平均時速202.402mphを記録し、史上最速の500マイル・レースとなった第11戦ポコノのウィナーに輝いたのは、チーム・ペンスキーから今年インディカーに復帰したファン・パブロ・モントーヤでした。2000年のCARTサーファーズ・パラダイス以来となるポール・ポジションからスタートし、徹底的に燃費をセーブする走りを披露。上位勢の中では最も遅い32周目に最初のピットへ飛び込み、レース前半はすべて最後にピットを終える走りを展開しました。
「燃費をセーブするために、トップは走りたくなかった。これまで燃費を稼いだレース(NASCAR)はとてもうまくいったからね」と語ったモントーヤ。しかし167周目、前を行くウィル・パワーに後方から接触し、左前の翼端板を失うアクシデントが発生します。「我々はチームメートだから、スマートに行こうと思っていたんだけど、僕は全開で彼はほんの少しアクセルを戻した。右へ行ったら彼も右へ来て、当たってしまったよ。それで少しスローダウンしなければならなかったけど、まだ217、218マイルで走ることができた。順位がすべてだったから、1マイルぐらい遅くなっても大丈夫。もっと壊れていたら、だめだったろうね」とモントーヤ。
ほぼ同じピットのタイミングとスピードを持っていたパワーは、エリオ・カストロネベスをブロックしてドライブスルー・ペナルティにより後退します。終盤のイエローを期待してピット戦略を変更し、この日最多となる78周もトップを走行していたトニー・カナーンは、結局イエローが出ることなく残り3周でピットへ。ついにトップに立ったモントーヤはその瞬間「かなりほっとしたね。最後までトニーが走れないのは解っていたけど、もし4周前か5周前にコーションになっていたら、彼が勝っていたよ」
1999年のルーキーイヤーにCARTでチャンピオンを獲得し、翌年のインディ500でデビューウィン。その翌週のミルウォーキーではトヨタに記念すべき初優勝をもたらしたモントーヤが、最後にアメリカン・オープン・ホイールで勝利したのは9月17日のCARTゲートウェイ戦でした。翌年からF1に参戦し、2007年からのNASCARを経て38歳になったコロンビアのヒーローにとって、実に13年と9か月ぶりの勝利です。
「長い間インディカーで走っていなかったのに、僕を信じてくれたロジャー(ペンスキー)にお礼が言いたい。ファンタスティックだ!」とチーム・オーナーに向けて感謝の気持ちを語ったモントーヤ。「長い道のりだった。ここ数年ドライブしていたクルマ(ストックカー)とオープンホイールは違うんだってことを何度も言ってきたが、なかなか信じてもらえなかった。(勝つまでに)これだけ時間がかかることを、やっと理解してくれたと思う」
2位は予選7位からスタートしたエリオ・カストロネベスで、ペンスキー&シボレーがワンツーを達成しました。「クルマは決して速くはなかったけど、レース終盤に行くにしたがって、だんだん良くなっていったんだ。もちろん勝ちたかったけど、ファン・パブロ(モントーヤ)ほどのスピードはなかったね。2位でフィニッシュできたのも良かったし、チャンピオンシップでウィル(パワー)と並んだのも素晴らしい」とカストロネベスはレースを振り返っています。
ホンダの最上位はルーキーのカルロス・ムニョスで、今季3度目の3位フィニッシュとなりました。ワールドカップではブラジルに負けたものの、モントーヤはブラジル出身のカストロネベスを退け、同じコロンビアのムニョスが3位。南米勢が表彰台を独占です。「最初はクレバーなレースをしていて、誰もレースをリードしたくなかったよね。ここはパスするのがほんとうに難しい。5マイルぐらい速度差があったらいけるけど、そうでない場合は厳しいよ」とムニョスは語っています。
今年のオーバルで最上位のグリッドとなる予選4位からスタートした佐藤琢磨は、序盤10番手以内をキープしていたものの、25周目にまさかの電気系トラブルが発生してピットへ。チームはいったんガレージにマシンを戻して懸命に修復を試みたのですが、無念にもそのままリタイアを余儀なくされました。
「走り出しは周りに比べて少しダウンフォースが軽い感じで、フルタンクで路面がさらさらな状態では少し苦労しました」と序盤の様子を語る琢磨。「でも先頭グループとは変わらない状態で走れていましたし、10数周して路面もグリップするようになり、周りのクルマのタイムが落ち込み出した時に、僕はいいペースをキープできていたので、徐々に順位を戻していきました。まさにこれからという時に電送系のトラブルで、コンピュータからエンジンにシグナルを送るケーブルが破損していました」
テキサスに次ぐ今季2度目のメカニカル・トラブルとなったポコノ。インディ500から7戦にわたって様々なアクシデントに遭い、ランキングはレギュラー勢の中で最も下位の21位となってしまいました。レースは残り7戦で、あとは上がるだけです。次のアイオワが復調への分岐点となることを、祈らずにはいられません。
●決勝リザルト
●ハイライト映像