<US-RACING>
アメリカン・ル・マン・シリーズ第2戦セント・ピーターズバーグは、まだ明るい午後5時9分にグリーン・フラッグ振られる。レースはスタートからアウディとポルシェが接触する波乱の展開。コース幅が狭く、エスケープを少ないストリート・コースに加え、スピードが違う2つのクラスが同時に24台も走行するため、接触、クラッシュが相次ぎ、合計5回ものコーションが発生するレースとなった。
スタートでいっきにポルシェの2台を交わした、3番手スタートの#1アウディ。序盤からハイペースで飛ばし、2番手とのギャップを広げていったが、好ダッシュを決めたスタートがフライングとの裁定が下り、ドライブ・スルー・ペナルティを受けて後退を余儀なくされる。10番手まで後退した#1アウディは、最速ラップを記録しながら、瞬く間に追い上げていった。昨日の予選ではLMP2の後塵を拝したが、ストレート・スピードを活かして次々と前車を交わし、レース開始から20分で総合トップに躍り出る。燃料タンクが90リッターから81リッターに引き下げられたことから、ピット戦略で不利になると予想されていたが、まったく影響が見られなかった。7番手スタートの#2アウディも2番手まで追い上げ、1−2体制を構築してそのままフィニッシュ。LMP1の意地を見せたアウディが、今季初の1−2フィニッシュを達成した。「最初のリスタートの後、グリップがなくてほんとうに怖かった。次のラップではグリップが戻ってきて、なんとか良い走りをしようと思ったら、またフル・コース・イエローになってしまった。そのときは勝つチャンスがなくなったと思ったよ。またグリーンになって、1−2コーナーではグリップがなかったんだけど、3コーナーからはグリップが戻ってきたので、残りの3ラップは精一杯走るしかないと思った。その最後の3周は今までのキャリアのなかで、1番大変だったかもしれない」とカッペロが今日のレースを振り返った。不利と思われていたレギュレーションを見事乗り越えたアウディ。続くロングビーチ、ヒューストンの市街地レースも、総合優勝候補の筆頭だ。
第1戦セブリングではトラブルに見舞われ、同クラスのアキュラ勢に惜敗したポルシェ勢。スタートで#7のペンスキー・ポルシェが#1アウディの接触を受け、いきなりタイヤがパンクしてしまう。また、クラス・トップの座をアンドレッティ・グリーンのアキュラに奪われるなど、第1戦の悪夢がよみがえるような序盤の展開となった。しかしその後、ポルシェにはトラブルが発生せず、逆にアキュラ勢がトラブルやペナルティによって後退したため、気がつけばペンスキー・ポルシェの1−2。残り4分を切って再開となったレースで、クラストップをめぐってペンスキーの2台がしのぎを削り、#6のマーセン、ブリスコー組が#7のダマス、バーンハード組みをコンマ1秒抑えてクラス優勝を飾った。「信じられない。ほんとうにすばらしいよ。なんていったらいいのかわからないね。スタートの問題の後は良くなかった。スタートで他のマシンと接触し、マシンの下にパーツが入ってしまった。油温や水温が上がり、グリーンでピットインする必要もあったし、拾ったパーツが空力に良くない影響をだしていた。でもマシンがかなり速かったから、この結果を出すことが出来たんだ」と、優勝の喜びを語るブリスコー。開幕前から高い戦闘力を見せていたポルシェが、今シーズン待望の1勝を挙げた。しかし一方でマーセンは、優勝を喜びながらも、確実にパフォーマンス挙げているアキュラ勢に警戒を示し、次戦以降も接戦となることを予想していた。
スタートからギアがスタックするトラブルを抱えていたハイクロフト・レーシングは、コーション中にピット・ストップするケアレス・ミスや、他社との接触でペナルティを受けて後退してしまう。それでも総合5位、クラス3位に入り、アキュラ勢のトップでフィニッシュした。決勝でのベストラップは#6のポルシェから1秒近く離されているが、開幕前から比べると、確実にその差は縮まってきている。次戦ロングビーチでは巻き返し、セブリングの再現なるか。
AGRに続いて、クラス・トップに立ったフェルナンデス・レーシング。#20との接触でペナルティを受けて後退したが、ライアン・ディアスの力走により、その後一度クラス・トップに返り咲く。しかしペナルティを受けたことで、ピット戦略の予定が狂ってしまい、追い上げかなわず、総合6位に留まった。
デビュー・ウインを飾ったセブリングとは対照的に、多くのトラブルに巻き込まれることになったアンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)は、スタートで2番手までジャンプ・アップ。アウディのペナルティ・ストップにより、トップに浮上する。しかし開始から11分、マリノ・フランキティがアウトに膨らんでタイヤバリアに接触。幸い大きなダメージではなかったが、リアウイングとリアのボディにダメージを負って走行を続けていた。ところがドライバーがフランキッティからハータに変わった直後、またしてもウォール接触。今度は大きなダメージを負ってしまい、長い間ガレージに留まって、最後は総合21位に終わった。