<US-RACING>
今年は雨が付きまとうインディ500。予定通り行われたポール・デイ翌日のセカンド・デイは、激しい雨によってキャンセルされ、毎年恒例のフロント・ローによるフォトセッションも月曜日に延期となってしまった。水曜日から再びプラクティスが行われることになっていたが、またしても雨でセッション開始が遅れ、結局走行できたのは最後の一時間。木曜日から天候が回復して走行時間を確保できたものの、ここまでの走りこみ不足にドライバーとチームは不安を募らせている。
前日から天候が回復し、金曜日は久しぶりに快晴となったインディアナポリス・モーター・スピードウェイ。プラクティスは午後12時から午後6時まで予定通り行われた。朝のうち15度に冷え込んだ気温も、午後には21度まで上昇。日陰に入ると肌寒さが残るものの、一日を通して過ごしやすい天候だった。ポール・デイに予選を通過した11台は、決勝用のセット・アップに終始し、トップ11に入れなかったドライバーは、明日の予選に照準を合わせて調整をしていた今日のプラクティス。天候が回復した一方で、今日は風が強く、セッション終了までに、EJ.ヴィソ、ウィル・パワー、ライアン・ブリスコーという3人のドライバーが、バランスを崩してウォールの餌食となっていた。
トップ・スピードをマークしたのは、ポール・ウイナーのスコット・ディクソン。インディ500開幕から絶好調をキープするニュージーランド人は、80周を走りこみ、223.713マイルを記録した。2位のエリオ・カストロネベスには0.3マイル差をつけ、初のインディ500制覇に向けてちゃくちゃくとマシンを仕上げている。「マシンは大部分が仕上がっているね。僕たちの計画通り実行できているんだ。今はマシンのバランスを適正に保ちながら、メカニカル・グリップを上げることに集中しているよ」とディクソン。このままインディ500制覇まで突き進みたい。
予選ではチームメイトのライアン・ブリスコーに遅れをとり、4位となったエリオ・カストロネベス。先週のプラクティスはなかなかスピードを上げられず、トップ5入りを逃す場面もあったが、ベテランらしく第2週目にきっちりスピードを上げてきた。今日のプラクティスでは2001年&2002年インディ500覇者の意地を見せ、チームメイトを上回る2位を獲得。決勝に向けて徐々に調子が上向いてきている。「今日は良い一日だったよ。ロング・ランを行い、レースに向けたセット・アップを続けていたんだけど、今までよりは良い感じだね。明日は燃費を調整したいと思うから、レースへの準備を整えることが出来そうだよ」とカストロネベス。スパイダーマン復活に向けて、セットアップが続く。
予選3位を獲得しフロント・ローを獲得したライアン・ブリスコー。ここインディ500では見違えるようなパフォーマンスを見せていたにも関わらず、今日はなんとターン1で派手なクラッシュを演じてしまう。幸いブリスコー本人は無事だったが、マシンは無残な姿に。予選を終えてリスクを冒す必要が無かったなかでのクラッシュに、チームは相当肝を冷やしたはずだ。ただブリスコーがドライブしていたマシンがスペアカーだったことは、不幸中の幸いだったかもしれない。「ちょっとタイヤが古すぎたかもしれないね。ターン1でいきなりバランスを失ったんだ。スピードを上げていく途中だったし、全開で走っていたわけじゃないから、さすがに驚いたよ。マルコの後ろで乱気流を受けていたことも、コントロールを失った原因かもね」と分析するブリスコー。クラッシャーの汚名を返上して、決勝では良い結果を残したいところだ。
ポール・デイを9位で通過した武藤英紀は、今週から決勝を見据えたセット・アップに終始している。昨日は8位、一昨日は4位と調子を維持していたが、今日は一転してスピードが上らない。アンドレッティ・グリーン・レーシング全体が相対的にスピード・アップに苦しんでいたようで、今日は220.878マイルの18位に終わっている。「今日走り込めたことは良かったですが、問題点を解消するのにとても苦労しています。マシンのどこが間違っているのか掴みきれていないので、かなりストレスが溜まりました。今日得たデータを全部見直して、問題解決の方法を探したいと思いますから、明日は今日より良くなるでしょうね」と武藤。決勝に向け、チーム全体のスピード・アップが課題のようだ。
5月14日にインディ500参戦を表明したロジャー安川は、予選通過に向け全力を尽くしている。今年はチャンプ・カー勢が加わったことで、例年にましてフル・グリッド33台へ入ることが厳しくなるが、限られた走行時間の中で予選突破への勝機を見出しつつあるようだ。「サスペンションやショックを変えたことでだいぶ良くなり、セッティングの方向性が見えてきたかなと思ったんですけど、根本的なアンダーステアが解消されず、不思議なくらい何をやっても直らないです。走り始めはターンの進入でルーズなっていたんですが、その部分を直せたので、あとはどうやってアンダーステアを解消するかが課題ですね」と話す安川。明日、明後日の予選を戦い抜き、日本人最多となる6度目のインディ500決勝出場を目指す。
1996年インディ500ウイナーのバディ・ラジアーが、今年もエントリーすることになった。フル・シーズンのドライブは2006年以来遠ざかっているラジアーだが、この伝統のレースだけは欠かさず、昨年も出場している。今年で41歳となるラジアーは、栄光のミルクを一度手にしてもなお、レースへの情熱が冷めないようだ。「まずこの機会を与えてくれた、ロン・ヘメルガンにお礼を言いたいね。まだスピードが全然無いんだけど、ポジティブな一日だった。おそらく明日は22番手から33番手の間で戦えると思うが、目指すからには明日獲得できる最上位の12位をゲットしたい」と意気込むラジアー。今日のプラクティスは予選通過圏外となる35位で終えているため、更なるスピードアップが必要となる。
昨年レイホール・レターマンを解雇されたジェフ・シモンズが、A.J.フォイト・レーシングから復活を果たした。今年はステップ・ダウンを強いられ、インディ・ライツ・シリーズを戦っているシモンズ。セント・ピーターズバーグでは一時トップを快走するなど、光る走りを見せていた。再びめぐってきたチャンスを活かし、フル参戦のシート獲得に弾みをつけたいところだろう。ちなみにシモンズのマシンは、チームメイトとなるダレン・マニングと同じABCサプライのカラーリングを纏っている。一見、ヘルメットやカーナンバー意外に違いは見えられないが、リア・ウイング翼端版のカラーリングが異なっているので、レースを観る際はマニングとの見分けに役立てて欲しい。
先週のファスト・フライデーに大クラッシュしたアレックス・ロイド。首に痛みを訴えていたが、ドライブできるまでに回復し、再びコックピットに収まっている。今週から日本でもお馴染み“Wii Fit”のカラーリングで走ることになり、ロイドの認知度が一気に向上するかもしれない。今日のプラクティスでは先週のクラッシュをものともしない走りを披露し、221.538マイルの15位につけ、初参戦ながら決勝進出は間違いなさそうだ。