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フォーミュラ・ニッポンに参戦したトニー・カナーンのコメント

<US-RACING>

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11月17日と18日の二日間に渡って開催されたフォーミュラ・ニッポン最終戦に参戦したトニー・カナーン。初めて乗るフォーミュラ・ニッポンのマシンに、初めて走る鈴鹿サーキットという厳しい条件での参戦となったが、カナーンはいつもどおり笑顔で冗談を交えて記者会見に応じていた。そのカナーンに今回参戦を決めた理由や、予選とレースの感想、来シーズンからチームメイトとなる武藤英紀選手について聞いてみた。
■11月17日予選後記者会見
Q:今日の予選はどうでしたか?
トニー・カナーン(以下TK):「ちょっと大変だったね。午後の第一スティントは良かったけど、その後、セッションの残り5分まで待ってから第二スティントを走ったのは失敗だった。完全に時間切れだったんだ。順調にいけば、おそらく12位くらいには入れたはずだね。でも、僕はスタートがうまいドライバーとして知られていて、インディカーでは4、5台かわすのが珍しくないから、明日も6つポジションを上げたら、すぐに12番手になれるよ。今週末はここまで来るのにかなり大変だったし、色々なことを経験することができた。明日は迷惑をかけてしまうかも知れないドライバーの皆さんや、フォーミュラ・ニッポンの皆さんには、この機会を与えてもらってほんとうに感謝している。最高に楽しい週末だし、ファンもジャーナリストもすばらしいよ。どんどん走りこめば、もっとマシンに慣れると思うね」
Q:最後のスティントでタイムが上がらなかった原因は何でしょうか?
TK:「特に問題があったというわけじゃないよ。ただ、残り5分まで待ったのが失敗だったんだ。このコースは1周回るのに2分近くかかってしまうので、ウォーム・アップ・ラップを終わらせた後、アタックできるチャンスは1周しかなかった。でも、そのラップで遅いマシンに引っかかってしまった。落ち着いてもう1周走ろうと思ったときには、すでにチェッカー・フラッグが振られていたよ」
Q:今回、参戦を決めた理由を聞かせてください。
TK:「11年間僕のキャリアを支えてくれたホンダのためだね。ホンダとJRPが僕をこのレースに招待してくれたときは、ほんとうに嬉しかったよ。僕が今年のインディ・ジャパンのウィナーということで、インディ・ジャパンやホンダのPRにもなるし、僕にとっても良い経験となると思ったから、参戦を決めたんだ。すごく大変だとはわかっていたけど決意したよ。事前にテストする予定だったが、僕の息子が生まれたので、できるだけ家にいて奥さんを手伝いたかった。テストしないでレースに出れば、苦労することはわかっていたけどね。それでも、ゲスト・ドライバーとして日本最高峰のシリーズで、最速の日本人ドライバーたちと一緒に走れることを、とても誇りに思っているよ。また、日本のファンの皆さんにも会いたかった。日本は地元ブラジルの次にファンが多い国だからね。インディカーのレースをたくさんやっているアメリカよりもファンが多いと思う。今回の参戦は僕の実力を証明するためではないので、ただこの雰囲気を楽しみたいね。サポートしてくれている中嶋さんのチームは素晴しい。残念ながらマシンに乗る時間が短すぎて良いタイムが出なかったけど、まだ終わりじゃないよ」
Q:どうしてカー・ナンバーを27にしたのでしょうか?本来インディカーではチームメイトのダリオ・フランキッティ選手がつけている番号ですよね?
TK「まず、ダリオの番号なのは確かだね。でも来年からは英紀さんがこの番号をつける。だから英紀さんにプレッシャーをかける意味で、今回は27を選んだんだ(笑)」
Q:先ほどスタートが上手いと言っていましたが、インディカーではローリング・スタートですよね。明日のレースはスタンディング・スタートなので、あまり経験がないのではないかと思いますけど、自信はありますか?
