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第10戦アイオワでヒンチクリフが今季初の3勝目、佐藤琢磨はエンジンが壊れてリタイア

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午前中は激しい雷雨に見舞われたアイオワ・スピードウェイ。とても予定どおりに開催できるとは思えないような悪天候で、スピードウェイに行くのをためらったファンも多かったと思います。せっかく日中のレースに変更してABCでの放映になったにもかかわらず、いつもよりさびしいグランドスタンドとなってしまいました。
 

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オフィシャルの懸命な路面乾燥作業によって、14時7分にエンジン・コマンド。24台が無事にスタートした中、前回のミルウォーキーで表彰台を獲得したポール・ポジションのウィル・パワー(エリオ・カストロネベスがエンジン交換で10グリッド降格)は、「スタートからリアのハンドリングが悪かった」ということで、すぐに隣のジェイムズ・ヒンチクリフに先行を許すことになり、その後徐々に後退していきます。
 

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開幕戦のセント・ピーターズバーグで初優勝を達成し、第4戦サンパウロでは佐藤琢磨とのバトルを最終ラップの最終ターンで制して2勝目を挙げたヒンチクリフ。これまでのアイオワの最高位は11位でしたが、今やウィナーらしい堂々とした走りでトップを快走していきます。インディ・ライツ時代からオーバルを走りこんできただけに、周回遅れのパスもみごとでした。
 

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ピットのタイミングで一時的にトップを譲った以外、250周中226周もリードして今季3勝目を達成。ヒンチクリフにとってはうれしいオーバル初制覇です。これまでのアイオワでは最も少ない3回のコーション(29周)で、最短レース記録を8分以上も短縮する1時間30分16.0266秒の速い展開となった今回。10戦中7人のウィナーが誕生している中で、ヒンチクリフが唯一3勝目をマークしたドライバーとなりました。ランキングも9番手から4番手へとジャンプ・アップし、シーズン後半の残り9戦に臨みます。
 

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「セント・ピートは最後の20周、サンパウロでは最後の100フィートをリードしただけで勝った。今回は1周目にパワーをパスしてからというもの、前には決して誰もいなかったよ。信じられないような展開だ」とレースを振り返るヒンチクリフ。「昨日のヒート・レースの時点で、今日のレースでは勝てるようなクルマじゃなかった。エンジニアのクレイグとじっくり話して、少しアグレッシブなセットアップにすることを決めたんだ。天気はどうなるか分からないし、予想よりも少し涼しくなって雨も降ったけど、我々のクルマはすごかった。先頭で単独で走っても、トラフィックで走っても速かったね。イエローが少なかったのも良かった」。ミルウォーキーではクリーム・パフでしたが、今回はピザでお祝いです!
 

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アンドレッティ・オートスポーツにとってアイオワでの7戦中5勝目、2010年のトニー・カナーンに始まり、マルコ・アンドレッティ、ライアン・ハンター-レイと続き、今回が4連勝となりました。ここでのチームの強さについて具体的な内容を聞かれたヒンチは、「殺されてもいいなら、教えるよ(笑)。そんなこと我々はしたくないけどね。ここだけでなく、オフィスでもほんとうにたくさん仕事がある。去年から新車になり、夜のレースもまったく違ったけど、色々と条件が変わってもチームは勝っていた。明らかなのは、1回だけの少ないプラクティスの中でチームメートの4人が一緒に働いて、これが莫大なアドバンテージになっているってことだ」
 

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2位は昨年のウィナー、ハンター-レイで2連覇ならず。それでもこの週末はチャンピオンらしい素晴らしい追い上げを見せてくれましたね。前戦ミルウォーキーのウィナーは昨日のシングル・カー・クォリファイでまさかの22位と低迷、ヒートレースの末に12番手からのスタートとなったものの、序盤にグラハム・レイホールと接触してピットでウィングを交換(写真上)。21番手まで後退を余儀なくされた彼はここから猛スパートを開始し、181周目には2番手まで大躍進します。その後レイホールやカナーンとバトルを展開した末に、2位でフィニッシュ。昨年に引き続いてミルウォーキーからの連勝はなりませんでしたが、もはやショート・オーバル・マスターと呼んでもいいほどの成績です。
 

