CHAMP CAR

ウィル・パワーが滑りやすい路面を制し、トロントの優勝を飾る

<Champ Car World Series>
チャンプカー・ワールド・シリーズのここ2戦は、神のみぞ知る自然に大きな関心が集まり、スティールバック・グランプリ・オブ・トロントは37周目に降り出した雨によって、再びレースに波乱が巻き起こった。オーストラリア人のウィル・パワー(#5オージー・ヴィンヤーヅ・コスワース/DP01/ブリヂストン)は、ウェットとドライ両方のコンディションに対応。キャリア2回目の優勝を飾り、シリーズ・チャンピオンシップでトップからわずか2ポイント差の2位に躍進した。
この変わりやすい天候が、チャンピオンシップの行方にも大きな影響をもたらした。ロバート・ドーンボス(#14ミナルディ・チームUSAコスワース/DP01/ブリヂストン)は6位でフィニッシュし、セバスチャン・ブルデイからポイント・リーダーの座を奪った。68周目にドーンボスとブルデイが2台連なって走行中、ターン3の進入で接触してしまい、両者がタイヤ・バリアに追突。3度のディフェンディング・チャンピオンであるブルデイは大きいダメージを受け、9位でレースをリタイヤせざるを得なかったが、一方のドーンボスはたった1周遅れでレースに復帰した。この気の毒なフィニッシュでブルデイはチャンピオンシップのトップを奪われ、3位に転落するものの、その差はわずか3ポイントにすぎない。
スティールバック・グランプリ・オブ・トロントは波乱の幕開けとなり、まずオリオール・セルビア(#7インデック・コスワース/DP01/ブリヂストン)が、ターン1でスタート・ポジションの3番手からトップにジャンプ・アップする。一方、ターン4ではシモン・パジノウ(#15オージー・ヴィンヤーヅ・コスワース/DP01/ブリヂストン)が、カナダ人のアレックス・タグリアーニ(#8タイド@ウォール・マート・ビクトリー・ラップ・チャリティー・プログラム・コスワース/DP01/ブリヂストン)と接触し、タグリアーニのタイヤがパンク。パジノウのチーム・オーストラリアのマシンはフロント・ウィングを失った。そのフロント・ウィングの破片がもう1人のカナダ人ドライバー、ポール・トレイシー(#3インデック・コスワース/DP01/ブリヂストン)のマシンの下に入り込み、彼はターン8までずっとパーツを挟んだまま走り続けるが、ステアリング操作に悪影響が生じ、ウォールに激しく突っ込んでしまった。この事故を知らずにターン7のブラインド・コーナーへ進入したグラハム・レイホール(#2メディ・ゾーン・コスワース/DP01/ブリヂストン)、ヤン・ヘイレン(#34チャンプ・カー・グランプリ・オブ・ベルギー・コスワース/DP01/ブリヂストン)、トリスタン・ゴメンディー(#22ペイ・バイ・タッチ・メガスピエラ・コスワース/DP01/ブリヂストン)、キャサリン・レッグ(#11デイル・コイン・レーシング・コスワース/DP01/ブリヂストン)と、アレックス・フィギー(#29パシフィック・コースト・モータースポーツ・コスワース/DP01/ブリヂストン)には、行き場所がどこにも残されていなかった。ゴメンディーはヘイレンのマシンの後ろに乗り上げ、激しくクラッシュ。幸いドライバー全員に怪我はなかったが、レースに復帰できたのはレイホールただひとりだった。
セルビアはスタートから34周に渡ってレースを率いたが、グリーン・フラッグ中のピット・ストップがレースの形勢を大きく変える。セルビアは燃料のピックアップのトラブルに見舞われ、最初にピットへ駆け込む。その1周後にブルデイが燃料補給と、新品のブリヂストン・ポテンザへ交換するためにピット・イン。ウィル・パワーがリードを奪った。グリーン・フラッグ中のピット・ストップが一巡する頃、晴れていた天候が変わり、この1.755マイルサーキットに雨が降り始める。ニール・ヤニ(#21レッドブル・ガルフストリーム・コスワース/DP01/ブリヂストン)と、ライアン・ディエル(#28サン・メディア/PCM・コスワース/DP01/ブリヂストン)は、38周目にウェット・コンディションのためにデザインされた溝つきブリヂストン・ポテンザへ付け替えた。同じラップにタグリアーニとセルビアの二人が雨に滑ってタイヤ・バリアへ突っ込み、イエロー・フラッグが振られたため、ヤニとディエルの戦略が見事にはまった。
