Hiroyuki Saito

Renewal Test

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日本の運転免許センターも結構混みますが、アメリカのDMVも非常に混みます。特に僕の街にあるDMVの混雑といったら、朝に行ってもすでに建物の入り口から人の列が溢れ出している状態です。その列はもうサウス・ウエスト航空のチェックイン並みです。
行って見るとやはり行列ができており、どれくらいかかるか予想がつかないと思ったので違う街のDMVに行きました。ドライバー・ライセンスは各州によって発行されているので、カリフォルニア州内のDMVなら基本的にはどこでもできるらしいのです。
違う街のDMVはそれほど混んでなかったので、そこで早速手続きを始めました。すると番号札を渡されて呼ばれるまで待機です。30分くらい待ったでしょうか。モニターのディスプレイに僕の番号が表示され、どこのカウンターに行けと表示されました。
書き換えのための必要記入事項はすでに書いていたので、それを渡して更新手数料を支払いました。それで済むのかと思っていたら、ドライバー・ライセンスに掲載する写真を撮影するからといわれたので隣の窓口に並びました。
まあ、新しい写真になるのも満更でもないと思いつつ言われるがまま撮影されました。これで終わりかと思ったのも束の間、次はそっちの列に並べという指示がありました。
よく見るとそこはドライバー・ライセンスを取るための筆記テストの列でした。まさかテストを受けんの? なんて夢にも思ってなかった事態です。しかし、よく思い出せば5年前の書き換えでも確かテストを受けたような気が……と、遠い記憶が蘇ってきます。
うわぁー、なんて思いながらも受けなくちゃいけないみたいなのでテスト用紙が配られるのを待ちます。僕の順番が来たのでテスト用紙を受け取りにいくと、受付の人が僕にいろいろと説明を始めました。「あなたはリニューアルの人だから18問中、15問正解すればオッケーよ」と、いってテスト用紙を渡そうとしました。
そこではっと思い出したのが、確か日本語に翻訳したテスト用紙があったことです。誰から聞いたかは忘れましたが、5年前のテストでそれを覚えていて言ってみたら本当にあって、見事1回で受かった記憶が蘇りました。
「日本語のテスト用紙はありますか?」と聞いたら、「ちょっと待ってね」って感じで後ろのロッカーを探し出しました。あることを祈るばかりです。初めてのときはがんばって英語でテストを受け、見事1回で受かりましたが、そのときはちゃんと勉強しましたからね。今回は不意打ちみたいなもんですから、できれば日本語で受けたいなと。
でもここは日本人が少ない街だし、無いかもなぁと思っていたら受け付けの人が探し出してくれました。ほっと肩を撫で下ろし、これならいけると早速テストに取り掛かりました。
そのテストを受けるスペースは日本の免許センターのように机と椅子がある堅苦しいものでもなく、立ったまま受けるスタイルです。隣の人を遮るボードがあるわけでもなく、制限時間も決まっているわけではありません。自分のペースで始めて終了し、答え合わせをしてもらうようになっています。
しぶしぶテスト開始です。よく見ると18問のテスト用紙以外に、標識だけが書いてある別のテスト用紙がありました。これも18問あるんですね。日本語用のテストは標識の問題が別に増えるんだなぁなんて思いながらしょうがなく始めました。
問題を読み始めるとちょっと意味が理解しがたい文章があります。やはり翻訳が完璧ではありません。というか、英語で書いた問題を日本語にするとこんな感じになるんだろうなって、当たり前のことですが、日本語の文章としてのニュアンスが伝わりにくいので、結構、判断に苦しみました。
標識の問題は簡単でしたが、2問だけ問題の文章がプリントミスで読めないんですね。3択ですけど、あてずっぽうにチェックして外れるのも嫌だったので、そのことを後で言うことにし、他の18問の文章問題も何とか終えて列に並びました。
いよいよ答え合わせです。受付の人が目の前でジャッジします。ただし、日本語なのでその人は文章の理解ができません。答えが書いてある日本語用の答案を持ってきて正解している項目をチェックします。
すると、青ペンで次々と×がつけられるじゃありませんか。本当に僕のテストと答案が合っているのか心配なくらい間違っていましたよ。標識のテスト問題に関しては、問題が読めなかった2問以外とひとつだけ間違っていました。ちゃんと説明したのにその読めなかった2つの問題もとりあえず×になっていましたよ。
結局、18問の文章問題は5問も間違ってしまいました。がっかりです。「また日を改めて出直してくる?」てな感じでいわれたのですが、そんな悠長なこともいっていられなかったし、なんか納得できなかったので、その場で再テストを受けさせてくれと頼みました。
了解を得られたので再テストです。同じ問題だったらいいなぁと思ったのですが、そうは世の中甘くありません。しっかり違う問題のテスト用紙が渡されました。しかも前のより難しくなっていました。パスしたかと思っていた標識の問題も渡されました。
参りました。これを落とすと面倒なことになるのでとにかく集中です。標識の問題は前回と同じ内容だったのですが、同じということは2問の文章がプリントミスで読めません。とりあえず標識の問題を終わらせます。前回間違ったところを訂正し、読めない問題も今回は山勘で適当にチェックしました。
問題は文章問題です。何度も文章を読み直し、状況を自分なりにイメージして三択のボックスのひとつにチェックを入れました。また理解に苦しむ文章が多く、本当にその答えでいいのかと何度も確認しました。かなり時間かけました。まぁ、時間をかければ正解するのかといってもそういうわけではありませんがね。
いろいろ考えましたが、もう僕の許容範囲を超えていたので腹を決め、前回のテストより自信がないまま答え合わせとなりました。再び機械的に受付の人が答えをチェックしていきます。標識の問題は適当にチェックしたプリントミスの読めない問題も奇跡的に1問あたり、18問中17問正解しました。
いよいよ文章問題です。問題の上から順にチェックが始まります。すると自信があった2、3問目にいきなり×印が入りました。うわー、また駄目かぁ……と思いつつ見ていると、受付の人の青ペンがどんどん下の問題へと進んでいきました。
許されるミスはあと1問。すると青ペンは17問目に×印をつけるじゃありませんか。ぎゃ! って感じでしたよ。もう神にも祈る思いで青ペンが最後の18問目を通過することを願いました。
青ペンは18問目をスルーし、×印の変わりにPassという文字をテスト用紙に記入しました。願いは通じました。こんなに緊張したのはいつ以来だったでしょうか。そしてこんなにうれしかったことも。なんともいえない充実感を得てDMVから出ることができました。
もちろん運転者としてすべてのルールを理解していなければなりません。しかし、人間ですから間違いはありますよね。
間違ったところの正解は何だったんだべ? って考えながら家路へと向かいました。