TK:「僕だけ間違ってローリング・スタートをして、みんなよりも先にスタートしちゃうかもね(笑)。スタンディング・スタートは12年ぶりになるよ。木曜日に2回練習したが、明日はどうなるかわからないね」
Q:フル・タンクでの走行は試しましたか?
TK:「昨日はフル・タンク(70kg)に近い60kgで走ってみたけど、体力的にきつかったね。どうして体が小さい日本人ドライバーが簡単に乗れているのに、体の大きい僕が苦しんでいるのかわからないんだ。きっと日本人ドライバーが食べているお寿司に、何か特別なものが入っているんじゃないかと思ったくらいだよ。確かにフル・タンク状態でのハンドルはかなり重いけど、明日はがんばってみるつもりさ」
Q:来シーズンからチームメイトになる英紀武藤選手については、どのように思いますか?彼に何かアドバイスはありますか?
TK:「英紀さんにアドバイスがあるとしたら、速く走ってレースに勝つということだけだね(笑)。今週末は4日間とも英紀さんと一緒に過ごした。アメリカでは何回か見かけたことはあるけど、実際に話したことはなかったんだ。皆さんは知っていると思うが、アンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)はドライバーどうしがとても親密な関係にあるので、今週末は僕と英紀さんとの関係を深めるにはとても良い機会だったよ。彼には才能があると思うし、日本のファンからの期待もあるようだけど、彼にアドバイスしたいのは、そのプレッシャーに影響されてはいけないということだね。ダニカやマルコもみんなから優勝を期待されているし、英紀さんだって同じように優勝を期待されている。僕はもうチームの古株だから、何も期待されていないんだよ(笑)。英紀さんには高いポテンシャルがあるから、経験のある僕から学べることがあると思う。ちなみに今週末、英紀さんが僕のドライバー・コーチになってくれているんだ。だから18番手からスタートすることになったのは英紀さんのせいだよね(笑)。それは冗談として、英紀さんは鈴鹿のコースを紹介してくれたし、彼とは徐々に関係を築いていけている。もう2つ決めたことがあるんだけど、英紀さんがインディ・ジャパンで優勝して、僕がインディ500で優勝するということだよ」
Q:今週末、ステアリングが重いということを5、6回ほど聞きました。決勝日は冬型の気圧配置になって今日より気温が下がるので、更にステアリングが重くなると思いますが、51周を走りきれるでしょうか?
TK:「ステアリングが重いというのは確かだけど、僕は大丈夫。ステアリングが重いことに対して文句を言っているわけじゃなくて、ただみんなを心配させたいだけなんだ(笑)体力的には問題ないよ」
Q:インディカーではスポッターがいて、会話をしながらレース中に作戦を変えていくという印象があります。今回のレースはそういった戦い方とは違うと思うんですが、何か不安などはありますか?
TK:「フォーミュラ・ニッポンとはちょっと違うけれど、僕は数年間ヨーロッパのレースを経験しているので、問題なかったね。インディでもレース中に作戦のことをあまり話さないんだ。オーバル・コースにはスポッターがいるけども、彼らは『イン側に行け』とか『アウト側に行け』とかを教えてくれるだけだよ。ロード・コースではそういったことは必要ない。明日のレースでは英紀さんが無線で話してくれるから、僕の文句をチームに通訳してくれるはずだよ(笑)。でも話す内容は、たぶんいつピット・インをすれば良いかということだけだね。インディカーではセッティングの変更などについて話をするけど、今回はそういったこともないと思う」
Q:今週末は、この地域に暮らしているブラジル出身のファンが数百人も応援しに来ているのですが、あなたにとって大きなサポートになるのではないかと思います。彼らにメッセージはありますか?
