<US-RACING>
3日間連続して好天に恵まれた第9戦、決勝レースは気温摂氏32度でやや湿度は高め、路面温度は45度というコンディションの中、午後1時5分にグリーンフラッグ。100周のレースが幕を明けた。
スタート直後、各マシン一斉にターン1へなだれ込んだその時、ブライアン・ハータとクリスティアーノ・ダ・マッタが接触。これが引き金となり、合計10台のマシンを巻き込むアクシデントが発生、レースは1周目からフルコースコーションとなる。このアクシデントでミシェル・ジョルダインJR、オリオール・セルビア、タルソ・マルケス、黒澤琢弥ら4台マシンが早々に戦線を離れた。
また、この時中野信治のマシンも追突され、右後ろのタイヤがパンク。オフィシャルによる再スタートに手間取り、その後ピットインしてタイヤを交換するが、2周遅れとなってしまう。多くのマシンがこのアクシデントでポジションを下げる中、予選17番手からのスタートとなったポール・トレイシーは逆にこの混乱を巧みに切りぬけ、ターン2で一気に5番手までジャンプアップ。
6周目、グリーンフラッグでレースが再開。この周回でジル・ド・フェランとマイケル・アンドレッティがマウリシオ・グージェルミンをパスしてそれぞれ2位、3位へ上がる。
12周目にマーク・ブランデルがターン6のタイヤバリアーに突っ込み、ここでこの日2回目のフルコースコーション。2周後にグリーンフラッグが降られた時点のトップ5の順位は、モレノ、ド・フェラン、アンドレッティ、フェルナンデス、トレイシーというオーダー。
スタート直後の思わぬアクシデントで手痛いタイムロスとなった中野信治だが、コース復帰後、この日4番目のベストタイムを出すなどトップと遜色ないタイムで周回を重ねるが、19周目にスピン。幸いエンジンはストールすることなく、中野はレースを続行する。
レースの3分の1を消化した34周目、グリーンの中リーダーのモレノがピットインをすると、2位のド・フェランもその2周後にピットイン。代わってトップに立ったのは、その前にすでにピットに入っていたジミー・バッサーとハータ。
41周目、オープニングラップで順位を上げていたトレイシーが最終コーナーを立ちあがったところで突如スローダウン。トランスミッションにトラブルが発生したトレイシーはそのまま戦列を離れ、今回もリタイアとなってしまう。その翌周、トップのバッサーがピットインし、さらにその次の周にハータがピットインすると、再びモレノがトップに返り咲き、ド・フェランも2位となる。
しかしド・フェランのマシンは、スタート時から抱えていたブレーキトラブルが徐々に悪化。このため50周を過ぎた辺りでトップのモレノとの差が10秒以上に広がってしまう。その同じ周回上で、マックス・パピスがメカニカルトラブルのためリタイア。スタート時の混乱でコースアウトした際、ウイングとブレーキダクトを破損、ブレーキバランスの悪化が原因でハーフシャフトにダメージを負ったパピスはレース続行を断念。
そしてド・フェランの方はというと、54周目、アンドレッティにパスを許した後、さらにポジションを下げていく。
各マシンが2度目のピットストップを終わらせた時点でも依然トップはモレノ。2位に上がって来たブレックとは12秒以上の差が開いている。69周目に3位までポジションを上げたモントーヤが74周目のターン1でブレックを捕らえ、インを突く。しかしブレックも譲らず、2台はサイドバイサイドのままターン2へ進入。ここでいったんモントーヤが前に出る。
だが78周目にタグリアーニがターン6でストールしてフルコースコーションが出ると、モントーヤはすかさずピットに向かい給油、7位まで順位を下げながらも、ラストスパートに備える。81周目にグリーンフラッグでレースが再開すると、その翌周にはスタートの混乱で順位を落としていたフランキッティがアンドレッティをパスして3位に上がる。アンドレッティはここでダ・マッタにも交わされ、5位に後退。
一方、ブレーキトラブルが悪化しながらも依然レースを諦めず周回を重ねるド・フェランだったが、そのトラブルから87周目のターン3でついにグージェルミンのマシンと接触してしまう。ここでマシンに致命的なダメージを負ってしまったド・フェランはピットイン、レース続行を断念しマシンを降りた。また、中野にもトランスミッションのトラブルが発生し、リタイアを余儀なくされてしまう。
