<US-RACING>
心配された雨が降ることなく、第2戦セント・ピーターズバーグの予選は快晴の下で行われた。ストリート&ロード・コースで導入される“ノック・アウト”方式の予選を制したのは、アンドレッティ・グリーン・レーシングのトニー・カナーン。全てを注いだという渾身のラップは、1分2秒5322のタイムを記録し、2位のウィル・パワーを0.0774秒振り切った。「タフだったよ。アタックに全てを注がなくてはならないから、今やインディカー・シリーズはとてもコンペティティブになったと思うね。予選ラップを走り終えたときは、全てやりつくしたという感じだった」と振り返るカナーン。アクシデントに巻き込まれて失った開幕戦の勝利を、ここセント・ピーターズバーグで引き寄せることが出来るだろうか。
今年からストリート・コースとロード・コースの予選方式が変更された。昨年までは全車が1台ずつのタイムアタックを行い、上位6名が“ファイアストン・ファスト・シックス”という10分間のタイム・トライアルを行う独特の予選方法をとっていたが、今年から“セグメント”と呼ばれる短いセッションを重ね、順位を決めていくノック・アウト方式となる。20分間の第1セグメントは、出場する26台のマシンをくじ引きで決めた2つのグループに分け、それぞれのグループから上位6台を選出。第1セグメントを勝ち残った12台のマシンが、15分間の第2セグメントを戦い、さらに絞り込まれた6台で昨年同様、10分間の“ファイアストン・ファスト・シックス”を戦う。新方式の予選は第1セグメントからコンマ1秒を争う大接戦となり、カナーンが「アタックに全てを注がなくてはいけなかった」と語るように、どのドライバーも壁ギリギリまで寄せるフル・アタックを見せていた。時には勢いあまってオーバーランや、タイヤ・バリアに突っ込むことがあったが、訪れた観客はインディカー・ドライバーのスリリングな走りに酔いしれたことだろう。
チャンプ・カー勢の躍進は予選でも続き、なんとKVレーシングのウィル・パワーがフロント・ローを獲得する。第2セグメントでは今日のポール・タイムを大幅に上回る1分2秒1355を記録しただけに、ポール・ポジションの期待もかかったが、最終予選でタイムが縮まらず、僅差でポール・ポジションを逃した。しかし、パワーには悔しさよりも、ダラーラ・シャシーを手にしてからの限られた時間でこのポジションを獲得できたことが、何より嬉しいようだ。「“ファイアストン・ファスト・シックス”に入ることが目標だったので、達成できたよ。第2セグメントのタイムを考えると、ポール・ポジションを獲得できなかったのが、残念だね。もちろんフロント・ローに並べたのは嬉しいし、チームにとって良いことだ。でも、もっとも重要なことは、チームの頑張りに応えられたことだね。彼らは先月からほんとうに一生懸命働いていたし、家族と会う時間も犠牲にしてくれていたんだ。彼らのためにこの結果を出せて嬉しい」と喜ぶパワー。これまでのところ、チャンプ・カー勢がインディカー勢とほぼ互角に戦えているため、決勝では白熱したレースが期待できる。
予選3位にはニューマン/ハース/ラニガン・レーシングのジャスティン・ウイルソンが続き、チャンプ・カー勢がトップ3に2人も入る快進撃を見せた。昨日行われた午前のプラクティスでトップ・タイムを出し、好調をキープするウイルソン。“ファイアストン・ファスト・シックス”まで勝ち残ると、インディカー・レギュラーのペンスキーを抑える好走を見せ、1分2秒6426を記録した。「今週末は、最初から良い調子が続いているね。“ファイアストン・ファスト・シックス”に進出できたのは嬉しいことだし、予選3位には満足しているよ。あと0.1秒くらい速ければ、ポール・ポジションを獲得できたけど、これがレースというものさ。明日のレースでも良い結果を残せるようにがんばりたい」と意気込むウイルソン。チャンプ・カー勢がどこまでインディカー勢を追い込めるか注目だ。
昨日のプラクティスで総合3位に入り活躍が期待された武藤英紀は、第1セグメントでノック・アウトされてしまい、14番手からスタートすることになった。マシンのバランスは非常に良いと語る武藤は、その言葉通り、第1セグメントの序盤でトニー・カナーンとトップ争いを演じる。しかし、セッション終了間際にライバルたちがペースを上げる一方で、武藤はクリアラップが取れず、思うようにタイムをあげられない。なんとか12周目に1分3秒2757の自己ベストを記録するが、第2セグメントにはわずか0.0834秒届かなかった。
「マシンのバランスは非常に良くて、昨日のプラクティスや今日の午前中の走り出しも良かったです。予選中のバランスも良かったですが、新品タイヤに履き替えるタイミングが遅すぎたと感じています。チェッカー前に遅い車に引っかかってしまい、アクセルを戻すことも出来ず、つかえながらの1周になってしまいました。チームの指示に従いましたけど、自分でピットに出入りするタイミングを判断しても良かったのではないかと思っています。決して7番手のマシンではなかったし、自分も7番手のスピードではなかったと思いますが、うまくまとめられませんでした。明日はあせらず確実にポジションを上げられればと思います」
雨の予報がほんとうにあったのかと思うほど、きれいな青空が広がったセント・ピーターズバーグ。気温は昨日より2度高い28度に達し、相変わらず高い湿度のおかげでじっとしていても汗が出るほどだった。時折風が吹くこともあるものの、暑さのせいで風は生暖かい。今日の暑さには、クーラーが効いているメディアセンターぐらいしか逃げ場がなかった。明日は朝から雨の予報があるが、今日のように外れることを祈る。