<US-RACING>
ポルシェの強さには手がつけられない。アメリカン・ル・マン・シリーズ第7戦はペンスキー・ポルシェが1-2フィニッシュで総合優勝を飾り、第3戦から怒涛の5連続総合優勝を達成した。2時間45分で争われた今日のレース、スタートを順当に決めたティモ・バーンハードの駆る7号車のポルシェは、レース開始後9分に一瞬の隙をつかれ、ひとつ上のクラスであるLMP1のアウディの先行を許してしまう。しかし、速さで勝るポルシェはぴたりとアウディの背後につけ、同時にピット・イン。ピット作業に定評があるペンスキー・チームは素早いピット・ストップを遂行し、アウディよりも先にバーンハードを送り出した。その後はアウディとの差をじりじりと広げ、バーンハード、ロメイン・ダマス組のポルシェはアウディを15秒引き離してトップ・チェッカーを受ける。チームメイトのライアン・ブリスコー、サーシャ・マーセン組も2位に入り、改めてペンスキー・ポルシェの強さを思い知るレースだった。
「タイヤをセーブしようとしていたときに、マルコに抜かれてしまったよ。ピット・ストップのタイミングが近づいたら、プッシュして彼に追いつこうと思っていたんだ。僕たちのチームはタイヤの付け替えがほんとうに早いよ。とにかくミスをしない。ここ2年では1度もミスした記憶がないね。だから、ピット・ストップのときには、必ずタイムを短縮できるんだ。ピット・インしたときはマルコのすぐ後ろだったけど、ピットを出るときにはマルコはまだピット作業をしていたよ」とレースを振り返るバーンハード。第3戦からここまでの5連勝のうち3回が1-2フィニッシュと、圧倒的な強さを誇るポルシェをいつ誰が止めるのだろうか。
今回もポルシェの牙城を崩せなかったアウディ。スタートから3番手のリカルド・カペッロ、アラン・マクニッシュ組の1号車がアキュラ勢のハイクロフト・レーシングと接触するアクシデントに見舞われる。混乱を抜け出したエマニエル・ピロ、マルコ・ワーナー組の2号車は、レース序盤にコース上でポルシェをかわしてトップに立ち、LMP1クラスの意地をみせたが、今日の見せ場はそれだけだった。ピット・ストップであっさりバーンハード、ダマス組のポルシェに逆転を許すと、ブリスコー、マーセン組のポルシェにも前を行かれてしまう。何とかアキュラ勢のフェルナンデス・レーシングは抑えたが、今回も2号車の総合3位が精一杯だった。「なんとかポルシェのペースについていけるときもあったよ。僕たちは燃料補給に多くの時間を必要としたから、ピットのせいでレースを失ってしまったといえるね。僕たちなりにベストを尽くしたから満足はしてるんだ。こういった短いコースでは良いパフォーマンスは望めないからね」と悔しがるピロ。昨年優勝を飾っている第8戦ロード・アメリカで、ポルシェの鼻を明かしたい。
ホンダの工場が近いことから、アキュラによってホーム・レースとなるミド-オハイオで、トップ3フィニッシュを逃したアキュラ勢。予選総合3位からスタートしたフェルナンデス・レーシングは、スタートで2号車アウディの先行を許すことになる。ペンスキーの背中は瞬く間に遠ざかり、レース・ラップが接近していたアウディにもじりじりと引き離され、トップと39秒遅れの総合4位でフィニッシュした。「今週末は強さがあったね。ポルシェのブリスコーとはすばらしいバトルができたけど、最後は負けてしまったよ。今日は周回遅れの処理がレースに大きな影響をもたらした。優勝を狙って最後のスティントはタイヤを交換しなかったが、僕たちにはそれが有利に働かなかったようだね。勝つためにはまだまだ働き続けなければならないよ」と語るエイドリアン・フェルナンデス。次戦以降の巻き返しを誓う。
ハイクロフト・レーシングはスタート直後に行き場を失い、1号車のアウディともつれるようにタイヤバリアに激突。幸い、フロントのスプリッターにダメージを受けただけで復帰できたが、大きく後退してしまう。その後はなんとか追い上げ、2周遅れの8位でフィニッシュ。この日2番目のベスト・ラップを叩き出すほどのスピードがあっただけに、残念な結果に終わった。
10位に終わったアンドレッティ・グリーン・レーシング。ブライアン・ハータにとってはCART時代に経験があるコースのはずだが、今週末は他のアキュラ勢に比べると苦戦していた。ホンダがCART時代に9戦中5勝もあげているゲンのよいミド-オハイオだったものの、今日のアキュラ勢に風が吹かなかった。
2001年からこのミド-オハイオでレースを開催するようになったアメリカン・ル・マン・シリーズ。今では地元のファンにレースの面白さが浸透しており、大勢の観客が訪れていた。このコースも他のロード・コースと同様、キャンピング・カーで来るファンが多いため、コース周辺はその車が所狭しに並んでいる。明日のインディ・カーのレースは初開催となるが、今日以上のファンが集まるのか興味深いところだ。