<US-RACING>
インディカー・シリーズはいよいよ後半戦に突入し、舞台はシリーズ中最短だったリッチモンドの0.75マイル・オーバルから、最長となる3.4マイルのワトキンス・グレンへと移った。今季初となる常設ロード・コースは、毎年雨に悩まされるものの、初日は終日快晴。朝の肌寒さは陽が高くなるにつれて上昇し、絶好のコンディションの下でプラクティスが行われた。お昼からは湿度が高いためか蒸し暑さを感じ、歩くと汗が少しにじんだが、先週のリッチモンドとは違う、心地よい暑さといえる。この天候が決勝まで続いてくれればいいのだが・・・。
現在、このワトキンス・グレンを3連覇しているスコット・ディクソンが、今年も初日から速さを見せ、プラクティスの総合トップ・タイムをたたき出した。この日39周を走り込んだディクソンは、午後のセッションが始まって早々の26周目に1分30秒1947をマーク。他のドライバーがセッション終盤に自己ベスト・ラップを次々に更新するものの、結局ディクソンのタイムを上回るドライバーは現れなかった。「セッション終盤に予選セットを試したけど、マシンはとても安定しているよ。だからもう少し攻めて、違うダンパーを使うなど、決勝に向けたスピード・アップを図っていたんだ。ポールを取れるマシンだと思うし、レースでもかなり良いセット・アップになっていると思うよ」と自信を見せるディクソン。ワトキンス・グレン4連覇に向け、好発進の初日となった。
プラクティス総合2位につけたのは、ペンスキーのエリオ・カストロネベス。このワトキンス・グレンでは3年連続でポール・ポジションを獲得しているだけあって、ディクソンに対してわずか0.0944差に迫る好タイムを記録した。まだ初日が終わったばかりだが、今年のグレンもディクソンVSカストロネベスの対決がヒートアップしている。「とても良い感じだよ。いくつか問題もあったけど、おかげでたくさんの情報を手に入れることができた。マシンはまだまだ速くなると思うし、今回はとても自信がある。明日は素晴しいバトルになると、強く感じているよ」と意気込むカストロネベス。過去3年はいずれもポール・スタートながら、ミスや不運で勝利を逃しているため、今年こそ優勝を引き寄せたいところ。
朝のプラクティスでトップ・タイムをマークしたダン・ウエルドン。午後になってから自己ベスト・タイムを塗り替えることが出来なかったが、総合3位で初日を終える。過去3年いずれのレースもトップ3でのフィニッシュがないため、ウエルドンは初日からトップ3に入ったことに手ごたえを感じているようだ。「ここまで上手くできていることに、とても満足しているよ。最初のセッションをリードできたことは良いことだし、幸先の良いスタートが切れた。明日の予選に向けても、良いベース・セットアップになっていると思うね」とウエルドン。トップ3のドライバーは、3人とも自信のあるコメントを残しているが、はたしてこの中でポールを獲るのは誰だろうか?明日の予選が白熱することは間違いない。
初日のプラクティスが行われた7月4日は、アメリカの独立記念日。そのため、ナショナル・ガードのスポンサードを受けるパンサー・レーシングが、アメリカ軍に敬意を評し、所属ドライバー3人のレーシング・スーツを迷彩色の柄に変更した。写真はおなじみのヴィットール・メイラだが、今までのレーシング・スーツにはないカッコよさがあり、とても新鮮に感じる。プラクティスではトップ3に次ぐ総合4位につける素晴しい走りを披露し、さっそくレーシング・スーツの効果が出たのかも!?「今のところマシンは素晴しい感触だよ。とても速いし、ハンドリングも良いんだ。今日はチームが行った変更の全てが良い方向へいったように感じたね。ここではパンサーのマシンがいつも良いから、今週末もこれまでのことを再現できると思うよ。予選までにやるべきことがまだあるけど、独立記念日の週末に最高のスタートが切れたんだ」と喜ぶメイラ。近くて遠いキャリア初優勝を、ワトキンス・グレンでつかめるだろうか。
第2戦セント・ピーターズバーグからここまで慣れないオーバルのレースが続き、苦戦を強いられてきたチャンプ・カー勢。しかし、シリーズ後半はこのワトキンス・グレンのほか、ミド-オハイオ、熟知しているエドモントン、インフィネオン、デトロイトとロード/ストリート・コースが目白押しで、インディカー勢を脅かすことは間違いないだろう。初体験となるワトキンス・グレンでも、ウィル・パワーの5位を筆頭に、ジャスティン・ウイルソン(7位)、ブルーノ・ジュンケイラ(9位)と、プラクティス・トップ10に3人が入った。トップのディクソンとのタイム差はコンマ5秒以上あるが、明日の予選までにこの差がどこまで縮まるか注目したい。ちなみにチャンプ・カーはCARTがスタートした1979年から81年まで、このワトキンス・グレンでレースを開催していたことがあり、ボビー・アンサー(79年&80年)とリック・メアーズ(81年)が勝利を手にしている。
リッチモンドはドライブ・シャフトの破損という、不運なリタイアに終わった武藤英紀。今年初めての常設ロード・コースで良いところを見せたいが、初日は総合17位に沈んでしまった。本人も「空回りしていたのは事実です」と言うとおり、いまひとつ波に乗れていないのは明らかで、2回目のプラクティスではスピンを喫し、リアウイングにダメージを受けてしまう。チームトップのカナーン(6位)から比べると、出遅れてしまった感じがあるものの、明日の予選で挽回して欲しい。
「久々のロード・コースだったので、もう少し時間が欲しかったです。走るたびに速くなっていますが、ミスもあって1周をまとめきれていません。もっとテストができれば、はじめから上手く走れたと思いますが、明日も走行時間があるので良くなると思います。こういうハイスピードのコースをインディカーで走るのは初めてですし、ルーキー・テストができなかったのも非常に痛かったです。他のルーキーはみんな一日走っているわけですからね。明日が今日だったらかなり違ったと思いますよ。今はマシンがどうこうというより、自分に問題がある感じですね。マシンも決まってはいないんですけど、それ以上に僕がマシンのポテンシャルを引き出せていないように感じます。また明日頑張ります」