TK「木曜日に大勢のブラジル人の子供たちと会うことになって、450通もの応援の手紙を受け取ったよ。レースにも来てくれてほんとうに感謝しているんだ。明日は18番手からのスタートだから、たくさんの応援が必要だよ。昨日たまたまテレビを見ていたら、ワールド・カップ・バレーボールの日本対ブラジル戦をやっていて、ブラジルが勝ったから、明日はバレーと同じような展開になると良いね。ちなみに僕のヘルメットの片側には、ブラジルの国旗が貼ってあって、もう片側に日本の国旗があるんだ。僕は日本人ではないし、特にこのでかい鼻は日本人ぽくないけど、日本人にも大勢のファンがいるよ」
Q:カナーン選手はアイルトン・セナ選手にあこがれていると聞きました。先日、セナ選手がよく行っていたイタリアン・レストランに行き、セナ選手が座っていた席に座って子供みたいに喜んでいたという話を聞きましたが、ほんとうですか?
TK:「レストランに行ったのは確かだけど、大人数で行ったから実際には座っていないね。でもセナの速さを少しでももらえたらと思って、彼の座っていた椅子を触りまくったよ。セナは僕のヒーローなんだ。彼は僕のキャリアもサポートしてくれたし、彼の牧場で一緒にゴーカートをやったこともあるんだよ。またこのレースに参戦を決めた理由に戻ってしまうけど、なぜ鈴鹿で走ろうと思ったかというと、ここがセナの第二のホーム・コースだったからさ。いつもセナは僕に『鈴鹿は絶対に走ったほうが良いよ』と言っていた。今まではテレビ・ゲームでしか鈴鹿を走ることができなかったけど、ようやく走ることができたよ。そういえば、セナも日本の国旗とブラジルの国旗をヘルメットに貼っていたよね」
Q:ホンダ・ファンへのメッセージをお願いします。
TK:「ホンダ・ファンへのメッセージは、『明日はホンダがチャンピオンシップを獲得するぞ!!』ということだね」
Q:アメリカではホンダ車に乗っているのでしょうか?もし乗っているのであれば、どんな車種に乗っているのですか?
TK:「ホンダ車は何台か持っていて、毎日乗っているのはアキュラMDXだね。アキュラTLもあるし、赤ちゃんのためにオデッセイも買ったんだ。それからシビックもあって、これにはインディカーのホンダ・エンジンを載せたいと思っているんだけど、和田さん(元HPD社長)がなかなかエンジンを譲ってくれないんだよ(笑)」

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■11月18日決勝後記者会見
Q:フォーミュラ・ニッポンでの初レースの感想を教えてください。
TK:「今週末は初日から皆さんに温かく迎えてもらった。ホンダの皆さんにほんとうに感謝しているし、鈴鹿に大勢のブラジル人が応援しに来てくれたことはほんとうに感動している。和田さんともさっき話していたけど、18番手からスタートするのにも関わらず、こんなに注目されるなんてびっくりしたよ。すごく楽しかったが、厳しいレースだったね。最後にオーバーステアの問題が出てしまっても、何とか6位に入れた。18番手スタートだったから、上位フィニッシュは逃してしまったよ。来年も機会があれば参戦したいと思うね」
Q:スタート直前はどんな気持ちだったのでしょうか?
TK:「最初からいいレースができるとは思っていたよ。一番集中しなければいけなかったのはスタンディング・スタートだね。なにしろ12年ぶりだったんだ。レース前にあれだけ注目されたのは感動したけど、ヘルメットを被ればいつもどおりレースに集中することができた。スタートではエンストしそうになったが何とかスタートして、高木さんとバトルになった。理想のスタートではなかったけど、良かったと思うね」
Q:あと10周あれば、3位まであがることができたと思いますか?
TK:「今日はちょっと無理だったと思うよ」
Q:IRL とフォーミュラ・ニッポンのマシンやドライバーとの違いは何でしょうか?
