<SUPER AGURI PANTHER RACING>
<2007 IRLインディカー・シリーズ第17戦ピーク・アンチフリーズ・インディ300>
【日 程】9月8日〜9月9日
【開催地】イリノイ州ジョリエット
【コース】シカゴランド・スピードウェイ
【距 離】1.5マイル(2.414km)×200周=300マイル(482.803km)
■■■9月9日決勝■■■
【天 候】快晴
【気 温】24〜26℃
【時 間】15時00分〜(日本時間10日5時00分〜)
<激しいバトルが予想された最終戦>
2007年のIRLインディカー・シリーズがついに最終戦である第17戦を迎えた。スーパーアグリ・パンサー・レーシングは、シカゴランドでの300マイルレースにはレギュラーの松浦孝亮に加え、武藤英紀も初めて参戦となった。
最終戦のバトルは常に激しいものとなる。今年もタイトル争いは僅差のままであった上、タイトル争いに加わっていないドライバーたちの中にはシーズン最後のレースで勝利を重ねようと考える者が当然おり、その他にもキャリア初勝利を目指す者、シリーズランキングをひとつでも上位へと押し上げようと考えるドライバーがいるからだ。
<仕上がり上々のマシンを手にした武藤>
土曜日の予選で13番グリッドを獲得した武藤は、インディカーはデビューレースとあってスタートでは大きく順位を落とした。しかし、決勝用に施されていたマシンセッティングは極めて良好で、トラフィックの中ではアンダーステア傾向が出ていたものの、スタートからゴールまでその安定感が変化することがなかった。武藤は周回を重ねる中で着実にポジションアップ。一端は16番手まで落ちていた順位を、30周を過ぎたところで予選順位と同じ13番手へと戻し、52周目にはトップ10へと食い込んで見せた。
フルコースコーションのタイミングが悪く、200周のレースが130周を過ぎたところで武藤はトップから1周のラップダウンに陥った。しかし、そこからもリードラップへの復活を目指した戦いと、激しい8位争いがゴールまで続いたのだった。
<武藤、ファステストラップも記録して8位フィニッシュ>
武藤のラップタイムはトップ集団とほぼ互角で、中団グループの中では際立つ走りを見せ続けた。前車との間隔が広い状況でも、毎ラップを100分の1秒でも縮めようと走っていた。173周目に武藤はファステストラップも記録した。
レースも終盤土壇場を迎えたところで、トップグループの中から2台が燃費の良さとレース展開を味方につけた。さらに1周抜け出したため、武藤は2周のラップダウンとなった。しかし、初めてのインディカー・レースを戦いながら着々とドラフティングテクニックを学び取り、最後のリスタートでは鋭い走りを披露。ゴールまで2周でグリーンフラッグが振られるや、すぐさま1台をパスし、最終ラップにはもう1台のオーバーテイクし、8位でフィニッシュしたのだった。
<好スタートを決めた松浦孝亮>
予選は16位だった松浦孝亮だったが、定評のあるスタートで実力を発揮、ふたつ順位を上げる14番手で1ラップ目を終えた。ところが、マシンセッティングはアンダーステアを呈するものとなっており、タービュランスの中でポジションアップをさらに進めることはできなかった。
アンダーステアと格闘し続ける松浦は、ピットストップまで粘って何とかポジションを守り、セッティング変更を施してスピードアップを果たそうと考えていた。しかし、逆にウエイトジャッカーのトラブルが襲いかかった。
<松浦に重ねて出てしまったマシントラブル>
それでも粘り強い走りを続ける松浦をピットクルーがアシスト。1回目のピットストップを終えた時点で松浦は13番手に浮上していた。ハンドリングが向上すれば上位へと進出して行くこともできるポジションだ。しかし、レース序盤にしてトラブルを出したウエイトジャッカーは、依然として作動したりしなかったりと不安定な状態で、松浦は思うようにラップタイムを削り取ることができなかった。
そこへさらなるトラブルが重なって発生した。松浦がコクピット内で何かの焦げる臭いを感じて無線で伝えると、チームは危険を回避し、修理を行うためにピットインを命じた。マシンをチェックすると、電気系統のトラブルでバッテリーへの充電がされていないことが判明。電装パーツや配線のチェック、さらにはバッテリー交換が行われた。しかし、松浦がピットからコースへと戻ると、15周ほどでバッテリーは再び電圧を失ったため、チームは走り続けることが不可能と判断し、松浦は最終戦でリタイアを喫することとなった。
■■■コメント■■■
<武藤英紀>
「自己アピールできたデビュー戦だった。このチャンスに感謝したい」
「最初のスタートでは慎重になり過ぎてしまって、順位をかなり落としてしまいました。しかし、あの時の自分は焦ってもしょうがないと考えていました。マシンのハンドリングは少しのアンダーステアはありましたが、とても良いものになっていました。
初めてのピットストップでもミスがあって、タイムをロスしましたが、2回目からは問題なく行うことができました。ピットストップは大きなミスをすれば1周とかのロスに繋がってしまうので、小さなロスはあっても、確実に行いたいと考えていました。この部分は経験が全然足りていない部分ですね。
リスタートでまた慎重になり過ぎて……というシーンもあり、レース全体を見ればミスが多かったので、100パーセント満足することはできません。しかし、目標としていたトップ10入りができましたし、レースのファステストラップを記録できたことは大きな自信になりました。
周回遅れになったあとは、トップグループの中で戦うこともできました。彼らがどういう走りをして、どういうライン取りをしているのかを見て勉強し、そのあとには自分なりの対応をして同じペースで走ることもできました。初めてのインディカー・レースは走っていて本当に楽しかったし、手応えを感じることもできました。マシンのハンドリングはレースを通して非常に良く、ウイングやタイヤ空気圧も変更することなくゴールまで走り続けました。今日のレースはデビュー戦としては内容も結果も良いもので、自分をアピールするものにできたのではないかと思います。
