<US-RACING>
0.1マイルを争う白熱した予選を制したのは、トニー・カナーンだった。21番目に登場したカナーンのライバルは、チームメイトのマルコ・アンドレッティ。1周目のスピードはアンドレッティに届かなかったものの、2周目はこの日最速となる168.692マイルをたたき出す。3ラップ目で再びアンドレッティに遅れをとり、緊張の4ラップ目。168.197マイルで再度アンドレッティを逆転し、今シーズン2回目のポール・ポジションを確定させる平均スピード167.876マイルを記録した。4周走った二人のスピード差は0.119マイルしかなく、タイムに換算するとわずか0.0309秒の大接戦だった。「ポール・ポジションのスタート位置を選べる権利があったとするなら、間違いなくこのコースを選ぶよ。僕達はとても良い仕事をした。僕のチームメイト、ダニカ、マルコ、そしてヒデキに感謝しなくちゃいけないね。ダニカとヒデキが2.3週間前にここでテストをしていて、それがかなり助けになっている。レースを上手く走るために必要なのは、レース・リーダーであることだ。今週末は僕につきが回ってきてくれることを願うよ」とカナーン。アメリカン・オープン・ホイール11年目のベテランにようやくエンジンがかかり始めた。明日の決勝で念願の今シーズン初勝利を手に入れられるか?
マルコ・アンドレッティが2位を獲得し、アンドレッティ・グリーン・レーシングが通算7回目となるフロント・ロー独占を決めた。常にトップ争いをしている印象が強いAGRだが、今シーズン、チームとしてあげた勝利は、意外にも第3戦インディ・ジャパンのダニカ・パトリックだけ。すでに5勝もしているチップ・ガナッシの優位がここまで際立っていた。昨年はこのようなショート・オーバルで圧倒的な速さを見せたAGRが、このリッチモンドで再び優勝することが出来るだろうか。「今日は遅いマシンにセットアップを邪魔されたね。いつも渋滞につかまって、良い走りが出来なかったんだ。だけど、チームにとっては良い一日になった。特に2番手からスタートできるのは良いことだよ。トニーと僕はとても良いレースカーを持っているから、明日が楽しみだよ」と意気込むアンドレッティ。彼自身も早くオーバルでの初勝利を手にしたいようだ。
進化を続ける19歳、グラハム・レイホールがAGRの2台に次ぐ予選3位を獲得した。前日のルーキーテストでは161マイル台に留まり、スピードを伸ばすことが出来なかったレイホールだが、予選ラップでは4周目に168マイル台を記録。平均スピード167.250マイルの3位で予選を終え、チャンピオンシップ・リーダーのスコット・ディクソンと2列目からスタートする。「予選では全てが僕達にとって良い方向になったよ。今週末はずっと苦しんでいて、何をすれば良いかも分からなかった。だから何も期待していなかったんだけど、予選までに大きな変更が出来た。チームは素晴らしい仕事をしたね。ここは追い抜きが難しく、スタート位置を前に取ることが重要だから、この結果にはとても満足しているよ」と喜ぶレイホール。AGRの牙城を崩し、今シーズン2勝目を挙げることができるか。若干19歳のルーキーに注目だ。
苦戦が続くバディ・ライスとドレイヤー&レインボールド・レーシングが、得意とするリッチモンドで奮起。今シーズン、これまで一度もトップ10圏内で予選を終えたことがなかったライスは、リッチモンドとの相性の良さをいかし、見事予選5位を手に入れた。昨年の決勝でも5位でフィニッシュしているため、明日は上位入賞のチャンスがある。「今日は他のマシンについていけたよ。チームにとって素晴らしい結果になったね。先週のアイオワは、ホイール・ベアリングのトラブルで残念な結果になってしまったけど、ここではほんとうに強力なマシンを持っているんだ。決勝でも力強い走りでこの位置で戻ってきたい。リッチモンドはトップ・グループと張り合えるコースの一つだよ」と胸躍らせるライス。ここまで苦しんできた鬱憤を、明日のレースで晴らしたいところだ。