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インディ500のウィナー、トニー・カナーンはここで4戦連続の表彰台となる3位に入りました。5番グリッドからスタートした今回、注目すべきはピットストップのタイミングで、テキサス同様自ら決断してピットを追加し、4回のピットで追い上げてきたことです。「ベターなタイヤのほうがいいし、行けると思ったから予定を変更したんだ。最後にここまでこれてよかったよ」とTK。前回、初めてスノコのカラーリングとなったテキサスでも表彰台でしたし、今後もっとスノコのサポートが増えるといいですね。
 

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予選ヒート・レースで7位を得ながら、規定外のエンジン交換ペナルティで17番手スタートとなった佐藤琢磨。インディ500の決勝だけで使ったエンジン(負荷の高いインディ500はレース前に全車が新エンジンとなり、土曜日に壊れたエンジンはその前に交換した今季2基目のエンジンでした)に戻った今回、ミルウォーキー同様、最初のピット後に追い上げを開始します。
 

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最初のピット後に11番手までポジションをアップし、「昨日の予選レースよりも一歩前進できたクルマでした」と琢磨。ミルウォーキーと同じようなトップ躍進を期待したのですが、交換したエンジンが徐々に加速しなくなるトラブルに見舞われ、113周目という早い段階で2度目のピットへ。いったんはコースに復帰したものの、走れない状態までエンジンは悪化し、162周でのリタイアとなりました。最終的に23位、ランキングは4番手から8番手までダウンすることに。
 

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「二日連続のトラブルだったので、悔しいのもありますし、ポイントの部分でも相当厳しいですね」と落胆する琢磨。「最初のピット・ストップが終わり、リスタートして少しの間は安定していたんですが、徐々に加速感が悪くなってきました。色々なマッピングを変えるなど、トラブルの原因を追究しながら走って、だましだまし最後まで走れるかと思ったんですが、2回目のピット・ストップの後はどうしようもなかったですね。最後のリスタートで全然パワーがなく、まったく勝負ができなかったです」。第7戦デトロイトに続く今年2度目のリタイアで、エンジンのトラブルによる戦線離脱は今季初のことでした。昨年はエンジン・トラブルによるリタイアが2回あり、決勝以外にエンジンを交換した場面も多かったので、今年はだいぶ改善されたように見えていました。シーズン後半に向けて同じようなトラブルが出ないことを祈りましょう。
 

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レース前にシボレーのブースに行ったのですが、「2012マニュファクチャラーズ・チャンピオン」のロゴが目立つ位置にあり、直噴やターボエンジンのアピールもしっかりやっていました。シボレーが参入してくれたのは大歓迎でしたが、どうも色々話を聞いていくと、技術的なアドバンテージが少ない新メーカーを参入させるためのルール(ターボの数など)が足を引っ張っているようです。シーズン中に大きな開発ができないようになっていますから、なかなかキャッチアップできないということで、色々なところに無理が生じているのではないでしょうか。アウディの参入も噂されていますが、次のレギュレーションでは、少なくともホンダとシボレーは同じ条件のほうがスッキリすると思います。
 

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さて、長かった連戦も終わり、19戦の今シーズンは後半戦へ突入、残り9戦となりました。オーバル(スーパースピードウェイ)が残り2戦で、ロードが2戦、市街地が5戦となります。次のポコノまで時間がなく、オーバルでのホンダの挽回は少し厳しそうですが、これまでのロード&ストリートの実績をみると、ホンダ勢はシングルターボで不利な分、チーム力やドライバーの能力でシボレー勢を凌いできたように見えます。ホンダにとって良かったのは、今年優勝したAJフォイト&佐藤琢磨、デイル・コイン&マイク・コンウェイ、サム・シュミット&サイモン・パジノウといった新しいコンビネーションが大活躍してくれたことで、ここに名門のガナッシ勢も復活すれば、後半も互角の戦いを繰り広げてくれるように思います。今回優勝したヒンチクリフがランキング9位から4位へアップしたように、琢磨もまだまだ挽回のチャンスはあると思うので、ぜひ頑張ってほしいですね。コーンどこそ、ってことで!
 
雷雨で飛行機が飛ばず、帰国が深夜になってしまったため、USTREAMレポートは26日(水曜日)の22時からとなりました。ぜひご覧ください!
 
●決勝リザルト

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●決勝映像