チェッカーまで残り10周を切り、トップのモレノとの差を縮めるブレック。以下フランキッティ、ダ・マッタ、アンドレッティと続く。91周目、ダ・マッタにパスを許したフランキッティがピットに無線でギアボックスの不調を訴える。そして95周目、トレイシーと同じトランスミッションのトラブルでターン3のランオフエリアにマシンを止めたフランキッティは、そのまま無念のリタイアとなった。
周回数も残り僅かとなると、ブレックは1位モレノとの差を1秒近くまで縮める。その背後にはダ・マッタもピタリと付けている。3人のうち誰が勝っても初優勝だ。レースは99周を終了、ホワイトフラッグが降られいよいよ100周目に突入。しかしモレノは最後までミスを犯すことなく見事に後続を抑え、トップでチェッカーを受けた。
感動のシリーズ初優勝を果たしたモレノは感涙のあまり、チェッカー直後のターン1がよく見えず、エスケープゾーンに入ってしまい、そこで派手にスピンターン。モレノの優勝は1988年の国際F3000のイギリス・バーミンガム戦以来で、CARTシリーズに初参戦してから実に15年と2日、70戦目にして初の勝利、しかもそれをポールtoウィンで決めたのだ。
また100周のレースで実に91周をリードし、最多リードラップのポイントも獲得するというまさに完全優勝だった。モレノはこれで最大ポイントの22ポイントを獲得して総合90ポイントとなり、ランキング2位のアンドレッティを22ポイント差まで引き離すこととなった。彼は今季8人目のウイナーとなる。(最多記録は1991年と1999年の10人)
ちなみにフォードエンジンがストリートコースで優勝するのは、1997年のサーファーズパラダイス以来。1998年のロングビーチ以来続いていたホンダのテンポラリーコースでの16連勝がついにストップした。また、パトリック・レーシングの優勝は第3戦のアドリアン・フェルナンデスも合わせた今季2回目で、これは1986年のK.コーガンとE.フィッティパルディ以来だ。
次回第10戦はカナダ・オンタリオ州トロントの市街地仮設ロードコースで開催される“Molson Indy”。前回のポートランドでホンダがトップとなったマニュファクチャラーズポイント争いはまた逆転し、フォードが158ポイントで大幅にリード。今回一台も完走することができなかったホンダが138ポイントで、ダ・マッタが3位を獲得したトヨタが132ポイントとその差6ポイントまで接近。今後、後半戦でどのような展開となるのか、多いに注目が集まるところだ。
●優勝したR.モレノのコメント
「想像してみてよ、 もしきみが月にいくのが夢なんだといって、 それを誰かが馬鹿じゃないのといって… でもきみはその夢を信じながら、ずっとずっと努力して、 その夢が遂に実現できた時のことを。 とってもすごいことだよね。 ボクにとって今、まさに月に到達したような気分だよ。 今日ここで優勝できるまでに本当に長い道のりだった。 ボクはいつかこの日が来ることを信じていたよ。 今週は予選から本当に良かった。 シャシー、エンジン、タイヤどれをとっても完璧だったよ」
●2位でフィニッシュしたK.ブレックのコメント
「いや今週は我々にとって奇妙な週末だったよ。 金曜日の予選ではマシンのセッティングがとても良くて3位に入れ、これはいけるぞ思ったら、 土曜日は期待はずれの予選15位。 そこでエンジニアのドンが昨夜マシンを全てと言っていいほど変えたんだ。 そしたらね、今日は見違えるようにマシンが速くなってて、 今日このポジションでフィニッシュできたんだよ。 レーススタート直後の大混乱では巻き込まれることもなく、我々はラッキーだったね。 今日は燃料をセーブして走るよう、心がけたよ。 終盤でロベルトに迫ったときも、パスしようとプッシュしたが、 彼を捕まえることはできなかった。燃料の心配があったからね」
●3位に入賞したC.ダ・マッタのコメント
「今日は我々チームにとっていろいろなことが起きたレースだった。 スタートで起きた混乱でポジションを落としてしまった時、 このポジションからじゃ今日のボクにはチャンスなんて巡って来るわけないとあきらめかけてたら、 クルーが無線で「心配するな、レースはまだ99ラップも残っているんだ」とアドバイスしてくれたんだ。 今日はタグリアニかカーペンティエの後ろについて多くのラップを走ったんだけど、 そのおかげもあって燃料をセーブして、終盤のためにパワーを温存することができたよ。 今日ここで表彰台を実現することができてとてもハッピーだよ。 でもちょっと失望もしたかな、優勝するチャンスもあったからね。 まあとにかくここで14ポイント獲得できたのは非常に大きいと思うよ」