レイホールを筆頭に今週末はチャンプ・カー勢の健闘も光っている。木曜日にルーキー・テストが行われ、インディカー勢より走り込めたことも好調の要因といえるが、わずか一日で初挑戦のコースを舞台にインディカー勢と戦えるのは、ここまで続いたオーバルのレースで確実に成長している証だ。「予選の結果にはとても満足しているよ。予選前のプラクティスでは5番手だったから、僕達が速いマシンを持っていて、予選が上手くできるということがわかっていたよ。今週末のチームの頑張りを誇りに思うね。明日はエキサイティングなレースになりそうだ」と話す、予選9位のブルーノ・ジュンケイラ。2008年のインディカーも折り返しを迎え、これからますますチャンプ・カー勢とインディカー勢の実力が伯仲してゆくはず。明日のレースからシーズン終盤にかけては、更なるバトルを期待できるだろう。
毎年のように雨に悩まされるリッチモンド。昨年は予選が中止となってしまったが、今年は朝から快晴となり、その心配はなさそうだった。例年通りかなり蒸し暑く、外にいるだけで汗がにじみ出るほど。気温は午後3時に35度まで達し、今シーズンこれまでのレースの中でも一番暑い一日となった。
ところが好天は長く続かず、雨雲がリッチモンドに近づいてきた。そのため、午後3時15分からのプラクティスは、2つのグループに分けての走行日程を、全車まとめての走行へ変更される。プラクティス開始直後は、ほんとうに雨が降るのだろうかと思うほど、雲がちらほら見える程度だったが、たちまちコース上空を雨雲が覆い始め、3時40分にとうとう雨が降り出してしまった。ぽつぽつと落ちてきた雨粒は、一気に土砂降りへと変わり、当然のごとくプラクティスは中断。4時29分には正式にプラクティス中止の発表がなされた。
プラクティス中に降りだした雨は、短時間で止み、雨雲が去った後に再び太陽の光が降り注いだ。セーフティクルーの活躍と太陽のおかげで、路面は急速に乾いていき、キャンセルされていたUSACナショナル・スプリント・カー・シリーズ(ミジェット・カー)の予選も行われる。そして何事もなかったかのようにインディカーの予選が、7時30分の定刻に始まった。トップ・バッターは、プラクティスで総合トップとなったライアン・ハンターレイ。ここ2戦、決勝で調子を上げているだけに、予選での上位進出は間違いないかに見えた。ところが、なんと電気系とギアボックスのトラブルによって、走行しないままピットへ戻るはめに。結局予選中に修復の見込みは立たず、このまま予選出走を見送ることになってしまった。
1990年のヒロ松下から始まった日本人のインディカー挑戦で、初めて2位表彰台を獲得した武藤英紀。前戦アイオワと同じショート・オーバルのリッチモンドでも、その活躍が期待される。午前中のプラクティスではタイヤをカットしてしまい、走行できなくなるハプニングがあったものの、まずは9番手に付け、トップ10圏内をキープした。午後のプラクティスはあいにくの雨で、走行時間が短縮され、そのまま予選へ突入。18番目にアタックした武藤は、2周目に167.132マイルを記録するも、4ラップ目までその速さを保つことが出来ず、平均スピード166.518マイルで7位にはいった。残念ながら本人にとって不本意な予選となったが、アイオワと同じ7番グリッドから追い上げを見せて欲しい。
「僕の前にダニカが先に走り、リアが滑るということを聞いていたので、セッティングを変更しました。ですが、僕自身はバランスを変更しないほうが良かったと思います。4周目はちょっとアクセルを戻す量が多かったかもしれないです。今日はあまり走ることが出来なかったことを考えれば、悪くないとは思いますけど、もう少し前にいきたかったですね」