さて、前編から続く“Iowa Corn Whisky”の秘密についてはね、まず、もうひとつのビールについてご紹介してから、じっくりと全貌を明らかにしたいと思います(そこまで引っ張るものでもないんだけど、飲みに行ったときと同じようにね「とりあえず、ビールかな」って感じでスタートしようかなと)。
前回紹介した2種類のビールもそれぞれ個性的だったのですが、この“John’s White Ale”もそれらに負けず劣らずな味わいのあるビールでしたよ。
それでは、まず、どうしてこのビールが造られたのかという生い立ちから説明しましょう。
なにやら1848年にアイオワ・シティの街角に、生地織物を販売するお店が建てられました。その100年後となる1948年に、ジョン&エルマ夫妻がそのお店を購入し、食料雑貨店をスタートしたんですって。
ジョン&エルマ夫妻の人柄もよかったのでしょうか。街ではなくてはならないお店として根付いた“John’s Grocery”は、今でもその家族が経営しており、3世代も続いているとのこと。そんでもって、こんだけ長く続いているんだからさ、ちょうど50周年を迎えた年に記念のビールでも造ってみっかとなったわけです。
そのビールの評判も良く飛ぶように売れ・・・・・・となっていたら自分らで続けていたんでしょうけど、2002年からは前編でご紹介したこの会社“Millstream Brewing Company”が製造を引継ぎ、現在に至るとのこと。
最後にご紹介するビールがその“John’s White Ale”。僕の好きなベルギー・スタイルのホワイト・エールに(これらがラベルに表記されているとね、まず飲んでみたくなります)アクセントとなるオレンジの皮とコエンドロ・スパイスが配合されています(これは調べてから知りましたよ)。
飲んでみると、ホワイト・エール系のまろやかな苦味が口の中に広がったあと、きめ細やかな炭酸が喉を刺激しながら通過していきます。麦芽化されていない小麦を加えるため白みがあるのですが、その独特なにごりをそれ程感じず、すっきりとしたとても爽やかなビールでした。
3種類ありましたが味の好みでいうと一番好きなタイプでしたね。由緒ある“John’s Grocery”の50周年記念に相応しいビールだと思いましたよ。
さてさて、ビールにも飽きてきたし、そろそろきっついの飲み始めるかってな感じでね、いよいよご紹介する“Iowa Corn Whisky”。勘のいい方は前回の時点でお分かりになっているかもしれませんが、これなんと水のように透明なウィスキーなんですね。
ウィスキーといえば琥珀色以外ありえないというか、それ以外の色のウィスキーを見たことがなかったので、陳列棚にあったこの“Iowa Corn Whisky”を見つけたときはね、たまげたなぁって感じでしたよ。
バーボン・ウィスキーの原料としてコーンが使われていることは知っていましたが、アイオワ産トウモロコシのコーンだけ使った透明なウィスキー、いったいどんな味がすんだべって興味津々にならないわけがない。それに、これはほらFrom USのネタにもってこいこいなウィスキーじゃないかということでね、一緒にいたアニキを説得し購入しました。
それではまず、どこでコーンなウィスキーが作られているかっていうと、アイオワ州の中心都市デモインの南に位置するノーウォークのね、アイオワで公認されている蒸留酒製造所の中では最も小さい“ブロードベント蒸留酒製造所”で製造されています。
ブランドネームともなっている“Two Jay’s”からもわかるように、二人のジェイがこの蒸留酒製造所を立ち上げ、切り盛りしているようです。製造している蒸留酒は3種類あり、この“Iowa Corn Whiskey”の他に、ちゃんと色のついた琥珀色のウィスキー“Iowa Corn Whisky Country Style”というのもありました。
それと、もともと家族経営でブドウ園からスタートしたのですが、何らかの事情があったのでしょう、ブドウの販売ができなくなり、2009年に蒸留酒製造所をスタート。今でも取れるブドウと、地元のブドウを使って“Iowa Grape Grappa”(グラッパとは、ブランデーの一種で食後酒としてイタリアではポピュラーなお酒)も製造しています。
ちなみにコーン・ウィスキーとは80パーセント以上トウモロコシを使用していなければならず(バーボンのトウモロコシ使用率は51パーセント以上80パーセント未満)、この“Iowa Corn Whiskey”は100パーセント地元アイオワのトウモロコシを原料として製造されています。そりゃ、名前どおりじゃないとね。
蒸留に蒸留を重ね、二人のジェイが4つの目を光らせ今でも検品しているかどうかはわかりませんが、品質の管理は徹底しているようです。クリアー・ウィスキーですからカクテルを作るときに使用される浸出液やリキュールのベースにもなっているそうで。
気になるその味ですが、まず驚いたのは香りでした。日本酒の香りに近いのですが、アルコール度数が高いだけにつーんと鼻にきて、なんだか刺激の強い日本酒といった感じを連想させました。
でもね、どこかで嗅いだことのあるなって考えていたら思い出しました。他でもないインディカーの燃料として使われていたエタノールの甘いぼわっとした匂いだったんですね。そりゃそうだ。あれもトウモロコシが原料の一種として使われていたもんなって。
そう思い始めるとなんだかちょっと気が引けますが、飲んでみなけりゃわからないってことで、まずはストレートでその味をチェック。これがね、きりっとした日本酒のような味わいというか雰囲気があって、そのあとに喉元からこみ上げてくる、くわっとしたアルコールの度数の高さでハードリカーだなってことを思い出す不思議なウィスキーでした。
雑にいうと100パーセントトウモロコシ原料のエタノール(飲んだことはないですが)って感じがしないでもないけど、それじゃあ、今度は氷を入れてロックで飲んでみるかって試してみるとね、くいくいと飲みやすくはなるものの今度はちょっと味の薄くなった日本酒のような感じがしないでもなくて。
ただ、日本酒に氷を入れて飲んでいるのとはまた違ってこれはこれで飲みやすいし、飲んだあとに口の中に残る甘い余韻でね、あー、これは確かにエタノール、あ、間違い、トウモロコシが原料なんだなって思えるわけです。
二人のジェイが丹精を込めて蒸留に蒸留を重ねて作ったんだから、これだけクリアーなウィスキーになったんだなって思うのですが、もう少し味としてのパンチも欲しかったかなって感じた初めてのコーン・ウィスキーでした。
まあ、一言でその味を表現すると、結局は“コーン”な感じ、とでもいうしかないのですが、ともあれ、美味しく頂くことができたので、アイオワの大地に感謝です。さて、次回からはトロントで見つけた地ビールとハンバーガーショップをご紹介したいと思います!