今シーズンはインディ・プロ・シリーズに出場するチャンスを頂き、ロードコースとオーバルでそれぞれ1回ずつ勝つことができました。そして、最後にはインディカー・シリーズを走るチャンスも貰うことができ、そのデビューレースで8位でフィニッシュができました。最高の形でシーズンを終えることができ、感謝しています」
<松浦孝亮>
「今日も全力で戦ったが、電気系トラブルで残念ながらリタイアを決意」
「スタートではまだみんなのタイヤが温まっていない中、自分だけが頑張って順位を上げることができました。しかし、マシンのハンドリングはアンダーステアが出ていて、パックの中でオーバーテイクを行うのは難しくなっていました。スタートしてすぐにウエイトジャッカーが壊れて、それが動いたり動かなかったりしていたこともレースを戦いにくくしていました。
レースが半ばを迎える辺りで周回遅れになったのですが、その少し前にコクピットに何かが焦げる臭いがしてきたので、ピットに入ってチェックを行うことになりました。トラブルはオルタネーターにあったのか、バッテリー充電がされなくなっていて、ピットでエンジンがストップしました。そこでバッテリーを交換して走り出したのですが、15周ぐらいでまたバッテリー電圧が完全になくなってしまったため、リタイアをするしかありませんでした。
今年でインディカー・シリーズは4年目で、これまでも毎年、今年が最後だと思って全力で走って来ました。今日も全力を尽くした戦いでした。そして、チームも持っている力をフルに発揮してくれていました。今シーズンはそれが自分たちの求めているスピードに繋がっていないレースがありましたが、名門と呼ばれるチームにもそういうシーズンはあり、今年がそうだったのかな、と思います。今年も応援を続けてくれているファンのみなさん、そして、サポートを続けて頂いているスポンサーの方々、今年もありがとうございました」
<ロン・キャット:チームマネージャー>
「コウスケの1年間の働きはチームのレベルアップに貢献。ヒデキは今日の1戦で彼の能力を見事に発揮した」
「見事なスタートでコウスケは1周目にふたつポジションアップを果たした。しかし、その後はアンダーステアが出ており、順位を下げざるを得なかった。早目のピットストップを行ってセッティング変更をすることも検討したが、それで周回遅れに陥ることは避けたかったので、できる限りトップグループとの差を小さなものとするようコウスケに全力を尽くしてもらい、フルコースコーションもしくは1回目のピットタイミングが訪れるのを待った。
コウスケはコクピット内でスタビライザーを操作し、ハンドリングのロスをできるだけ小さなものとして走り続けた。今回のレースで我々が目指す結果を残せなかったのは、電気系にトラブルが発生してしまったためだった。何かがこげる臭いがする、とコウスケがむせびながらで知らせてきたため、我々はピットでトラブルを解消することとした。カウルとサイドポッドを外して配線類などをチェックしても、溶けたりショートをしていると見られる場所はなかった。しかし、電圧が完全にダウンしていたため、バッテリーを交換してコウスケをコースへと送り返した。
現時点でトラブルの原因は不明だが、オルタネーターが壊れていたのか、どこか見えない部分に配線のショートがあり、バッテリーの充電がなされなくなっていたようだ。15周ほどを走ったところでバッテリーが再びダウンし、我々はリタイアを余儀なくされた。
最終戦は是非とも上位でのフィニッシュをしたいと考えていただけに、非常に残念な結果である。
今シーズンからコウスケとともに戦ったが、今年は本当に多くの不運に見舞われた。シーズン序盤のリタイアは、すべてコウスケにも我々チームにも責任のない、第三者のミスによるもので、その後に幾つかの良いレースを戦うことができたものの、シーズンを通して高いパフォーマンスを発揮することはできなかった。
しかし、コウスケは素晴らしいドライバーで、常に全力を出し切って戦っていた。我々は昨年の1カーから2カーへと拡大し、コウスケの力もあってチーム全体をレベルアップすることができたと感じている。
ヒデキはスタートでこそポジションを落としたが、冷静に初めてのレースを戦い抜いた。彼は初めてのレースとは思えない素晴らしいパフォーマンスを見せ、8位という好結果とともにフィニッシュしてくれた。
マシンはとても安定しており、トップグループと同等のペースを保つことができていた。レース終盤に彼がトップグループの中で見せた走りはエキサイティングだった。ヒデキは彼らの中の何人かをパスしてみせたのだ。ヒデキは今日、彼の持つ能力を見事なまでに発揮していた」
■■■決勝結果■■■
1.5マイル(2.414km)×200周=300マイル 出走22台
順位 No. ドライバー 周回数 タイム差
1位 27 D.フランキッティ 200 1:44’53.7950
2位 9 S.ディクソン 200 +1.8439
3位 6 S.ホーニッシュJr. 199 1周遅れ
4位 3 H.カストロネベス 199 1周遅れ
5位 8 S.シャープ 199 1周遅れ
8位 60 武藤英紀 198 2周遅れ
17位 55 松浦孝亮 156 電気系
※全車、シャシーはダラーラ、エンジンはHonda
タイヤはファイアストン
■■■ポイントスタンディング■■■
順位 No. ドライバー ポイント ビハインド
1位 27 D.フランキッティ 637 リーダー
2位 9 S.ディクソン 624 -13
3位 11 T.カナーン 576 -61
4位 10 D.ウェルドン 466 -171
5位 6 S.ホーニッシュJr. 465 -172
16位 55 松浦孝亮 303 -334
25位 60 武藤英紀 24 -613