作戦も見事に的中した。燃費をセーブする走りで一気にポジションを上げることができた。僕らは1台だけで戦う小さなチームだが、上位で競い合う力があることを証明した。ファンも大いに楽しんでくれたレースになっていたと思う」
■トニー・カナーン(3位)
「とても奇妙なレースだった。新しい顔をビクトリーレーンで見るのもいいことだ。誰かが初めての勝利を挙げるのを見ると、僕もうれしくなる。今日はハンターレイにおめでとうと言いたい。今日の僕らは全力を尽くした。ファイナルプラクティスでトラブルのためにアクシデントを起こしたが、チームはそれを完ぺきに直してくれた。彼らに感謝する。そのアクシデントで痛めた手も何とか最後まで持ってくれた」
■武藤英紀(9位)
「作戦もうまくいき、自分より上のポジションでアクシデントもあったことで7位まで上がれたので、そのまま7位でゴールしたかったですね。しかし、20位からのスタートだったことを考えると、9位フィニッシュはまずまずの結果だと思います。今回のレースでもポイントを稼ぐことができたことはよかったですし、ロードレースを楽しむこともできました。最後まであきらめず、1台でも多くのマシンをパスするようチャレンジし続けることができた点もよかったと思います」
■エリック・バークマン|HPD社長
「レース終盤にイエローが続けて出たのは残念だったが、レースは非常にエキサイティングなものとなっていた。レース序盤とは大きく異なるメンバーたちによる優勝争いとなり、レイホール・レターマン・レーシングのライアン・ハンターレイがキャリア初優勝を飾った。A.J.フォイト・エンタープライズのダレン・マニングもすばらしい奮闘ぶりを見せていたし、そのほかにも、新チームの中から目覚ましいパフォーマンスを発揮していたところがあった。IndyCarシリーズはさらに競争が激しくなっているということだ。今回のレースではシリーズポイント上位のドライバーたちがアクシデントやトラブルによって下位に沈んだため、ポイント争いの差が縮まった。最終戦を迎えた時、何人ものドライバーがチャンピオンとなる可能性を残している、接戦が最後まで続いてくれることと期待したい」