今季2戦目のロードコース、ミド-オハイオを制したのは参戦3年目のチャーリー・キンボールで、インディカー参戦45戦目にして初優勝を達成しました。予選5位からスタートして4番手を走行していたキンボールの陣営は、前を行くトップ3のペースから上位勢が2ストップ作戦と判断し、急遽3ストップで追い上げる作戦を採用。19周目にピットへ飛び込み、ハイペースでの追い上げを開始します。もしフル・コース・コーションが出た場合は2ストップ勢に有利となるものの、昨年は一度もコーションが出ませんでした。同じことが起きる確率は極めて低かったはずですが、初優勝を狙う陣営は大きな賭けに出たのです。
キンボールは上位勢がレースのちょうど3分の1となる30周目にピットへ入ったことでトップに躍進、同様の3ストップ作戦に出たサイモン・パジノウに前を走られるシーンもありましたが、勢いにのるキンボールはパジノウをパスしてトップの座を奪回します。陣営が望んでいたコーション・フリーのレースも実現し、?型糖尿病を患いながら挑戦していたキンボールが、ついに念願の初優勝を達成しました。今季9人目のウィナーで、初優勝は4人目。チップ・ガナッシ・レーシングはミド-オハイオ5連勝です。
「去年はミド-オハイオに手をやられたけど、今年は勝てたから、これでおあいこだね」とキンボール。昨年テスト中のアクシデントで手を骨折し、休戦(ジョルジオ・パンターノが代役)を余儀なくされた彼。今回がここで2度目のインディカーでのレースでした。「チームは素晴らしい作戦で僕を早めにピットへ入れてくれたよ。今朝スコットやダリオとミーティングし、チップのために代わりの作戦も考えていたんだ。3年前にルーキーの僕をチームに入れてくれたチップ、そしてスポンサーのノボノルディスクや、応援してくれたたくさんの糖尿病の人々とそのコミュニティに、勝利を報告できるのは素晴らしいことだよ」
2位は第7戦デトロイトで初優勝を遂げていたパジノウで、キンボールと同じ3ストップ作戦でしたが、ブラックタイヤでスタートして予選8位から順位を一つ落とし、9番手から追い上げての2位表彰台です。「第2スティントで新品のレッドを履いてからというもの、我々のクルマはほんとうに速かった。上位勢が最初のスティントで燃費走行をしていたから助かったね。僕はフルアタックモードで100%だったけど、チャーリー(キンボール)とガナッシのクルーはほんの少し僕らを上回っていた。彼らを心から祝福するよ」
予選6位から3位でフィニッシュしたダリオ・フランキッティも3回のピットストップでしたが、彼の場合はレースのほぼ3分の1となる29周目まで引っ張ってからの作戦変更でした。「チャーリーがピットに入って、我々の作戦が間違っていることが明らかになったんだけど、チームにとっては難しい決断だったと思う。僕はスコット(ディクソン)の3周前(44周目)に入ったんだが、最後に二人の順位は大きく開いたからね」とフランキッティ。実はディクソンも同様に途中からの作戦変更で、48周目にピットへ入ったことでフランキッティの後ろとなり、最後は7位でフィニッシュ。「あまりにも2ストップに固執し過ぎた」とディクソンは語っています。
予選でポール・ポジションを獲り「これからチャンピオン獲得に向けてアグレッシブに戦っていく」と言っていたライアン・ハンター-レイ。しかし2ストップ作戦の燃費走行という堅実路線に終始したため、5位フィニッシュに終わりました。「たった1回のイエローさえあれば、我々のレースになっていただろう。我々の思いどおりにはならなかったということさ」
予選16位の佐藤琢磨は、朝のウォームアップでこれまでとは違うアプローチにトライしたものの23位。再び決勝に向けてマシンを大幅に変え、15番グリッドからスタートしました。ブラックタイヤだった琢磨はレッドタイヤ勢に次々とパスされ、21番手まで後退して14周目に最初のピットへ。ところがレッドに変えても思うようなドライビングができず、最後まで我慢の走りを続けて22位フィニッシュとなりました。
「自分のキャリアの中でも、一番厳しいレースの中のひとつに数えられると思います」と琢磨。「今回、半分以上のチームは苦労していたと思いますが、中でも我々のクルマは相当ひどかったんじゃないかと思います。クルマは全然いい動きをしてくれなかったこともあり、これからショップで徹底的にクルマやデータをチェックし、次のソノマに臨みたいです」
レースの前に登場した次期NSXのプロトタイプ。現在オハイオの研究所で開発され、生産もオハイオで行われるということで、地元でのお披露目となりましたよ。今回、レースの翌日にはホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチュアリング(通称HAM)に行って、NSXが生産されるパフォーマンス・マニュファクチャリング・センターや、現在アコードなどを作っているメアリーズビル工場、CR-Vなどを作っているイーストリバティ工場や、エンジンを生産しているアンナ工場を取材させていただきました。メアリーズビルで82年に自動車の生産を開始してから30年以上、北米ですでに累計2500万台以上が生産され、このオハイオだけで15000人もの従業員がいるんだそうです。それぞれの日本人スタッフのみなさんにも会いましたが、ここまでの成長をみなさんがとても喜んでいる表情が、印象的でした。詳細は9月発売のホンダ・スタイル誌で!
はい、ということで予選はシボレーのフロントロー独占でしたが、終わってみればホンダが表彰台独占。HPDのスタッフによるとこのミド-オハイオは特に重要なレースのひとつで、勝ってほんとうに嬉しそうでした。これでマニュファクチャラーズ・タイトルも7勝ずつのイーブンとなり、こちらのバトルも楽しみになってきましたね。この勢いでホンダのタイトル奪回なるか?
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