ほぼ全員のドライバーがイエロー中にピットへ向かうなか、ディエルがチャンプ・カーで始めてラップ・リーダーになり、16周に渡ってトップを走り続けた。リスタートでパワーはブルデイとダン・クラーク(#4ミナルディ・チームUSAコスワース/DP01/ブリヂストン)を、抜き去って5位から3位に浮上。そして次々と起きるクラッシュのリスタートでパワーはニール・ヤニとディエルまでもかわし、リードを奪う。ヤニもディエルを抜くと、次にジャスティン・ウィルソン(#9CDWコスワース/DP01/ブリヂストン)がこのスコットランド人を視界に捉えた。ウィルソンはディエルの背後を9周走った後に、ターン8で二人は接触。ディエルがタイヤ・バリアに追突してレースを終える一方、ウィルソンはポディウムに乗った。
パワーは最初にチェッカー・フラッグを受け、ニール・ヤニが続いて2回目の表彰台を獲得。ウィルソンは3位に入った。シモン・パジノウが4位でフィニッシュし、デイル・コイン・レーシングのブルーノ・ジュンケイラ(#19サニーズ・BBQコスワース/DP01/ブリヂストン)は、今シーズン・ベストの5位を記録した。
カナディアン・トリプル・クラウンのタイトル争いは、チーム・オーストラリアが引き続きリードを守り、アレックス・タグリアーニとジャスティン・ウィルソンを擁するRスポーツは2位。ニューマン/ハース/ラニガン・レーシングのセバスチャン・ブルデイとグラハム・レイホールが3位になっている。
チャンプ・カー・ワールド・シリーズの次の舞台は、レクソール・グランプリ・エドモントン。プラクティスと予選は7月20日から始まり、7月22日の日曜日、アメリカ東部時間午後3時にレースのスタートが切られ、アメリカのESPN、カナダではグローバルによる生中継が配信される。また、レース・ファンはチャンプ・カー・ワールド・シリーズの公式ウエブ・サイトwww.champcar.ws にあるレース・ディレクターを通じて視聴が可能だ。
トップ3インタビュー
ウィル・パワー:「面白いレースになったね。雨が降ったのは最高だったけど、ドライでもみんなより1周多く走ってもトップでいられるくらい速かったと思うよ。マシンの感触は良かったからね。どのコンディションでも調子が良かったんだ。チームにはほんとうに感謝している。僕たちが必要としていたポイントもちゃんと獲れた。しかもセバスチャンがレースを完走しなかったのが、僕たちにとってすごく有利だった。次の数戦はかなり得意なコースだよ。
ニール・ヤニ:「チャンプ・カーの燃費作戦については、まだ勉強しなくてはいけないことがあるね。でも、最後に雨が降ったときはこの作戦にあまり意味がなかった気がしたよ。他のみんなはイエローが振られた後にレイン・タイヤへ替えていたのに、僕たちはその前にピット・インしていたからチームはすばらしい仕事をしたね。このピット・ストップはばっちりだった。そのおかげで、5〜7位くらいから2位に上がれたんだ。その後ウィルに抜かれるけど、今日の彼は速すぎてとても追いつけなかったよ」
ジャスティン・ウィルソン:「いろんな出来事があったレースだったね。序盤はセバスチャンとバトルをしていて、ターン5で彼をパスしようとした。彼はターン4でひどいラインを通っていたから、絶対チャンスがあると思ったんだ。でも彼は僕に気づかないで外側からターンに入った。スピンしたときはほんとうにがっかりした。そのおかげポジションを取り戻すことに集中できたけどね。その後、彼からポジションを取り返したときは嬉しかったよ」