<US-RACING>
第7戦テキサスから一週間のインターバルを置き、6連戦に突入するインディカー・シリーズ。今年で2年目を迎えるここアイオワでは、武藤英紀の活躍が光っている。昨日のオープン・テストで4位につけた武藤は、今朝のプラクティスではさらに調子をあげ、わずか7周目に184.941マイルのベスト・スピードを記録し、なんとトップに躍り出た。武藤のスピードを上回るドライバーは現れず、セッションはそのまま終了。プラクティスとはいえ、武藤が初めてタイム・チャートの総合トップに名前を刻むことになった。否応なしにも期待が高まる予選だが、無情にも開始直後に雨が降り出し、まさかの中止。ポール・ポジションも狙えただけに、武藤自身も悔しい表情を見せた。グリッドはポイント・ランキングで決められることになり、武藤は7番手からスタートを切ることになる。今日の好調が明日も続くことを願いたい。
「予選を走りたかったですね。(ポール・ポジション)は狙えたと思いますよ。マシンのセット・アップは、何か設定を一つ変えると方向性がガラッと変わってしまい、良いときと悪いときの差が激しいですね。ロング・ランでは他のチームメイトも同じような症状なので、チーム全体で悩んでいるところです。予選のシミュレーションはかなりやっていましたから、手ごたえがありました。レースではトラフィックで前のマシンが周回遅れに引っかかれば、十分抜けると思います」
雨によってスターティング・グリッドは、ポイント・ランキング順とされ、今最も波に乗っているスコット・ディクソンがポール・ポジションを獲得。2位は今シーズンいまだ未勝利のエリオ・カストロネベスが入り、フロント・ローは昨年と同じ顔ぶれとなった。今日のプラクティスでは、ディクソンが9位、カストロネベスが7位と、ともに揮わなかったが、決勝ではどのようなレースを見せてくれるだろうか。テキサスに続いて2戦連続でポールとなったディクソンは、「今日はタフだったね。スピードがぜんぜん上らなかったんだ。こういう形でポールにはなりたくないよ」と、複雑な心境を語っていた。
ポール・ポジションとなったディクソンは、マシン・カラーを変更して今週末のレースに臨んでいる。チームメイトのウエルドンを含め、昨年から特別カラーで走行する機会が増えたチップ・ガナッシだが、今回ディクソンが纏うのは昨年も登場した禁煙促進錠剤の“コミット”。ブルーとホワイトをスカイブルーのグラデーションでつなぐ鮮やかなカラーリングは、いつも見慣れている赤を基調とするターゲット・カラーとは全く異なり、とても新鮮に見える。
武藤に続きプラクティス総合2位となったのは、ライアン・ブリスコー。初優勝を挙げたミルウォーキーとは性格が少し異なるものの、同じショート・オーバルのコースでは依然として好調をキープし、初挑戦となるアイオワでも速さを見せている。武藤と同じく、予選キャンセルの影響を被ったブリスコーだが、5番手スタートからの追い上げを誓った。「今週末はとても楽しく走れているよ。僕にとって初めてのアイオワ・スピードウェイを満喫しているんだ。ポールを獲れる自信があったから予選がなかったのは残念だけど、5番手からスタートできることは悪くないね。明日のレースが楽しみだよ」と自信をみせるブリスコー。テキサスで見せたアグレッシブな追い上げの再現となるか、カーナンバー6のペンスキーに注目だ。
プラクティス総合3位で終えたダン・ウエルドンは、セッション中にアクシデントに巻き込まれ、2戦連続でバック・アップ・カーで決勝を戦うことになった。午前のセッションも終盤に差し掛かったとき、目の前の走るブルーノ・ジュンケイラが突然スピンを喫して、避けるまもなくジュンケイラのマシンに激突してしまう。幸い両者とも無事にマシンを降り、大きな怪我はないようだ。ウエルドンは前戦のテキサスで、マシン・トラブルからマシンが転倒するほどの大クラッシュを経験し、今回はもらい事故。第4戦カンザスで1年ぶりの勝利を挙げたものの、今シーズンはいまひとつ調子に乗れていない。「ここ何週間はぜんぜんついていないよね」とウエルドンも意気消沈している。ちなみにクラッシュしたジュンケイラは、マシンのダメージが大きく、バック・アップ・カーもないために、今週末のレース出場を見合わせることになった。また、同じく午前のプラクティスでクラッシュしたマーティ・ロスも決勝の出場を取りやめ、明日は全24台で争われることになる。
昨年このアイオワでワンツー・フィニッシュを果たしたアンドレッティ・グリーン・レーシングは、今年も絶好調。昨日はダニカ・パトリックが堂々のトップ・スピードをマークし、今日はルーキーの武藤がトップ・スピードをマークした。マルコ・アンドレッティとトニー・カナーンもそれぞれトップ10圏内につけ、明日のレースでもAGRの活躍は間違いないだろう。ただ、武藤が言うようにロング・ランでのセッティングに不安があるため、混戦も予想される。いったい誰が勝利を手にするのか、今年のアイオワも最後まで目が離せなさそうだ。
今日最初のプラクティスがスタートした午前10時には、雲ひとつなかったアイオワ・スピードウェイ。時間とともに気温が上昇していくものの、それほど暑くはならず、絶好のコンディショのもと、各車が精力的に走行を重ねた。午後に入ってからは上空に雲が現れ始め、風も強くなっていく。それでも気温は上昇し、午後4時15分の時点で29度を記録した。この時点で予選が中止となるとは、全く予想していなかった。
インディ・ライツのレースが終了すると、強い風に運ばれた厚い雲が上空を覆い始めた。曇天のもと、午後5時35分にダン・ウエルドンから予選がスタート。2番目にアタックしたライアン・ブリスコーの走行が終了し、続いてエリオ・カストロネベスがアタックを行おうとしたとき、なんと雨が降り出した。これでセッションは中断され、雨が止むのを待ったが、雨脚はどんどん強まっていく。そして中断から38分後の6時18分に、オフィシャルは予選中止を発表することになった。ところが皮肉なことに、中止発表から間もない6時30分に雨が止み、コース上空には青空も広がりだす。再開されていれば、武藤のポール・ポジションという可能性もあっただけに、悔やまれる雨だった。