TK:「マシンに関しては、今週末7回くらい言ったと思うけど、フォーミュラ・ニッポンのステアリングはとにかく重いね。ドライバーに関しては、日本人ドライバーはびっくりするくらいレベルが高いし、特に小暮さんはすごく才能があると思う。近い将来、小暮さんと英紀さんが日本人ドライバーとして世界のトップに立つだろうね。今は琢磨さんがF1に乗っているが、小暮さんにもF1で走れるチャンスがあると良いと思うよ。レースに関しては、インディカーとかなり違うところがあるけど、基本的にレースという点では変わりないし、世界のどこへ行ってもレースは大変さ」
Q:カナーン選手はF1に乗ってみたいという気持ちはあるのでしょうか?
TK:「もう年齢的に遅いよね。今はアメリカのレースとホンダに集中しているから、これをずっと続けていきたいと思う。ホンダは僕のキャリアをずっと支えてくれたし、すでにホンダには良いF1ドライバーがいっぱいいるので、僕はホンダと一緒にアメリカで活動を続けるつもりだよ。でも、誰か招待してくれればいつでも乗るけどね(笑)」
Q:若いインディカー・ドライバーにも、フォーミュラ・ニッポンへ出るように勧めてください。
TK:「日本には良いドライバーがたくさんいるから、みんな怖がっていると思うよ(笑)」
Q:来年からチームメイトとなる武藤選手には、どのような印象を持ちましたか?
TK:「英紀さんはとても高いポテンシャルを持っているドライバーだよ。今がドライバーとして成長する最高のチャンスだと思う。AGRはチームワークを大切にしているチームなので、僕はできるだけ力を尽くして彼を支えていくつもりだよ。彼はAGRに入るために一生懸命頑張ってきたから、その努力に見合ったチームに入ったのさ。来年は学ぶことが非常に多いと思うので、とりあえずルーキーの英紀さんにあまりプレッシャーをかけない方が良いだろうね」
Q:今日のレースで何が一番大変だったのでしょうか?
TK:「やはりスタートが一番大変だった。スタンディング・スタートには慣れていないからね」
Q:木曜日に多くのドライバーがピットロード出口でスタンディング・スタートの練習をしていましたが、カナーン選手もやっていたのでしょうか?
TK:「僕はあまりやらなかったんだ。クラッチに大きなストレスがかかってしまうからやり過ぎない方が良いと、中嶋さんに言われていたからね。中嶋さんのマシンに乗っているわけだし、彼が一番マシンのことを知っていると思ったからあまりやらなかったよ」
Q:レース中にずっと1分46秒台で走っていたのですが、それに関してはどう思いますか?
TK:「レース・ペースとしては悪くなかったけど、もっと速く走れただろうね。最後は前を走っていたマシンが速くなったからついていけなかった。今回はシーズン最終戦ということもあって、フォーミュラ・ニッポンのドライバー全員がマシンになれている状態だし、僕は初めて乗るマシンだったからかなり厳しかったね。このコースでマシンに慣れるのはかなり大変だと思うよ。でも結果は満足している。僕は一応フォーミュラ・ニッポンのルーキーだから、6位というのは悪くないんじゃないかな」
Q:レース終盤には荒選手を追いかけていましたね?
TK:「あれは楽しかったね。結局パスする速さはなかったけど、彼を攻めることができて嬉しかったよ」
Q:カナーン選手のおかげで、いつもと比べて大勢のファンがフォーミュラ・ニッポンのレースに来たのですが、どう思いましたか?
TK:「感動したよ。スタート前にたくさんのブラジル国旗を見たときは泣きそうになったね。僕はこれまで10回しか日本で走ったことがないけど、日本に来るたびにこんな大勢のファンが応援しに来てくれるなんて信じられない。90年代に日本でレースをするということを始めたアイルトン・セナに感謝しているよ。初めて鈴鹿に来たけど、なぜ彼があんなに日本が大好きだったかがやっと分かったね」
Q:もてぎのインディ・ジャパンに向けて、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
TK:「絶対に面白レースを見せるよ。僕か英紀さんのどちらかが優勝するはずさ」