今シーズン最後のロードコース、第15戦ソノマを制したのはウィル・パワーでした。昨年のサンパウロ以来となる待望の今季初優勝で、通算19勝目を達成。15戦目で10人目のウィナーが誕生し、あと一人今季初優勝が加われば、CART時代(00、01年)の記録に並ぶことになります。
昨年まで3年連続でポールを獲得していたパワーは、今年ダリオ・フランキッティに予選トップの座を奪われ、3番グリッドからスタート。序盤ハンター-レイやカストロネベスに先行される場面もありましたが、1回目のピット後に挽回し、35周目には2番手に浮上します。
64周目のイエロー時にトップのディクソンと同時にピットへ入り、パワーの真後ろのピットで先に作業を終えて出たディクソンが、その際にパワーの右後ろのタイヤを交換するクルーと接触。オフィシャルはディクソンにドライブスルーのペナルティを科し、トップに立ったパワーがそのまま優勝を遂げました。
「とてもハッピーだよ。今年はもっと強くなれると思っていたのに、実際はそうじゃなく、悪いことばかり起きてたからね」と今季初優勝を喜ぶパワー。「今年はたくさんのことを学んだ。後ろの集団で走ることやリスタートなど、厳しい年には何が良くないのかをよく見て、探し出さなきゃいけない。来年はもっと完璧なドライバーになって帰ってこれると信じているよ」
2位にはデイル・コイン・レーシングのジャスティン・ウィルソンが入り、今季3回目の表彰台を獲得です。7番手からスタートしたウィルソンは7周目にEJビソに追突されてスピンし、23番手まで後退。そこから追い上げ、最後のリスタートでも果敢にパワーの前に出ようとしたシーンは、撮影していて感動すら覚えました。
「ぶつけられたから、すぐピットに入ってレッドに換えて追い上げることに決めたよ」とウィルソン。「レッドが3セット残っていたから、さあここから追い上げだってね。最後までプッシュし続けたことと、僕らにとって絶好のタイミングでイエローが出たのも大きかったと思う」
ポールからスタートしたフランキッティは、リスタート時に順位を落としたものの、最終的に3位でフィニッシュしました。途中パワーに押し出されたそうで「なぜオフィシャルがウィル(パワー)にペナルティを与えないんだ? スコット(ディクソン)の件といい、不愉快だね」とかなりご立腹の様子です。
一方、最多リードとなる27周もトップを走りながら、ペナルティによって21番手まで後退を余儀なくされたディクソン。残り15周で15位まで追い上げたものの、やはり納得いかないようです。「ペンスキーのクルーは我々のクルマに真っ直ぐ向かってきたように見えた。ピットにいる前のクルマと我々の間に、わざと入ってきたんだ。長いことレースを見ていて、おそらく今までで最も露骨なことだった。他のほとんどのピット・クルーを見てのとおり、他のマシンが出やすいようにトライしているよ。もし彼らがそこまでして勝つことを望むのだとしたら、決していいことではないね」
予選13位からスタートした佐藤琢磨は、序盤に9番手まで追い上げて最初のピットへ。トップ10でのフィニッシュが期待されていた中、19周目の再スタート時に目の前のグラハム・レイホールが3ワイドの間に挟まれて突如スピンし、避けきれなかった琢磨は追突してウィングとサスペンションにダメージを負ってしまいます。ピットで修復して再びコースに復帰したのですが、79周目のターン7でブリスコーに追突されてスピンして止まっていたキンボールが、琢磨の目の前で突然動き出して衝突。自力でピットへ戻ったものの、リタイアを余儀なくされました。
「スタート時は周りと比べてクルマは遜色ない感じで、かなりいいペースで走れていましたし、ポジションを上げることができました」と序盤を振り返る琢磨。アクシデントについては、「完全に僕のライン上で、左に誰もいなければ避けたのですが、TK(カナーン)がいてタイヤが絡みそうなぐらい近づいていたので、そのままいくしかありませんでした。せっかくクルーが直してくれてコースに復帰したのですが、止まっていたキンボールが動き出したので何もできなかったです。無駄なアクシデントになってしまい、ほんとうに残念なレースとなってしまいました」
はい、ということでソノマは大波乱のレースとなりました。計7回、計21周もコーションが出たのは新記録で、2時間20分以上の長いレースでした。様々な物議を醸しだすことになった今回のディクソンへのペナルティですが、みなさんはどうご覧になったでしょう。チームメートのカストロネベスがチャンピオンを争っていることもあり、色々な意見が飛び交っていますが、こちらの下にあるのはレース後にブルーノ・ジュンケイラがディクソンに宛てたツイートのリンクで、昨年のソノマのピット作業の映像です。
本来は上の映像のようにあるべきで、アウト側リアタイヤは、後ろのピットのクルマが出やすいようにし、この時のパワーのクルーは普通に作業をしていましたね。ところがその前に開催された2012年ミドオハイオでは、今回と同じくディクソンがパワーの真後ろのピットで、ペンスキーのクルーはタイヤを持って間をすり抜けています。同じように左手にタイヤを持って・・・(1分35秒ぐらいから)
偶然なのか、それとも故意にやったのか、よっぽどのことがない限り、その真相が明らかになることはないでしょう。ただ一つだけ言えるとするならば、もうこれ以上クルーが危険になるような状況を生み出してはいけませんし、ドライバーだってクルーに接触なんかしたくないはずです。おそらく、アウト側のリアタイヤの扱いに関しては、これまで明確なルールがなかったのではないでしょうか。それゆえに今回オフィシャルがジャッジを下せなかったのであれば、今後はしっかりと明記すべきでしょう。これからのオフィシャルの対応を注視していこうと思います。
●公式リザルト
●決勝前ウォームアップ・ハイライト映像